食欲がなくなり、朝は無理やりヨーグルトを押し込んで昼は栄養補助のクッキーをひとかけ食べました。
(それがこの後、何日も続いて2週間も経たないうちに5キロも体重が落ちました。逆流性食道炎にもなってしまい更に食べることができなくなっていきました。)
仕事から帰宅して、下の子を迎えに行くと前夜のことを聞かれたので正直に話しました。
「パパね、不倫してたみたい。」
「うわー、それガチ?でもそうかなって何となく思ってたけど。」
「ママは相手が誰なのか知ってるの?」
「知ってるよ。元ペアの人でね、ずっと疑ってきた人だった。」
それから夫が家にいなかった時期のことなど、いろんな話をしました。
「でもさ、今はパパがいつも一緒にいてくれて、俺とふざけたり相手してくれて楽しいよ。」
「昨日思ったけど、やっぱりママとパパがいつもみたいにくっついて仲良くしてないと嫌だな。」
「あんな雰囲気耐えられない。」
「そうだよね、ママたちこれからたくさん話し合うことになると思うけど離婚するつもりはないから安心してね。」
「え?ママはそれでいいの?離婚だと思って俺いろいろ考えてた。」
「大丈夫だからね。(上の子)も心配してるかもしれないから、それとなく伝えといてくれる?」
「わかった、任せて。じゃあたくさん話せるように用があるとき以外は部屋に行ってるから。」
と下の子は安心したようでした。
不倫されていた現実を突きつけられたのはショックでしたが、前夜の夫の言葉を聞いて私も1日仕事をしながら考えたことがありました。
ここ数年で本当に良いものになっていた私たち夫婦の関係や変わってくれた夫のことを思い浮かべていました。
これまでは夫に突きつける証拠がなかっただけで、不倫されていたのは分かりきっていたことでした。
私は夫が不倫していたのを承知の上で、今の夫との関係を築いてきたはずでした。
自ら不倫を終わらせて戻ってきた夫と、こうして幸せに暮らすことができていたのに、私が離婚を選ぶことで、この暖かい家庭を終わらせることになる。
紆余曲折ありながらもようやく築くことができた夫との関係が失われてしまう。
何の不満もなく暮らせるようになった満たされていた日常を失ってしまう。
それを惜しく感じてしまう自分がいました。
この数年で夫が変わったのも事実でした。
自分のことよりも家族を優先するようになった。
熱心に子どもたちと関わりを持つようになった。
家のことを自分からしてくれるようになった。
洗濯や食器洗いを一緒にやってくれる。
家族で出掛ける日は私の負担が減るように気遣ってくれる。
「大変だからいいよ。」と何かにつけて私の手間にならないように考えてくれる。
私への接し方が誰に対するよりも優しくなった。
自分の感情を家族にぶつけることなく、コントロールできるようになった。
本当に変わりました。
買い物についてくることさえなかった人なのに、一緒に買い物に行くようになって荷物をサッと持ってくれたり、何かを取りに行ったり片付けてくれたり。
それまでの夫とは別人のように変わってくれていました。
そうして私に尽くす姿を見せてくれていたのが大きかったのかもしれません。
既に終わっている不倫。
自らの過ちを反省して変わろうと努力してきた夫。
終わったことで夫を責め立て殺伐とした日々を送るよりも、とにかく不倫の全容を確認して日常に戻りたい、元の自分たちに戻りたい、そんな風に思いました。
私の中では離婚の選択肢はなくなっていました。
夕食もお風呂も済ませてリビングで2人きりになった私たちは、また話し合いを始めました。
夫の気持ちを聞いて、自分の考えもまとまったこともあり少し気は楽になっていました。
「どうなった?あの子に連絡はとれたの?」
「それがさ、(N)に電話したときに聞いたんだけど、あの子明日から大きい試合があるんだって。試合が終わって家に帰るまでは連絡するのはやめてあげてって言われたんだよね。」
(25日から27日にかけて行われた全国大会でした。)
「何で私が、あの子に配慮しなきゃいけないの?私には関係ない。」
「何でそうやって、あの子を庇おうとするの?」
「庇ってなんかいないよ。」
「でも(N)が間に入ってくれないと連絡がとれないから言われた通りにした方がいいかなって... 」
「まぁ、いいや。まだ書類も出来てないし。」
「何?書類って。」
「相手は(T)が既婚者だって知ってたんだよね?」
「うん、知ってたはずだよ。」
「そうだよね、私はSNSやめたけど(T)は今でも既婚になってるもんね。」
「そうだね。」
「じゃあ、私あの子に慰謝料請求するから。」
「え?もう終わってるのに?」
「何で?ダメなの?」
「いや、ダメじゃないよ。」
「時効は私が知った日から3年だから慰謝料は請求するよ。協力してくれるよね?」
「するよ。当たり前じゃん。」
私は彼女に連絡をとると決めた月曜までに慰謝料請求の書類を用意することにしました。
ここから夫への尋問が始まりました。