すみだ北斎美術館へ行ってまいりました。
葛飾北斎の冨嶽三十六景を代表とする風景系の浮世絵・・けっこう好きなんですよねえ・・
好きになったきっかけは中学生時代にハマっていた切手コレクション―
国際文通週間というシリーズで、葛飾北斎の冨嶽三十六景と安藤広重(当時はこっちの名が一般的でした)の東海道五十三次が使われていました。
オキニのシリーズだったんだけど、比較的高価だった記憶があるなあ・・
もう半世紀近く前の話です。

 

 

そんなことはともかく・・現在すみだ北斎美術館では現在『北斎百鬼見参』という特別展が開催されています

古来、日本人は鬼の存在を信じ、暮らしにも取り入れ、ともに生きてきました。神話・伝説、芸能、小説、マンガ、アニメ、ゲームに至るまで、鬼が登場する創作物は数多く、それだけ、鬼は日本人の心に深く根ざし、その精神世界の形成に大きな影響を与えています。そして、古典や芸能、また新たに江戸時代に起こった読本などを題材とする浮世絵にも、鬼は多く登場します。本展覧会では、人気の錦絵「百物語」や版本などから鬼に関連する作品を紹介し、鬼才・北斎がどのように鬼を捉え、表現してきたかに迫ります。また、当館初公開の貴重な北斎の肉筆画も展示します。北斎が描くさまざまな鬼が展覧会に集結する迫力ある様をぜひお楽しみください。・・・・・・すみだ北斎美術館公式pより


『北斎百鬼見参』は葛飾北斎とその門人たちが、浮世絵や版本の表紙や挿絵などで描いた、『鬼』・・基本、人の形で頭には角、憤怒の形相をしたこの世のものならぬ存在・・の作品を集めた展覧会です。
妖怪画といえば、有名なのは鳥山石燕ですが
北斎大師匠もけっこういろいろこの分野のモノを描いてるんですね

 

ところで鬼とはなんぞや?という話ですが・・
本来死霊を意味する中国の『鬼』が6世紀後半に日本に入り、日本に固有で古来の「オニ」と重なって鬼になった・・・のだそうです。

 

吸血鬼・百鬼夜行などと使われる場合…『鬼』を『キ』と読む場合ですが、これは人知を超えた妖怪・化け物の総称として使われます。


しかし単体で『おに』と読む場合は―
頭に角を生やし、半裸でムキムキで虎の皮のふんどしを付け、金棒を担いだいかつい顔の赤鬼青鬼さんたち・・・・節分のアレですね
あるいは牛頭鬼・馬頭鬼をはじめとする地獄の獄卒鬼たち・・・これらがビジュアルとして思い浮かぶでしょう。


『おに』の姿をしていても―
節分鬼や地獄の鬼の他、平安ゴーストバスターズこと『源頼光&四天王』が退治したとされる酒呑童子や茨木童子のような正統派の極悪鬼(?)もいれば・・
たとえば鬼そのもののルックスをしているカミナリ様は鬼というより神様なのでしょうし、途方もない怨念に身を焦がし、生きたまま鬼と化したり、死霊となって鬼に変化したり―
中には、悪鬼や禍から守ってくれるような正義の味方の鬼もいるようですし
鬼それぞれの事情も様々です。

 

 

 

 


『北斎百鬼見参』のポスターにも使用されている『釈迦御一代記図会』という読本の一場面。雷神が悪の王宮をぶっ飛ばしているシーンだそうです。またがっているのは雷獣だとか

 

 

 

『近世怪談 霜夜星』の挿絵
非道な仕打ちを受けて死んだ女が怨霊と化し、夫に襲いかかる場面。
当時は怨霊を冤鬼(えんき、恨めしい鬼)と表記していたようです。
無数のネズミを吐き出し、夫を喰い殺させようとしているところ・・かな?
なんか・・鳥山石燕の『鉄鼠』を想い出します。
あとウイラードという古い動物パニック映画も・・

 

 

 

 


今展覧会の目玉の一つ『道成寺図』


能楽『道成寺』の一場面を描いた肉筆画です。
男に裏切られた女が憎悪のあまり蛇(というか龍)になり果てる物語ですが、蛇への変化という表現はなかなか難しいので、能や浄瑠璃では鬼の姿で表現している・・のでしょう
(能も浄瑠璃も知識ないし観たことも無いので、はっきりしたことは言えませんが)


恐怖の対象でしかなかった鬼ですが
時が経つにつれて人びとの鬼に対するとらえ方も変わっていきます。


間抜けでヘタレな鬼・・・フレンドリーな鬼・・・情にもろい鬼・・なんてのも現れてきます。
『泣いた赤鬼』なんて有名童話もありますものね。

 

 

 

 

今回一番気に入ったのがこの角大師・・北斎のお弟子さんが描かれた肉筆画だそうです。


角大師とは、平安前期の天台宗の僧、良源が鬼に化身した姿を指します。良源は自らにとりついた疫病神を法力で退散させましたが、疫病に苦しむ民を救うため一心に念じて2本角の痩せた鬼の姿となり、それを弟子に写させ護符にしたといいます。

 

自分は今まで知りませんでしたが、この角大師の護符・・わりと有名らしいです。
民衆のため、厄疫を迎え撃つべく自ら鬼になるとか・・・デビルマンみたいな僧ですね
あまりいかつい顔ではなく、わりとイケメンで優しそうな顔・・ツノもヒョロ長く力強さは無い・・カタツムリに『マネすんな!』とクレームをつけられているところ?
でもきっとすごいパワーを持っているんでしょうね


こういう善玉の鬼もわりと多くいるみたいです。

 

 

 

 

彼らも・・・そんな鬼の一種かな?