となり町戦争 / 三崎 亜記 | 活字中毒
2005年06月12日

となり町戦争 / 三崎 亜記

テーマ:国内小説・男性

第17回小説すばる新人賞受賞を受賞した作品です。


ポストに投函される市報で「となり町との戦争を開始します」というお知らせを読んだ主人公。日々の生活が何も変わらないので忘れていたのですが、次の市報で「戦死者12人」と書かれているのを見つけて驚きます。自分の毎日は何も変わっていないのに、確実に自分の住んでいるところで戦争は始まっていて、日々戦死者が増えているという事実。それでも主人公の周りは何も変わらず、さっぱり戦争が見えてきません。そんな中、封書で市役所のとなり町戦争係りから「戦時特別偵察業務従事者の任命について」という知らせを受け取ります。となり町の様子を偵察して(通勤で通る時に)市役所に報告するというものです。この任務により、主人公の戦争への参加が少しづつ始まっていきます。




この本のおもしろいところはとなり町との戦争であるということ。そして、戦争が公共事業として認められていて、戦争コンサルティングの会社まで存在していることではないでしょうか。着目点がおもしろいですよね。戦争をとなり町と行うことによって、町の活性化が促されるらしいのですが・・・。戦争といっても、ガンガン戦う戦争を想像しないでくださいね。この戦争のやりかたそのものがお役所的なんです。任務についても細かいことまで規定があったり、前もって予算もちゃんと決められていたりするんです。戦争はこの地区で何時から何時までと決められていて、その時間を過ぎても行われていると苦情がくるらしいですよ。町の住民たちに説明会もするんですけど、その説明会に出ている人たちも笑える。「戦争で窓ガラスが割れたら保証してもらえるのか」みたいな自分たちの利害ばっかりなんですもん。戦争ですよ?なのに、窓ガラスの心配している場合じゃないはずですよね。だけど、結局彼らには戦争が見えていないから、自分のことしか考えられないんです。


実際私なんかもそうですが戦争は見えていません。世界のどこかで起こっている戦争、例えば湾岸戦争とかイラク戦争などもニュースや新聞で「戦争が起こっている」とは知るのですが、実際に自分には見えないし感じない。どこかで誰かが戦争によって死んでいるかもしれないのに、感じないから他人事になってしまうんですよね。いけないことなんだろうけど。この本は自分の町ととなり町の戦いという身近なものなのに、住んでいる人たちにさっぱり戦争が見えてこない辺りが、私自身の戦争が見えていない状況と近くてなんともいえない気持ちになりました。主人公が「許されないはずの殺人が、戦争となっただけで正当化されてしまうのはなぜか」という疑問をもつのですが、その辺りが共感。なぜ戦争っていうだけで許されてしまうんだろう。いつも私が不思議に思っていることです。心にちくっと来ました。


残念だったのは人物描写がちょっぴり弱いことかな。もう少し人物がはっきりしていたら、この戦争も少しはリアルに感じたのかしらと思ってしまいます。いまいちするーっと通過してしまった感じでもったいない。あとは終わり方。これでは「結局は恋愛小説!?」って感じがしたので、別の終わり方もあったのではないかなぁと感じました。


おもしろかったです。ただ、読み終わったあとにいろいろ考えちゃうかも。なかなかシュールな感じです。


タイトル: となり町戦争
著者: 三崎 亜記
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