子どもの頃、将来の夢は詩人になる事だった。
文集にもそう書いた。
今はもし夢は何かって訊かれても、「詩人になる事」って真顔で答えるのはちょっとこっぱずかしい。
でもそれは、もう詩人になりたくなくなったっていう話ではない。
大体、詩人ってどうやってなるんだろう。
それを職業にして暮らさなきゃいけないんだとしたら、とてつもなく難しい。
詩を書いてさえいればなれるなら、私はもう詩人なのかもしれない。
もしかして言ったもん勝ち?
ムーミンの世界に出てくるような、パーティーの始まりや最後に高らかに朗読するような詩は、平均的な育ち方してる日本人としてはちょっと照れる。
やっぱり秘密のノートにこっそり書くのが楽しい。
でもそのノートを残したままうっかり死んじゃったりしたらと思うだけで、恥ずかしくて今死にそうになる。
詩人になるって事は、そういう恥ずかしい気持ちに打ち克たなきゃいけないのか。
そんな胆力、私には一生つかないかもしれない。
だから「詩人になる事」は一生ほんのりと私の夢であり続ける。
谷川俊太郎さんの詩は、ほんとにロマンチック。
色気のある言葉を遣う人だなぁと思う。
きっと谷川さんはうんとモテるよ。
この詩集には入ってないけど、というか、入ってる詩集を知ってる人が居たら教えてほしいくらい好きな、谷川さんの詩があって。
「じゃあね」っていうタイトルの詩。
子どもの頃の音楽会で、自由曲になってたんで知った。
小学生だった私は虜になった。
テレビで聞く流行歌なんて比べ物にならないくらい。
栄養のある食べ物を食べたら健康になれるみたいに、力を持った言葉で書かれた詩集を読むと心がしゃんとする。
小説を読む元気がなくても、詩集なら入ってくる日がある。
どこからでも好きなところから読み始められるしね。