モントリオール国際映画祭グランプリのこの作品、予告編を見て、見たいと思い、見に行ってきた。
結論から言うと…見てよかった。すごく良い映画だったと思った。
主人公はチェリストとしてオーケストラにやっと入ることができた矢先に、オーケストラが解散になり、田舎に帰ることになった大悟(本木雅弘)。チェロの借金1000万以上を妻の美香(広末涼子)に内緒でしていた。ウェブデザイナーの妻は何も言わず、夫について大悟の田舎、山形へ。そこは大悟の亡き母が残してくれた店。もとは父(峰岸徹)が始めた店だったが、女と一緒に出て行ってしまってから母が切り盛りし、大悟を育ててくれたのだった。
「旅のお手伝い、数時間で高給」というチラシに惹かれ、大悟が面接に行った先は、納棺の仕事をする会社だった。社長(山﨑努)に一目で気に入られ、その場で採用が決まった大悟は、最初は恐る恐る仕事を覚えていくが、そのうちに社長の納棺の儀式に惹かれていくようになる。
しかし、妻に仕事の内容がばれてしまい、妻は家を出て行ってしまう。田舎という土地柄もあってか、納棺の仕事に対する風当たりは強いのだった。
それでも淡々と仕事をこなし、子供の頃のチェロを取り出しては弾くという毎日を送る大悟。数ヶ月後、妻が懐妊して家に戻ってくる。仕事を辞めてもらおうと思っていた妻だったが、夫の仕事に触れるうちに、次第に心に変化が…。
人の生と死について、否応なく考えさせられる映画だった。死にたくなければ、食べる、それが生きていくということ…。そして、死は誰にも訪れる。死んだあとは自分では何かができるわけではない。残された人や葬儀屋の人たちがその人の死の儀式を執り行う。最後の儀式を誰にしてもらいたいか…考えせられる。
素晴らしい最期になるか、敬意を表して遺体に向き合ってもらえるか…。そんなことは、実際死んだらわからないのだろうけど、事務員(余貴美子)の言葉のように「私もこの人にやってもらいたい」というのは、あるんだろうなーと思う。
夫婦のあり方についても考えさせられた。妻は何も文句を言わずに田舎について行ったが、結局夫の仕事が気に入らず、「けがらわしい」という言葉を残して実家へ帰る。しかし、夫はそれを追いかけるでもなく…。妻は妊娠がわかり、もう一度夫とやり直そうと戻ってくるが…。
この展開が私にはちょっと微妙だった。いかにも日本人っぽいのかな。
話し合わず、実家に帰ってしまい、その後、数ヶ月連絡もない夫…。私ならこの時点で離婚を考えるかも。妊娠しなかったらこの夫婦はこのままだったのか?
ついついそんなことを考えてしまった。
やっぱり不満に思うことがあったら、笑顔でついて行くだけじゃダメなんだろうな。そこで自分の思ったことを話し合わないと…。そして、実家に帰る前に、もっと話し合わないと。実家に帰られたら、夫は連絡を取らないと…。
と、なんか関係ないところにちょっと突っ込みたくなったけど…。
台詞がすごく心に響くものが多くてよかった。出ていた誰もが素晴らしい演技だった。
それから、チェロを弾く姿を見ていたら、ずっと放ったままになっていたバイオリンを突然弾きたい気分になってきた。やっぱ弦楽器の音っていい…。もっくんは本当にチェロを弾いているみたいで、相当練習したんだろうなと思った。
納棺の儀式の仕方もすごく美しくて格式高い感じで素晴らしかった。