Boeing StarlinerとBoeing 777Xと737MAX | 夢老い人の呟き

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近年トラブルが続くBoeing。

 

Starlinerは乗員抜きで帰還を決定

 

6月5日に打ち上げられ、帰還が難航していたBoeingの宇宙船Starliner。

 

スペースXのクルードラゴンでレスキューするというような噂もありましたが、NASAとBoeingは自力で帰還するとの方針で故障したThrusterの原因究明を行っていました。

しかし原因が解明できず宇宙飛行士の安全が確保できないため、宇宙飛行士をISS(国際宇宙ステーション)に残し宇宙船Starlinerのみ地球に帰還させることを決定しました。

 

8月24日 NASA本部

 

 

スターライナーは自律的に運用するように設計されており、今回の初の有人飛行以前に2回の無人飛行を完了していますが、これから無人帰還に備えシステムを調整するとのことです。

 

 

B777X 試験飛行停止

 

今度は次世代大型機の777Xがトラブルで試験飛行を停止です。

 

8月21日CNN

 米航空機大手ボーイングは、開発中の次世代大型旅客機「777X」の部品に問題が見つかったため、飛行試験を停止すると発表した。

 

ボーイングの発表によると、飛行試験中にエンジンと翼の間の構造部品が設計通り作動していないことが分かり、交換して調査している。

 

777Xはボーイングが「世界最大で最も高効率の双発ジェット機」として、2020年就航を予定していた。トラブルや予算オーバーの影響で、現在は25年の就航を目指している

以下省略

 

この記事ではどのような部品か分かりにくいですが、下図のTHRUST LINKというチタニウム合金製の部品で、エンジン(GE社製GE9X)の推力をパイロン(BoeingはStrutと呼びます)に伝えるためのものです。

これが強度不足でクラックが入ったようです。

出典:GE9X: You Have Questions, Our Chief Test Pilot Has Answers

 

 

近年のBoeingはトラブルが多い

 

どうも器材品質、作業品質が保たれていないように見えますが、記憶に新しいところではアラスカ航空ボーイング737MAX9機(以後B737-9と略します)のミッドキャビンドア(プラグ)の脱落。

 

そして少し遡ると悲惨な、多数の犠牲者を出したライオンエアとエチオピア航空の、ボーイング737MAX8の墜落事故があります。

 

これは機体の設計に起因する事故と言えるように思います。

 

Boeing737は初飛行が1967年と半世紀以上前であるが、改良が加えられ大型化してきた。

Boeing737MAXシリーズでは燃費の良いLEAP Engineに変わったが、このエンジンは従来よりも大きくまた前方に取り付けられるため、機体の迎い角がある程度以上大きくなる(失速領域に近くなる)とナセルにかかる風圧により、機首上げモーメントが発生してより失速しやすくなります

 

出典:B737 MAX: Changes To Airframe And Systems

 

 

しかも航空機の水平尾翼は下向きの力でピッチバランスをとっているため、ドラッグとなりますので、燃費競争のために新機種ほど水平尾翼を小さくしてドラッグを減らそうとしています

 

するとピッチ安定性は悪くなるが、それを電子制御でカバーしているのが近年の旅客機です。

 

そしてBoeing737MAXでは上述のように機体の迎い角が大きく失速領域に近づくと逆に機首上げモーメントが発生するので失速を防ぐためMCASというシステムで、迎い角が大きくなると自動的に水平尾翼を機首下げ方向に駆動して失速を防止します

 

そしてMCASが誤作動して急降下を始めると、パイロットがエレベーターを操作しても水平尾翼の方が大きいのでどうしようもなく、急降下して墜落したのがライオンエアとエチオピア航空の事故です。

 

さらに機体の対気迎い角を検知するAngle of Attack Sensorがエアバス系のように3系統あれば一つ故障しても誤作動しないが、Boeing系は2系統しかないので一つのセンサーの誤作動でMCASが誤作動した原因であり、また対策を難しくしました。

※3系統あればどれが誤作動か判別できるが、2系統ではどちらが異常か分からないので、失速防止のために対気迎い角が大きい方のデータで作動した。

 

最近インテルの新世代のCPUが壊れるとかAMDのCPUに致命的な脆弱性があるとか、米レガシィ企業の凋落が目立つような気がしますが、アメリカ大丈夫でしょうか?