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2008-05-10 02:21:15

オーデュボンの祈り

テーマ:小説
オーデュボンの祈り (新潮文庫) オーデュボンの祈り (新潮文庫)
伊坂 幸太郎

新潮社 2003-11
売り上げランキング : 754
おすすめ平均

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★★★★★★★★☆☆

上海勤務ですが、日本と同様にGWをいただいて長期休暇を満喫しておりました。でも、DVDを観ることに夢中で読書の方はあまり進まず、3冊だけです。日本から書籍を追加で持って来てもらったので、早く読んで書評できるようにします。


久しぶりに大好きな伊坂幸太郎の作品を読みました。毎回なるのですが、軽いタッチの中に人生について考えさせられる深い内容が織り込まれていて、読後もボーッと考えてしまいます。今回取り上げる「オーデュボンの祈り」も例に漏れず、「うーん」と考えさせられる内容があちこちに散りばめられていました。


◆推理小説の名探偵のような…


この名探偵というのは何のためにいるか、知ってる?私たちのためよ。物語の外にいる私たちを救うためにいるのよ。馬鹿らしい。


あまり詳しく書いてしまいますと、ネタバレになってしまいますので、さわりの部分だけ。突然、見知らぬ島に連れてこられた伊藤。島の案内をする日比野。そして、言葉を話し、未来を予測できるかかしの優午。この物語は最初に引用した伊藤の元彼女のセリフが表現していると言えば、なんとなく理解してもらえるでしょうか。


未来のわかる優午は決して未来を語ることはしません。理由は「それだけ面白くないから」です。優午は起きた出来事に関しては詳しく話します。たとえば、殺人事件が起きれば犯人の名前を警察に伝えることはします。


約150年、外との交流を断っている島で育った変わった人たちが、数多く登場します。この点は、他の伊坂幸太郎さんの作品でも見受けられます。本作が、第一作目だと考えると、この作品が原点とも言えそうです。


現実離れした話の中で、時に現れるリアリズムは、会話の中だけではありません。伊藤がもともといた世界の住人である城山の行動が、物語の間に入ってきて、その残酷さが作品にスパイスを利かせています。


◆主人公とどことなく重なる自分


伊藤の現実離れした状況を、なんとなく諦めて受け入れる姿勢が自分と重なって親近感を持ちました。流されるままに生きて、それにも疲れて、ふとしたきっかけで道を踏み外した行動を取った伊藤。自分と重なるだけに、こういう行動をいつか取ってしまわないか、不安にもなりましたが。


問題の先延ばし、これは人間だけがもっている悪い性分なのかもしれない。


伊藤の性格を表すなら、この一言が適していそうです。人間とは何なのか考えた時に、他の生物とは違う点が多すぎることに気づけます。問題の先延ばしなんて、数多くある差異の中のちっぽけな存在に感じますが、実は野生の動物と一番大きな違いなのかもしれないと、読んだ時には感じました。


こういった表現もありました。

決して、負けてはならない敵。僕が強いからではない。僕が弱いからだ。へらへらとその場しのぎだけで、生きて

いる理由も必要としない僕は、彼女にとっては真っ先に倒さなければいけない対象だったに違いない。


◆数多くある会話のスパイス


伊坂幸太郎さんの作品が好きな一番の要素で、さきほどから何度か取り上げていますが、キャラクター同士の会話から出てくるセンスあふれる例え話が好きです。本作で気になった箇所をいくつか抜粋します。


俺は普通に歩けている。あの男が、奇跡でも起きないかと祈っている願いが、俺にはすでにかなっている。どうだ

、俺は十分マシじゃないか。そう思わないか?


日比野のセリフですが、それまで日比野の相手を気遣わない物言いにムッとしていた伊藤も返す言葉がなかったのではないかと思えるセリフです。相手を同情したり、思いやったりしても自分と相手は違うということを実感させられるセリフです。


現代人にとっての羅針盤とはもしかしたら時計なのかもしれない。


現代人=日本人という視点で発せられたセリフです。時間を管理しているつもりが、いつの間にか時間に管理されている。これに例え気づいたとしても社会のシステムは抜け出すことを許さなず、社会不適合者と社会が決めつけてしまうようになっています。


日々野が口にした「夜を楽しむ」という言葉について、考えた。静かで真っ暗な夜に、藍色の空や、そこに点在す

る星の小さな白色や、底なしのように見える海とその音を、膝を抱えて楽しむことも立派な娯楽だよな、と感心し

た。とても贅沢なものに思えた。


忙しく生きることに慣れてしまった、現代人へ訴えかけるメッセージです。限られた時間を有意義に過ごさないといけない、という脅迫観念から何かないと不安になり、何もないことを楽しめなくなっていると指摘しているようです。


「動物を食って生きている。樹の皮を削って生きている。何十、何百の犠牲の上に一人の人間が生きている。それでだ、そうまでして生きる価値のある人間がいるか、わかるか」僕は黙っている。「ジャングルを這う蟻よりも価

値のある人間は、何人だ」「わからない」「ゼロだ」


人を殺すことを暗黙の了解で認められている「」のセリフです。哲学的な考えなので、意見することは難しいですので、各人の受け取り方によると思いますが、個人的には気に入っています。


◆人生は物語のように作られていく、そして終わりを知るのはカカシだけ


いや、たぶん彼は、真実なんて大嫌いですよ、と僕は内心にだけ言った。偽りが嫌いだ、と公言する人間を、僕はさほど信用していない。自分の人生をすっかり飲み込んでしまうくらいの巨大な嘘にまかれているほうが、よほど幸せに思える。


冒頭の名探偵の例え話がこの物語の大枠(骨)を表現するものだとすれば、このセリフはそれを肉付けする要素です。伊藤、優午、そして島の住民が見つめる人生はそれぞれ違います。真実を知っているもの、真実を知りたがるもの、真実を知らずに嘘でもかまわないと思うもの、そういった人生観を楽しみながら読むこともよいのではないでしょうか。


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2007-07-12 23:06:50

ダブルアップ

テーマ:小説
ダブルアップ ダブルアップ
ハセベ バクシンオー

宝島社 2007-06
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★★★★★★★★☆☆


ご無沙汰しております、三日坊主@きっちんです。最近、仕事で壁にぶつかり考える機会が増えてきて、またまた活字欲求が高まってきています。分厚い本が無性に読みたい!!手ごたえたっぷりの本がありましたら、是非教えてください。

久しぶりに更新になりますが、肩の力を抜いた小説のレビューにします。

「このミス」シリーズをこよなく愛しているのですが、理由は単純に面白い作品が多いからです。「バチスタ」シリーズが良い例ですね。本作のハセベバクシンオーさんもこの賞の受賞によって有名になった作家です。前作の「ビックボーナス」も今まで出会ったことのないジャンルの小説で楽しんで読めましたが、今回も楽しませてくれます。

作中の会話や描写のすみずみに遊び心があって、アーティスト名や小説のタイトルなどもそのまま使っていて、ニヤリとさせられます。

舞台は普通の人なら出会うことのない「10円ポーカー」という裏ゲーム屋、そして現実にあった歌舞伎町の火事を少し脚色して使われています。新宿を舞台にして、直球ど真ん中のパロディとして有名ハードボイルド小説を出してくる(ネタバレになるので)。シリーズの大ファンである僕にとってこれだけでお腹いっぱいになれました。

ラストも気持ちの良いありきたりな終わりにするのではなく、意外性を追い求めたものになっているのもたまりません。小説はやはり読後に考えさせられる終わり方が一番良いですね。

エンターテイメント小説として上質な作品です。読み始めたら止まらないことは間違いないでしょう。ただ、凄惨なシーンもあるので女性向きではないかも。ユーモアとシリアス(対比としてあっている言葉かは不安ですが)のバランスがうまくとれています。

仕事帰りにふらっと立ち寄った本屋でたまたま見つけたので、やっぱりブラブラと本屋の中を見るのはやめられないですね。久しぶりに文章を書くとかなりスキルが落ちていることを実感しました。言いたいことが上手く言えない、気持ちを上手く表現できないです。継続は力なりですね。

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2007-05-02 17:04:12

ジェネラル・ルージュの凱旋

テーマ:小説
ジェネラル・ルージュの凱旋 ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊

宝島社 2007-04-07
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★★★★★★★★★☆



ゴールデンウィークも折り返しですね。日曜日に実家に帰ってきて以来、ゴロゴロ過ごしています。読書して、散歩して、家に帰るとご飯とお風呂が待っている。実家暮らしはどうしても甘えてしまいますね。おかげさまで体調は良好です。

さて、本日の一冊は待ちに待った海堂尊さんの続編です。本作は「ナイチンゲールの沈黙」と「螺鈿迷宮」の舞台と同じ時系列で違うストーリーが進行していきます。田口先生、実はこんなにも活躍していたんですね。。。

「チーム・バチスタの栄光」の黄色、「ナイチンゲールの沈黙」の青、そして「ジェネラル・ルージュの凱旋」の赤。シリーズ通してタイトルもカラーも統一感があって素敵です。前作まで読んでいなかった人も、読んでから時間が経ってしまった人にもわかりやすく(というよりそうしないと時系列が同じ説明がしにくい)、書かれています。

今回の主役はオレンジ病棟の部長、速水先生。しびれるほどのカッコ良さ。火喰い鳥、白鳥もたじたじになってしまうぐらいのキレの良さ。田口先生も1作目からは考えられないほど成長しています。

そして、助演として氷姫こと白鳥の部下の姫宮が活躍。これは「螺鈿迷宮」を読んでいると、さらに楽しめます。

それぞれのキャラクターがしっかりとしていて、役割も分担されている。会話も「エンターテインメント小説」というジャンルに相応しいカルさでテンポよく読み進めます。

仕事で病院とはよくかかわるのですが(MRほどではない)、小説の背景がある程度わかるので、面白いなと感じるとともに、これは著者が小説を通して医療界にこっそりとメッセージを伝えようとしている様に印象を受けました。といっても、僕も医療業界についてかじっている程度なので、間違っているかもしれないですが。

病院内での権力争いの描写は楽しめますよ。あっという間に時間が過ぎてしまう小説ですので、旅先でのお供には最適ではないでしょうか。

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2007-02-20 23:50:20

一瞬の風になれ 第二部 --ヨーイ--

テーマ:小説
一瞬の風になれ 第二部 一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子

講談社 2006-09
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★★★★★★★★☆☆



今日も引き続き、「一瞬の風になれ」の感想です。第一部が「起承転結」の「起」であるとすれば、第二部は「承」と「転」を担当していると思います。

新二も連も一年を乗り越えて、成長する。でも、まだ届かない上のレベルの世界。それぞれが互いに課題を抱えながら、切磋琢磨し練習に励んでいく。

そして、「転」にあたる大きなアクシデント。ネタバレになるため、少しだけでも触れることはできないですが。

こんなに感受性が豊かで、真っ直ぐな人間がいるのだろうか?とビックリしてしまうぐらいに新二はひたむきに物事を捉え取り組んでいきます。時には引っ張られ、時には引っ張りながら互いの力を高めあっていく新二と連。

新二の心理描写があまりにも多いことも第二部になると次第に慣れてきて、作品の中に引き込まれていきます。それでもまだまだパンチは足りない感じ。まさか、第三部のために全てのエネルギーを読者に溜め込ませているなんて、第二部を読んでいる時には予想もしていませんでした。

第二部あたりから、ライバル”仙波”と”高梨”が活躍してきて、同級生の”根岸”も、後輩の”桃内”もいい味を出してきます。そして、新二の恋心は明確になっていきます。

第三部まで読み終えた状態ではさらに第二部だけを切り取った感想というものは書けないですが、きれいに三冊がまとまっている良書です。そういう意味でも第二部のもつつなぎとしての役割は非常に高いのではないかと思います。

さっぱりと、第一部・第二部と感想を書いたので、第三部の感想では自分の高校時代を振り返りながらもう少し自分の言葉で書きたいと思います。
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2007-02-19 22:33:07

一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

テーマ:小説
一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ-- 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
佐藤 多佳子

講談社 2006-08-26
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★★★★★★★☆☆☆

気づけば、かなりサボってしまっていました。毎日、一冊の本を読むことで精一杯。それじゃ、何も自分の中に残らないからダメですね。たった数行でもいいから、読み終えた本について素直な感想を残せるように気合を入れなおします。

さて、本日は「本屋大賞」ノミネートの作品です。

サッカーが好きで頑張るけど、上手くならない”新二”。対照的に昔からサッカーではヒーローだった兄”健一”。そして、幼馴染で陸上界の神童”連”。彼らを中心に、新二と連の高校生活のスタートから物語りは進行していきます。

サッカーよりも熱くなれる何かを求めて、というよりも自分ではいつまでも辿り着けない遠いところにいる健一と違う世界に行くことを、連に背中を押される形で新二は陸上を始めます。

特別扱いされることを嫌う、ひねくれ者の連と、いろんな心情の変化の中で成長していく新二。いつまでも追いつけない連を兄の健一とダブらせながら、幼馴染として負けたくない新二は必死に追いかけます。

心理描写は嫌いではないんだけど、なんとなくストレート過ぎて、ストーリーにも山場がなくて少し残念です。でも、自分は陸上で長距離をしていて、短距離の面白さや醍醐味なども全然わかっていなかったので、そういったシンプルな喜びの描写は新鮮でした。なんとなく、小学校の頃に純粋に走ることが好きだった頃を思い出してしまいました。

本作は三部構成のためなのか、一部では大きな動きもなくて、次作への大きな前書きのような印象を受けました。

純粋で、動揺しやすくて、でもひたむきに前を見つめる新二の姿は青春を感じさせるにはピッタシなのかもしれないですね。なんとなく感想がひねくれた感じになってしまいましたが、悪くない作品であると思います。
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2007-02-03 12:48:17

使命と魂のリミット

テーマ:小説
使命と魂のリミット 使命と魂のリミット
東野 圭吾

新潮社 2006-12-06
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★★★★★★★☆☆☆

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2007-02-02 12:47:01

砂漠

テーマ:小説
砂漠 砂漠
伊坂 幸太郎

実業之日本社 2005-12-10
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★★★★★★★★☆☆

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2007-01-27 23:20:24

ズッコケ中年三人組

テーマ:小説
ズッコケ中年三人組 ズッコケ中年三人組
那須 正幹

ポプラ社 2005-12
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★★★★★★★★★☆

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2007-01-20 08:34:28

天帝妖狐

テーマ:小説
天帝妖狐 天帝妖狐
乙一

集英社 2001-07
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★★★★★★★☆☆☆

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2007-01-15 08:26:42

神様からひと言

テーマ:小説
神様からひと言 神様からひと言
荻原 浩

光文社 2005-03-10
売り上げランキング : 9732
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★★★★★★★★★☆

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