かつて 

私は


夫は 

不倫など できない

誠実で 善良で  嘘のない人 で



私は 

夫にとって

生涯 変わることなく 

愛し愛される

唯一無二の 特別な存在で… と

思い込んでいたものだ




今 考えると

いい気になっていたんだな と思う





夫は 私に対して

情熱的で 

束縛も 激しく


まわりから

ずいぶん惚れられてるよね と

呆れられるほど だったのだ






だから


その昔 

夫の 不倫が 発覚し



きっと 夫は


この 始まったばかりの不倫を


つい 魔が差しただけ と

必死になって

謝ってくるに違いない と



感情のまま に

夫を 責め


不倫をやめるよう 怒る私に




夫が


不倫相手とは 別れられません!

家族より 大事だ!!


と 怒鳴り返してきた時の 

驚きは 凄まじく


数日間は 当惑するばかりで







けれど


少しして



…あぁそうか 私 負けてるんだ

と 思えた時



それまで 自惚れていた自分が

あまりに マヌケで 


おかしくて




ひとごとのように

腹を抱えて 笑ってしまった











夫は

相変わらず 情熱的な人だった




そして



夫には

私の知らない 世界があり


私の知らない 女性に

夢中になっていた




いつのまにか

夫の情熱の 向かう先は

私では なくなっていたのだ











私は





世の中 " 絶対 "ってことは

そう ないな


と 妙に悟った気分になったものだ














(実際 この不倫女性への

夫の情熱は そう長くは続かなかった )