KOBONBLOG -244ページ目

「時のもつ風化力」は偉大だ…

双日総合研究所の吉崎逵彦氏のブログに、味わい深い一文があったのです。

http://tameike.net/comments.htm#new

 

氏の言いたいことの一つは、「時(とき)のもつ風化力」ということと、もう一つは、「Public Diplomacy(広報外交)はどこまで健在なんだろうか」という。

 

「時」のもつ風化力(問題解決力)は、私も長年生きてきて初めて分かったことでありまして、感嘆するのです。

私は吉崎氏とは全く異なる、スケールの小さい事がらでそれを体験したのですが、本質的には同じことなのです。

 

それは、「人のあらゆる悪感情は、時が洗い流してくれる」というものなんです。

私には若い時からの友人グループがありまして、その中の一人(A)があることがキッカケで別の一人(B)に対して強烈な悪感情、それは単に「嫌い!」というより「裏切られた!」として、もはや「ぶちのめさなければ気が済まない!」というレベルの、そういう激烈な感情を抱くようになったのです。

しかしさすがに実際はそこまでの実力行使に出ることはなく、友人Aは絶交、絶縁という形でこれを収め、結局はその友人関係が破局するという形になっていたのでした。

 

しかし、「時(とき)」の力は偉大でして、20年の歳月を経て、その友人の中のその強烈な感情は薄れて行き、今はもう「過ぎたこと…」として過去形になって行ったのです。

そしていつしかその二人は旧交を温めるという感じで、最近はボチボチ二人だけでも会って話が出来る状態になっているのです。

 

ふ~・・・、感慨深いのです・・・

 

その両人をよく知る私には、ことの経緯もよく分かり、また両人からそれぞれの思いも聞き、言い分の食い違いも分かりして、当時は出来るなら「和解」に向けて仲介の労を取りたかったのですが、しかし友人Aの激烈な感情は打ち砕く術もなく、もう「どうすることも出来ないよな…」として、周囲は放っておくしかなかったのでした。

 

いやいやいや、それがどうですか・・・、友人Aのかくも激烈強烈な感情も、時のもつ風化力の前には、その角を丸めざるを得なかったのです。

どういうのでしょうか、その内実の真相は・・・、よく分からないのです。

 

しかし、どうにも「時の流れが激烈な憎しみや、恨みや、嫌悪感を洗い流してくれる」のです、どうにも・・・。

不思議なことですけれど、そうなっているようなのです。

それは私だけの体験でなく、おそらく長く人生を生きた人には似たような体験が普通にあるのだろうと、そう確信するのです。

もちろん、それは日本人には普通だけれど、中国や韓国など、他国においては全然違うかもしれないのですが、それはさておき。

 

いや、「時」の力は偉大だと、とにかくどうしようもない複雑に入り組んだ難しい問題を、「時」だけが解決してくれると、そういう感じなのです。


後段の「Public Diplomacy(広報外交)」については、またいずれに。

 


◆溜池通信◆
~かんべえの不規則発言~
<12月29日>(木)
○安倍首相の真珠湾訪問について、ひとこと感想を書いておきましょう。
○簡単に言っちゃうと、「パールハーバー」という言葉が持つ意味が、随分変わったのだな、ということになります。不肖かんべえは1991年、真珠湾50周年の時にアメリカに居りました。そのときに見た報道番組で、当時は湾岸戦争に勝った英雄であったシュワルツコフ将軍が登場し、「真珠湾攻撃は純軍事的に見ると、すばらしい作戦だった」てなことを言っていたことを記憶しています。
○そのときに学習したことは、真珠湾攻撃がアメリカに残した教訓とは、「日本は憎いやつだ」ではなくて、「油断していた自分たちが悪かった」であったということです。だからこそ、こういうキャッチフレーズが誕生した。"Remember Pearl Harbor -- Keep Alert America"(真珠湾を忘れるな。アメリカよ油断をするな)
○ところが2001年9月11日にとんでもないことが起きてしまった。なにしろニューヨークの貿易センタービルと、ワシントンのペンタゴンがテロ攻撃を受けたのである。これはもう、過去のトラウマが吹っ飛んでしまうほどの新しいトラウマであった。爾来、アメリカはかたときも油断をすることが許されなくなった。例えばそれまでは、飛行機だってもっと簡単に乗れたんだよねえ。
○それから真珠湾が奇襲攻撃を受けたときは、ハワイはまだアメリカの属州であった。当時のアメリカは48州であって、50州とはなっていなかった。アラスカとハワイは戦後になって州に昇格しているんですよね。その当時に比べると、9/11同時多発テロ事件は、あまりにもキツイ衝撃だった。だからこそ、アフガン戦争やイラク戦争が起きたのでした。今でこそ評判が悪いこれらの戦争ですが、当時は大多数のアメリカ人がこれらの戦争を支持したのでありました。その証拠はいくらでも残っています。
○今では新たな脅威がたくさん増えて、リメンバー・パールハーバーなんて死語になっちゃった。サイバー攻撃なんてものできちゃったし、今じゃアメリカよ油断をするな、なんてって当たり前のことじゃないですか。つまり時間の経過とともに、真珠湾が持つ意味がまったく変わってしまったのです。日米の和解というとカッコいいですが、それくらい時間がたって中身が風化した、ということになるのだと思います。

○もうひとつ、セレモニーの席上では安倍首相とオバマ大統領がそれぞれに思い入れの深い言葉を残しましたが、こういうPublic Diplomacy(広報外交)はどこまで健在なんだろうか、とも感じました。言葉の力でいい印象を残して、ソフトパワーを得るという外交のことであり、2015年春の米議会合同会場における演説もその一環でした。
○しかるにトランプ次期大統領やドゥテルテ大統領のことを考えると、そういう洗練された外交はどんどん庶民からかけ離れたものになっているのではないか。今では「ぶっちゃけ」型のコミュニケーションが優位な時代になっていて、そういう時代を招いたのは、ほかならぬオバマさんでありましょう。つまり8年間も名演説を続けてきたために、皆が飽きちゃったのじゃないか。
○てなことで、いまひとつ素直に感動できなかった自分がいる。なんだか申し訳ない気がするのですが。<了>

 

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ではでは。
 

(3本目)イスラエルよ、悪いのはお前だ…

ご紹介したい記事がありましたので。
「イスラエル問題」です。

 

私は、戦後イスラエルは良くない動きをずっとし続けていると、そう認識しているのです。
パレスチナとイスラエルの長年の抗争は、断固イスラエルに非(原因)があると。

しかし、世界(欧米)はその「悪イスラエル」を支援し続けてきたのです。
中でもアメリカはジャイアンのようにイスラエルをえこ贔屓し続けてきたと。

 

なぜか。

それは簡単なことで、イスラエルを支援しないとアメリカ大統領になれないから。

(そしてヨーロッパはユダヤ人に巨大な負い目がある)

 

そういうアメリカのダメ中東政策をオバマさんは初めて「正当」なものに変化させたのです。

私はその点ではオバマ大統領を高く評価したいのです。

 

しかし、そのオバマ氏は去り、今度は再び「親イスラエ」を広言するトランプ氏がホワイトハウスの主になるのです。

 

ムムム・・・・、困ったことだ・・・

 


◆WEDCE Infinity◆
『イスラエル、反入植決議で“マジ切れ”』
(by佐々木伸 星槎大学客員教授 2016/12/28)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8559
 イスラエルが国連安保理の「入植地建設非難決議」に猛反発し、決議が通るよう背後でオバマ政権が画策したと非難、あくまでも入植を続行する構え。イスラエルのネタニヤフ首相とオバマ大統領は犬猿の仲だが、オバマ氏が決議を通したのは「ネタニヤフへの最後っ屁」(専門家)。だが、中東和平の唯一現実的なアプローチ「2国家共存」は完全に崩壊の危機に瀕してしまった。

 

■実際は英国が暗躍
 今回の安保理決議に対するイスラエルの反発は凄まじかった。決議が採択された後、ネタニヤフ首相は「恥ずべき決議」と、拒否権を行使せずに決議を成立させた同盟国のオバマ政権に対する非難を激化させ、米国の駐イスラエル大使ら安保理の各国大使を呼びつけて強く抗議した。

 首相は報復措置として、国連への資金拠出拒否を決定し、決議に賛同したウクライナ首相らのイスラエル訪問をキャンセルしたほか、決議の共同提案国であるニュージーランドなどからイスラエル大使を本国に引き揚げた。

 決議はイスラエルが推進しているパレスチナ占領地への住宅建設などの入植活動を「甚だしい国際法の違反」と非難し、入植の即時停止を求めている。イスラエルへの非難決議に拒否権を発動してきた米国が棄権し、決議は採択された。

 イスラエルとパレスチナの中東和平交渉はオバマ政権の仲介にもかかわらず、2年前から頓挫したまま。将来の中東和平の在り方は94年の「オスロ合意」に盛り込まれたようにイスラエルとパレスチナによる「2国家共存」方式が基本。一方が支配者で、他方が被支配者である限り、紛争が終わることがないからだ。

 将来のイスラエルとパレスチナ国家の国境は67年の第3次中東戦争前の境界が基本、というのが国際的なコンセンサスだ。しかし、イスラエルはこの第3次中東戦争で占領したヨルダン川西岸や東エルサレムを「領土」とし、ここに住宅地建設を進めてきた。

 入植者は現在約60万人にも上り、オバマ政権下で10万人も増えた。仮に和平交渉が進んだ時、入植者が占領地に居座れば、国境の画定は非常に困難になる。このためオバマ大統領は入植が交渉の大きな障害になるとして批判してきたが、ネタニヤフ首相は聞く耳をもたず、決議が採択された後もイスラム教徒の聖地である東エルサレムへの600戸の新たな住宅を建設する計画を推進する姿勢を示していた。

 ネタニヤフ政権は決議について「オバマ政権が作成するのを手助けし、採択を懸命に働き掛けた決定的な証拠がある」と非難、「われわれはたたかれてばかりはいない」と反発した。米国はこの画策説を否定しているが、ケリー国務長官と決議の提案国の1つであるニュージーランドの外相が採択前に会談したことにイスラエルは大きな疑念を抱いている。しかしイスラエル有力紙ハーレツによると、実際に決議をまとめるために暗躍したのは英国だという。

 

■エルサレムに大使館移せば戦闘勃発も
 オバマ政権が拒否権を発動せずに決議を容認したことに、トランプ次期米大統領は批判的。新政権が始動する「1月20日以降は異なる」と述べる一方、「国連は人々が集まり、楽しい時間を過ごすためのクラブになりさがっている。嘆かわしい」と国連への強い不満もツイートした。

 トランプ政権がオバマ政権よりもはるかにイスラエル寄りになるのは目に見えている。中でも米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと主張してきたトランプ氏がこの移設に踏み切れば、パレスチナ側の猛反発は必至で、新たなインティファーダ(反イスラエル抵抗運動)やガザのイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘再燃の懸念が現実のものとなるだろう。

 ハマスとの戦闘が再燃すれば、ガザからのロケット弾攻撃が多発し、これにイスラエル軍が猛爆撃で対抗し、戦闘がエスカレート、09年や12年のようにイスラエル軍がガザに地上侵攻する懸念も高まる。

 エルサレムはユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒のそれぞれにとって宗教的な聖地。だからこそ米国はじめ各国はエルサレムに大使館をあえて置かずに配慮を示してきた。もしトランプ氏が大使館をエルサレムに移せば「エルサレムは3000年前からユダヤ人の首都」(イスラエル右派)という主張に与することになりかねない。

 

■キーマンになる娘婿
 だが、トランプ氏はこのほど、こうした主張や入植活動推進、2国家共存に反対してきたユダヤ人の弁護士デービッド・フリードマン氏を新しい駐イスラエル大使に指名した。エルサレムへの大使館移設が実現に向けて踏み出したようにも見える。

 トランプ氏には、イスラエル政策を助言するのにもう1人欠かせない人物がいる。長女イバンカ氏のユダヤ人の夫、娘婿のジャレッド・クシュナー氏だ。同氏はトランプ政権の主要閣僚の人選にも大きな影響力を発揮したが、トランプ氏はイスラエルなど中東政策では、クシュナー氏の助言を取り入れているといわれており、イスラエルとの関係が一気に強化される可能性が高い。<了>

 

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中東の、あの「パレスチナ問題」が再び火を噴くようになるかもしれないのです。

それもまた避けられない現実かもしれないのです。

でも私は言いたいのです、イスラエル(ユダヤ人)は良くないと。

欧米先進国は決してイスラエルの「悪」を看過してはいけないのです。

 

国連よ、頑張れ!!

 

私はトランプ氏の知性には一つも期待していないのですが、でもブレーンが優秀ならなんとかなるのです。

ですが、このイスラエル政策だけはきっとダメ政策になるのです。

イヴァンカ嬢のせいで・・・。

 

ふ~・・・、

イヴァンカ嬢もなぁ、魅力的な女性には違いないんだけど、・・・、

ま、もう応援は出来ないよな、と。

 

ではでは。
 

(2本目)ご紹介(安倍首相の真珠湾訪問の件)

ご紹介したい興味深い記事が2本。
安倍首相の「真珠湾訪問」を巡って、「よくやった!」派の記事と、「バカやってんじゃねぇよ!」派の記事です。
「高評価」は長谷川氏で、おもに国際外交の面からこれを高く評価しています。
片や「低評価」は小林よしのり氏で、おもに歴史観の方向からこき下ろしています。

 


◆ウィーン発 『コンフィデンシャル』◆
『安倍外交に欧州が注目!』
(by 長谷川良 2016年12月29日)
http://blog.livedoor.jp/wien2006/
 当方は28日早朝、いつものように郵便ポストからオーストリア日刊紙プレッセを取った。プレッセ紙の一面トップをみると、安倍晋三首相が27日、ハワイを訪問し、旧日本軍の真珠湾攻撃による犠牲者へ黙祷を捧げている写真が掲載されていた。オーストリアの代表紙「プレッセ」の一面トップを日本の首相が飾ることはこれまでなかったので、少々驚いた。 
・・・・・
安倍首相の外交は非常に活発だ。首相は今月15日、16日、ロシアの「プーチン大統領を招き、北方領土返還問題から平和条約の締結問題まで話し合ったばかりだ。
 1年前の昨年12月28日には、ソウル外務省で旧日本軍の慰安婦問題で岸田文雄外相と尹炳世韓国外相が会談し、慰安婦問題の解決で合意に達した。日韓両政府は、慰安婦問題について不可逆的に解決することを確認するとともに、互いに非難することを控えることで一致した。アベノミクスの成果はもうひとつだが、首相が推し進める未来志向の外交は着実に成果を挙げている。
・・・・・
 安倍首相の真珠湾訪問を1面トップ写真付きで報じたプレッセ紙は、安倍首相の外交にニュース・バリューがあると判断したのだろう。具体的には、過去の問題を未来志向で積極的に和解に乗り出す安倍外交が評価されたわけだ。<了>


◆小林よしのりブログ◆
『真珠湾パフォ、安倍の歴史観は狂っている』2016.12.28(水)
http://yoshinori-kobayashi.com/12086/
日本の首相が真珠湾に行って、旧敵国の軍人の霊をあれほど丁寧に切々と感傷的に慰めるのはおかしいんじゃないか? 
真珠湾攻撃は軍隊を標的にしたものであり、民間人を狙ったものではない。
戦争において、軍人が死ぬのは当然のことだ。
軍人の犠牲なき戦争などあり得ない。 
・・・・・
安倍晋三の歴史観は狂っている!
わしの『戦争論』を読み直せ! 
・・・・・
尖閣諸島をめぐる緊迫感が発生した当初の靖国参拝は危険だから自重した方が良かったが、その緊迫感は常態化し、アメリカも中国の危険性が分かっただろう。
もう靖国参拝してもいい頃だ。 
だがアメリカとの「和解」には必死だが、中国・韓国との「和解」は成立しないままでいいのか? 
さらに言うなら沖縄戦の犠牲者や、戦後の沖縄県民の苦労に対して、あんなに切々と慰霊し、感謝したこともないだろう? 
日本人ファーストが消滅して、米兵ファーストになってるじゃないか!
安倍晋三の歴史観は狂っている!
わしの『沖縄論』を読んでみろ!<了>

 

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私個人の意見はどうなの、といことですが、私は「十分良かった」と思っています。

「素晴らしく良かった!」とまで高く評価したい訳ではないのですが、でも決して「やらない方が良かった」ということではなく、高い費用をかけて「あえて行った」だけの効果、価値はあると言えるんじゃないかと思うのです。

それは長谷川氏と同じ「国際外交」という面での効果を見て、です。

 

で、小林氏のご見解ですが、そうですねぇ・・・・、
私は安倍氏の歴史観が狂っているとは思えないのですが、しかし小林氏がそう言いたくなるような「面」も、このパフォーマンス以外の点ではあるのかもしれない、ということまで考えるなら、そういうマイナス点はあるのかもしれないとは思うのです。

 

しかし、世の中には色々な見解、意見、見方というものがあるのだなぁと、それに感慨深いのです。

そういう意味で、ご紹介したかったと。

 

ではでは。

ご紹介(電通問題を考える系)

今日は電通問題について、池田信夫の鋭い価値ある見解がUPされていましたので、是非ご紹介したいと思い。
いや、池田さん、凄いなぁと思うのです、ほんまに。

 

 

◆アゴラ◆
『電通を呪縛する「空気」の正体』
(by 池田信夫 2016年12月28日)
http://agora-web.jp/archives/2023491.html
 電通の石井社長が辞任を表明した。いうまでもなく過労自殺事件が書類送検された責任をとったものだが、過労自殺は労災認定されただけで毎年200人いる。この程度の長時間労働は、マスコミにも霞ヶ関にもあるので、原因は長時間労働だけではない。それを役所が規制しても、日本の会社の「空気」が変わらない限り、サービス残業はなくならない。

  「空気」の本質を山本七平は「一つの宗教的絶対性をもち、われわれがそれに抵抗できない”何か”」だとし、その実体を「アニミズム」だと述べたが、これはおかしい。空気の実体はどこにもなく、しいていえば人々の脳内にあるのだ。

 このようにすべての人々に共有される情報を共有知識と呼ぶ。ゲーム理論でいうと、すべての人々が同じことを知っているだけではナッシュ均衡は成り立たない。すべての人が同じことを知っていることを知っている…という無限階の知識が必要だ。

 たとえば会社に入ったら定年まで勤めることを誰もが知っていて、それを上司も部下も知っている場合には、命令しなくても部下は残業する。共有知識の成立しない契約社員は、明け方まで残業したりしない。上司と部下の間には暗黙の了解がないので、すべて命令しないと動かないし、勤務時間が終わったら仕事が残っていても帰宅する。

 一時期まで日本の製造業が高い効率を誇っていたのは濃密な共有知識のおかげだが、広告代理店や金融などのサービス業には向いていない。だから電通で社員が夜遅くまで残業して共有している知識は、ほとんど無駄である。それは彼らを会社にしばりつけ、転職のオプションを奪っているだけだ。

 

・・・・・

 

 だが、これが進化ゲームだとすると、全体最適を実現するアルゴリズムが存在する。それは共有知識をもたない突然変異が出てきて、自分だけG型に移行することだ。これは一時的には損するが、長期的にはG型が多数派になると全体最適が実現する。孫正義氏のように空気を読まない起業家は、利己的であっても社会の大進化を可能にするのである。

 電通のような「タコ部屋」は、既存のシステムの中で淘汰によって部分最適を守る小進化のメカニズムとしてはすぐれているが、全体最適にジャンプする大進化はできない。それは電通の責任ではなく、日本社会で長期にわたって積み重ねられた慣習なので、簡単に変えることはできない。

 しかし役所が、こういう問題の所在を認識することは重要である。進化論の言葉でいうと、社員を束縛して異分子を排除する淘汰圧を弱める改革が必要だ。会社に一生ぶら下がらなくても、「この会社はブラックだ」と思ったら辞めて他に移動できる柔軟な労働市場が、労働者のストレスを減らして命を救うのだ。<了>

 

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 日本社会の多くの企業が、実はもうかなりブラック的な在り方になっていたのです、昔から。

それの代表が大蔵省などのトップ官庁であることがなんとも象徴的でありますが、とにかく実態はもう「オールブラック」と言っても過言じゃないくらいなことだった訳です。

ワタミは突出して酷かっただけで。


 いやいやいや、日本社会のこの「空気」ねぇ・・・

確かに・・・、ありますねぇ・・・。

 

 私は一概に欧米型(グローバル)のクールで合理的過ぎる形態をヨシとしたい訳じゃないのですが、でも日本型のブラック型が良いはずもなく。

まぁ、ここでも「中道」というものが理想形なんでしょうが、じゃその中道という有り方のモデルは何なのか、というと。

 

 いや、池田氏はもう欧米のグローバル型で行けばいいと、そう言いたいのかもしれないのですが。

 はてさて、その先の議論も聞きたいものです。

 

ではでは。

(2本目)ご紹介(メリークリスマス♪系)

今しがた、ちょっと興味深い記事を読んだのです。
最近よく読みに行っている苺畑さんところの記事で。
「メリークリスマス♪」と言おうよ、という。
 
 
◆苺畑より◆
『メリークリスマスと言おう!』December 25, 2016
http://biglizards.net/strawberryblog/
アメリカでは昨今「メリークリスマス」というのが禁句になっているような感がある。それについては拙ブログでの何度か紹介してきた。しかし、反ポリコレを称えたドナルド・トランプが当選したことで、アメリカは再び遠慮なくメリークリスマスと言える国になるのではないかというニュースウィークの記事を読んだのでちょっと紹介したい。
 
“トランプは、ポリティカル・コレクトネスに縛られて言いたいことが言えなくなったアメリカに真っ向から異を唱えて当選した。彼のスローガン「アメリカを再び偉大に」には、「アメリカが再び『メリークリスマス』と言える国に」という意味も込められている。
先週もウィスコンシン州での遊説で、トランプはこう語った。
「18カ月前、私はウィスコンシンの聴衆にこう言った。いつかここに戻って来たときに、我々は再び『メリークリスマス』と口にするのだと。......だからみんな、メリークリスマス!」”
 
これは素晴らしい演説だと思う。私はトランプが当選するまで、アメリカ人がこれほどポリコレを嫌がっていたということに気がつかなかった。何がしかの少数派が傷つくからと、アレを言ってはいけない、これを言ってはいけないといわれ続け、我々は本当にうんざりしていたのだ。メリークリスマスを禁句にするというのはその最たるものだろう。
<以下略>
 
*********************
 
ウム、なるほど、確かに、
行き過ぎたポリティカル・コレクトネスは、そりゃあかんよなと。
いや、でも難しいことであるには違いないのです。
そういう「行き過ぎたポリコレを主導した人々」の気持ちも理解出来るからなんです。

いやいやいや、何ごともついつい「行き過ぎる」のです、ほんまに、ついつい。
「右系」に行き過ぎれば「極右」となり、
「左系」に行き過ぎれば「極左」となり、
もう本当に「中道」を行くのがどれほど難しいかと。
 
自分では中道を歩んでいるつもりでも、気が付けば「右」に振れている場合もあり、逆に気が付けば「左」に振れている時もあるのです。
しかし結局「過ぎたるは及ばざるが如し」であり、それはもっと言えば、
「過ぎたるは及ばざるに劣れり」な訳でして、それはそれで批判を浴びなければならない事態になるのです。
そして結局私自身が、気が付けば「右」に行き過ぎ、気が付けば「左」に行き過ぎして、結局いつも右の人から左の人からも批判を浴びるハメになるのです。
 
ポリコレも、基本はその通り、いいのです。
ですが、どうしても行き過ぎるのです、ついつい。
そしてそうなると今度は強烈なしっぺ返しのような批判非難を浴びることになると。
 
ウム、難しいものだよなぁ、人生は・・・
 
ではでは。

ご紹介(どうする、日本経済…系)

大変勉強になる経済記事を読んだのです。
池田信夫氏の記事ですが、もちろん賛否両論はあるのでしょうが、私はおおむね賛同するのです。

 

 

◆アゴラ◆
『財政タカ派は正義の味方か』
(by 池田信夫 2016年12月25日)
http://agora-web.jp/archives/2023421.html
きのうの朝日新聞の香川俊介・元財務次官の記事が、ちょっと話題になっている。彼はかつて小沢一郎氏の側近として知られ、『日本改造計画』の編集長だったが、昨年8月、食道癌で死去した。彼の追悼文集『正義とユーモア』で、小沢氏が「香川氏が事務次官になって心の荷が下りた」と書いたという。
 それより私が驚いたのは、週刊文春の記事だ。2012年の消費税をめぐって、菅官房長官は当時の香川次官とこういう会話をかわしたという。

 

“ある日、[香川氏を]官邸に呼んで、「消費税の引き上げはしない。おまえが引き上げで動くと政局になるから困る。あきらめてくれ」と静かに話をしました。香川はつらかっただろうけど、「長官、決まったことには必ず従います。これまでもそうしてきました。ですが、決まるまではやらせてください」と言っていました。”

 

これは2012年末の解散が「財務省の仕掛けた政局を封じるためだった」という通説を彼が裏書きしたものだが、この年の消費税増税法案が民主党政権で成立したあと、香川氏は癌で入院した。この会話のとき、彼はすでに余命が短いことを覚悟していた可能性が強い。

 

・・・・

 

福沢諭吉のいうように政治は「悪さ加減の選択」だとすると、統合政府部門(政府と日銀)が減税で財政赤字を増やしてインフレを起こすことは政治的に可能であり、考慮に値する。浜田宏一氏はこれを景気対策と取り違えているが、シムズも明言しているように目的は実質債務のデフォルトだ。

政府がそれを検討すること自体がインフレを起こすという批判もあろうが、マイルドなインフレが起こるのはベストシナリオだ。問題はそれをコントロールできるかどうかだが、おそらくできないだろう。日本経済は一時的には「焼け跡」になるかもしれないが、政治をリセットする効果もあり、貧乏人と若者はほとんど損しない。

ハイパーインフレというワーストシナリオでも、将来世代に莫大な政府債務を先送りするのと、どっちが悪いかは自明ではない。将来世代が自分たちの負担を決めることができないというデモクラシーの欠陥を、現在の政治家が悪用しているからだ。

リフレ派は単なる無知だが、財政タカ派の人々も正義感が強すぎて、インフレを考えること自体をきらう。だがこのまま放置していても、いずれ金利上昇は起こる。香川氏の悲願を達成するためにも、「考えられないことを考える」必要があるのではないか。財政タカ派のみなさんの反論を歓迎する。<了>

 

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いやぁ、マクロ経済は本当に難しいですので、この「消費税を上げるべきか否か」の議論はその中でも、日本中の経済学者を二分するような大問題です。

 

その中で、財務省は一貫して「上げるべき」として動いているのです。

 

東大を優秀な成績で卒業して、官僚の中の官僚と自他ともに認める、まさに日本を中枢でコントロールしているともいうべき財務省のエリート達が、まさにかに「国益より省益を優先するという恥知らずなバカ者達」であるはずがない、という考え方をする国民も多いのです。(私もかつてはそう思っていましたが)

 

そしてなぜ彼らが「消費税を上げるべき」と主張するのかというなら、それは「日本のこの巨額な財政赤字を、じゃあどうやって削減するというのですか?消費税を上げるしかないでしょう!」ということなんです。

 

そういう「財政赤字を何とかしろ!」と主張する人たちを、池田氏は「財政タカ派」と呼んでいるのですが、タカ派かハト派かの議論はどうでもいいわけで、要はそれが「正しい主張か否か」な訳で。


ま、私の今の結論も、池田氏の言う「ハイパーインフレによる焼け跡作戦」しかないと思えているのです。

 

もはや途方もない巨額の、財政赤字を、まともな方法で削減することなど、到底できないと考える方がノーマルだと思えるのです。

 

そういう意味で、財務官僚諸氏は、その持論をそろそろ捨てて、いいかげん「消費増税は不可避!」などと叫ぶことを止めた方がいいと、そう思うのです。

 

いやいやいや、あの優秀な財務省の、官僚中の官僚とも言うべきエリート達が、日本丸の取るべき進路をミスリードしているという事実に、驚くしかないのです。

 

マスコミが誤るのは仕方ないのです、それほどに優秀な人材揃いのフィールドでもないのでしょうから。

 

しかしあの財務省が・・・、あのエリート集団の財務官僚が・・・、誤っているとは、そりゃ誰でも俄かには信じがたいのです。

 

私も数年前までそうだった訳で。

 

いや、それにしても安倍政権、その経済政策がどうにも手詰まりで、もうそろそろ限界でしょうか。

 

アベノミクスはもうはっきり言って全然機能していないと思えるのです。

 

現状はもうダラダラと惰性で数年前からの繰り返しです。

 

ここは三橋氏や藤井聡氏あたりのグループに委ねて、経済政策の大転換を図るべき時と、そう思うのです。

 

安倍政権の経済政策グループは、もう限界であると。

 

いや、どうなんでしょうかねぇ・・・、真相は・・・・。

 

ではでは。

ドイツ受難…

なんか夢を見たのです。

私が、ドイツに居て、ドイツの難民政策について何か語っているのです。

 

 

そして、・・・、

後はもう朦朧として明確に思い出せないのですが、ただ、「そうだ、これをブログに書こう・・・」と、夢の中で考えていたことは記憶の中にあるのです。

 

問題は、何を書こうとしていたのか、それが思い出せないこと・・・・、困ったことだ。

 

ドイツで、クリスマスを前にしてベルリンの広場に大型トラックが突っ込むというテロが起きたのです。

まさに“ドイツ、受難”です。

 

ドイツは、メルケル首相の理想論的な人道支援という観点から、100万人近い規模での難民を受け入れたのです。
当時から一定の批判はあったのでしょうが、ドイツ国民は大よそ、その決定を是として受け入れたのでしょう。
もちろん、積極的イエスの人と消極的イエスの人がいて、おそらくは、「仕方がないから…」という理由、あるいは「積極的にノーとは言えない…」という理由から、イエスの意思を表した人も多かっただろうと推測されるのです。

世界の人々は、そういうドイツを見て、「大変だろうなぁ…、ご同情申し上げる…」という見方が多かったのだろうなとも推測されるのです。


もし日本が、地理的にドイツを同じような場所にあったとしたなら、そしてドイツと同じように無数の難民が、「日本に行きたい」として列をなして隣国に迫ってきたなら、日本はどういう対応をしたのでしょうか。

 

安倍さんもやはりメルケル首相と同じような決断をしたのでしょうか。
そして日本国民も多くは、「仕方がない…」として受け入れたのでしょうか。

あるいは、安倍さんは「到底受け入れられる規模ではない。10万人が限界だ…」くらいなことで、先着10万人さんまでは受け入れても、残りは断固「すいませんが、他所へ…」ということで固く国境を閉ざして諸外国の非難を浴びてもスルーでやり過ごしてきたでしょうか。

そして日本国民もそういう安倍首相の決断を、「ムゴイようだが仕方がない。安倍さん、グッジョブ…」としてその決断を支持したでしょうか。

 

いやいやいや、どうでもいい仮定の話なので、そんなことはまことにどうでもいいのですが、ただ、ドイツ国民の「今」の気持ちはどうなんだろうと、気になるのです。

メルケル女史は、世界に範を垂れたのでしょうか。

 

後世の歴史はメルケル女史をして「人類の為し得た崇高な決断の一つ」として、その理想論的な政策を支持するのでしょうか。
それとも、「理想論に引きずられて、結果としてドイツ国民に苦難を強いた悪しき決断」の烙印を押すのでしょうか。


今のドイツを見るなら、これはもう世界中の人が「ドイツ、可哀そうに…。恩を仇で返されるとはこのことか…」という感じで同情して見守っているのだろうと思うのです。

 

そして悪いのは…、誰なんだ…。

ISか、それともシリア難民そのものか、それとも難民に紛れ込んだバカ過激派か…。

それともか、最初からそういう危険があることを承知の上で受け入れを決断したメルケル首相か…。

 

そして方やシリアのアレッポでは、もう政府側と反政府側の内戦が激烈を極めて、アレッポ市民の多数に死傷者が出ているとか、もうそこは北斗のケンの世界、ムチャクチャな世界になっているようで。


う~む…、

好きにしてくれ…、

と言うしかないではないかと思うのです。

シリアも、ISもアサドもプーチンもトランプもメルケルも安倍さんも、好きにしたらいいではないかと言うしかないのです。


いやはやなんとも…、

ドイツは、凄い国なんだけど、

バッハを生みベートーベンを生みゲーテを生みカントを、ヘーゲルを生み、あ~世界史上に冠たる優秀な国民なんですが、あ~、なんたることか、あの大バカヒトラーが全てを台無しにしてくれたお陰で、20世紀の後半からはひたすら贖罪の嵐の中に叩き込まれたのです。

(まぁ、日本も同じような事情で戦後はもう謝罪の嵐の中にいた訳なのですが)

そして今でもそのトラウマの延長線上に、メルケル女史の大決断があるのです。

 

そしてドイツ国民自身が、自らのトラウマと無意識の世界で格闘、葛藤しているのです。

(シリア難民なんか嫌いだ!でも言えない…)という。

う~む…、


ポリティカルコレクトネスねぇ…、

誰も歯向かえない「理想論」ねぇ…、

 

でも現実の自分の中には「嫌なものは嫌だよねぇ…」という本音がある訳で。

「建て前(理想)」と「本音(エゴ)」ねぇ…、

 

いやはやドイツも大変だなぁ…、

 

まぁ、日本だって北朝鮮が崩壊したら、日本海を越えて大量の北朝鮮難民が押し寄せて来ることが予想される訳で。

その時にはお気楽にドイツの悲劇を同情していられなくなる訳で…。


ふ~…、どこもかしこも大変だ。

でもそれが人生、

それが世界。


ま、頑張りまっしょい!

ではでは。
 

ご紹介(「リ・トラウマ」なる言葉)

いつもなかなか深い考察を披歴されている“どーか誰にも”さんのところの記事に、これまた深い内容の、かつ刺激的な話の記事がUPされていたのです。
それでご紹介したいと思い。
どえらい長文ですので、どうぞ興味を惹かれた方だけ。

 


◆どーか誰にも見つかりませんようにブログ◆
『【リ・トラウマ】の可能性』(2016年12月19日)
http://blog.livedoor.jp/ussyassya/
なんら信じられていない一仮説の話ですが、気になったので備忘録的に。

15年以上前だと思うんですが、竹内久美子さんの書籍の中で、禁断の問いを目にした事がありました。それは、シンプルに言えば、

「何故、レイプされる危険性がある場所へ、これまたレイプされそうな服装をして出掛けてゆく被害者が存在するのか?」

という問題についてでした。この辺りから竹内久美子さんは「トンデモ系」等と揶揄される事になった気もするのですが、少なくとも思想の自由であるとか、思考実験としてはホントは興味深い考察であったと思う。予習をすると、

「何故、ヤンキーと呼ばれる人たちは早婚で比較的早い年齢で子供を持つのか?」

に通じている。勿論、学術的に何かが証明されているという話ではありませんが、そうした問題に考察を加えてみるのが思索なのであって。むしろ、好ましくない意見を抹殺してしまろうとする近25年ぐらいの言論支配がおかしいと言えばおかしいのだ。

竹内久美子さんに拠れば、それは繁殖戦略ではないのかとする。ヤンキーと呼ばれる人たちのルックスは総じて、イケており、男にしても女にしても、総じてカッコイイ人たちではないのか――と展開させるのだ。外観(ルックス)が勝負である彼等の繁殖戦略は、外観が相対的に優れている内にモテて、そこで、いい条件の相手を見つけて子供を設けてしまう事ではないのか? 優れた容姿で異性にモテモテなのであれば、それに越したことはないんですよね。他方、優れた容姿を持っていない非モテの男女は、カッコつけて、粋がってみたところで、それがモテ要素として反映されないのだから、まぁ、地道に生きてゆくしかない。

・・・・・・

(以下略)

 

***************************

 

いや、「リトラウマ」という言葉、覚えておこうと思うのです。

そしてポリティカルコレクトネス、ねぇ・・・・。

 

いや、人間というのは、つくづく、難しい生き物だなぁと。

 

ではでは。

ご紹介(トランプ当選の背景事情系)

風邪でちょっと調子を崩していましたが、世の中はどうも巡行運転のようでして、2016年もだんだん大詰めを迎えつつあります。

 

先ほど、アメリカ在住でトランプ現象をつぶさに観察して、すぐれたレポートを発信し続けていた町山智弘氏のインタビュー記事を見かけまして、これがまたなかなか読ませる価値あるレポートでしたので、ご紹介したいと思いまして。

 

 

◆BLOGOS◆
『町山智浩氏が見た“美味しいとこ取り”トランプ大統領の矛盾』
(2016年12月14日)
http://blogos.com/article/201961/
 世界中から大きな驚きをもって迎えられたトランプ大統領の誕生。米国在住で映画評論家、コラムニストとして活躍する町山智浩氏は、トランプ大統領の誕生をどのように見たのだろうか。そして、トランプの主張してきた政策に、どの程度実現の可能性があると考えているのだろうか。トランプの支援者集会を周り、「さらば白人国家アメリカ」を上梓した町山氏に話を聞いた。(取材・執筆:永田 正行)

 

■トランプは最後の「白人のための大統領」

BLOGOS編集部
-今回のトランプ当選の背景には、“白人の怒りがあった”という分析をよく見かけますが、町山さんはどのようにお考えですか。

 

町山智浩氏(以下、町山):CNNの出口調査によればトランプに投票した人の57%が白人ということですね。私もトランプの支援者集会を訪ねて、アイオワやアリゾナ、それにオハイオを周って話を聞いていますが、参加者はほとんどが白人でした。そして白髪が多い。つまり、圧倒的に高齢者なんです。CNNによれば50歳で分かれるようです。つまり50歳未満の投票者の過半数がヒラリーに入れて、50歳以上はトランプということです。

また、これはサンノゼというシリコンバレーに非常に近い街で行われたトランプ支持集会で感じたことなのですが、平日の夕方6時から始まった集会にネクタイやスーツを着ている人がいない。作業着やワークブーツ、いわゆるブルーカラーの人達が多かったです。

直接彼らに話を聞くと、ガソリンスタンドや水道、学校の先生でした。つまりハイテクや金融グローバライゼーションや株式市場とは縁のない、地元に密着した仕事の人達ですね。ITなどのニュー・ビジネスに対してオールド・ジョブズ(昔からの仕事)などと呼ばれています。

それは社会インフラの末端を担う仕事なので、間違いなく必要です。しかし、飛躍的なビジネスの拡大は望めないので、どうしても収入が頭打ちになってしまう。予備選が始まった頃、トランプ支持者は、「年収700万円程度」と報道されて、日本では「それほど悪くないじゃないか」と受け止められましたが、これは世帯収入Household Incomeなんです。つまり、夫婦で働いていたら、各々の年収は350万円。彼らの多くが50歳以上であることを考えると、決して裕福ではない。

またCNNによるとトランプ支持者の51%が非大卒で、PRRI調べでは40%が生まれた街から出ないで暮らしている。つまり大学に行くために都会に出なかったということですね。そういう人々を2008年の共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリンは「リアル・アメリカン(本物のアメリカ人)」と呼びました。トランプが彼らを「サイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)」と呼んだように。

そのいっぽうで、ニューヨークのある東海岸や、カリフォルニアのある西海岸の、ITや金融業界で働く人々は20代で年収は1000万~2000万円を得ている。しかも将来もっと発展する仕事です。こうした都会のエリートと、田舎のサイレント・マジョリティの間に接点はほとんどありません。飛行機は田舎の上を飛び越していくし、製造業はアメリカの田舎から中国やアジアに行ってしまったので、ビジネスでもあまり取り引きがない。だからサイレント・マジョリティは“取り残されている”という感覚があるのでしょう。

実際、トランプ勝利を見た広告業界は「田舎の人たちに向けたマーケティングを忘れていた」と反省し始めたという報道がありました。

 

―そうした人々がトランプを支持したわけですね。

 

町山:だから、トランプは勝てないだろうと思ったんです。支持者が白人の高齢者だけに限定されて、広がりがなかったので。白人の人口は減少し続け、現在、既に60%しかいない。2040年には50%を切ると推測されています。やはりPRRIの調査によると、トランプに投票した人たちの3分の2が今回の選挙は「ラスト・チャンスだった」と言っているそうです。つまり、白人が多数派として政治を左右できる最後のチャンスだと。トランプは移民の規制を打ち出して人気を集めましたが、白人の人口の比率がこれ以上減るとマズいという危機感があったからだと思います。

白人は全人口の60%しかいないにもかかわらず、今回の選挙では全投票者のうち70%が白人でした。それだけ必死に投票に行ったわけです。一方、非白人の投票率は歴史的なレベルで低かった。

今回、トランプがメキシコ系移民を侮辱したので、それに反発してヒスパニックの投票率は伸びたのですが、黒人の投票率はオバマ時代に比べて大きく下がりました。さらに、若い人たち、オバマの当選に大きな役割を果たした「ミレニアル」と呼ばれる30歳以下の人達の投票率は、ここ何十年かで最低でした。さらに女性の54%しかヒラリーに投票しなかった。これはオバマよりも低かったです。

それでも、ヒラリーは全体の得票数で260万票もトランプに勝ってるんですけどね。トランプの得票率は46.8%で、2012年に500万票差でオバマに負けたロムニーの47.2%よりも少ないんです。、2008年に1000万票差で負けたマケインと同じくらいです。つまり、本来であれば、トランプの得票数は勝てない数字なんです。しかし、全体の投票率が54.7%と、12年間で最低だったので、それでも勝利しました。

 

-投票率低下の背景には、既存の政治に対するあきらめがあったのでしょうか?

 

町山:そうですね。最近最も投票率が高かったのは2008年で、オバマが「チェンジ(改革)」を掲げて出てきた時ですからね。

オバマに投票したミレニアルは今回、ヒラリーではなく、民主党の公認を最後までヒラリーと争ったバーニー・サンダースを支持していました。サンダースは民主党員ではなく、社会主義者を自認していました、トランプと同じく、既存の政治に対するアウトサイダーだったわけです。

若者たちがサンダースを支持した最大の理由は、学費の免除です。富裕層に対する増税を資金源として、公立大学の学費を無料にするとサンダースは主張しました。これが非常に具体的で若者の支持を得ていたのです。しかし、サンダースが離脱したことで彼らは投票に行くのを辞めてしまったのでしょう。

同じように、トランプが選挙に勝った最大の理由は、TPPとNAFTAの破棄を掲げたことです。トランプは「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」と呼ばれる五大湖地方の州ですべて勝利しています。製鉄や自動車などの重工業の拠点だった地帯です。ここはラテン系、メキシコ系、イスラム系の移民がそれほど流入していない場所なので、「移民排斥」はそれほど関係ない。この地方の人々に響いたのは、やはりTPPとNAFTAを破棄することで工場を国内に取り戻すというトランプの公約です。保護貿易政策ですね。

-自由貿易の方が全体の富は大きくなるという認識が一般的ですが…。

町山:自由貿易で利益を得るのはウォール街の金融業者や、西海岸のIT業者ですね。例えば、iPhoneだって全部中国で作っているわけですから。

しかし、自由貿易だと、製造業の工場は人件費の安いメキシコやアジアに移転されちゃうわけです。それで経営者は儲かりましたが、ラストベルトの労働者は仕事がなくなってしまった。

彼らの支持を集めるためにトランプは、「ウォール街は敵だ」と主張してきました。ヒラリーや他の共和党議員を「ウォール街から金をもらってる」と攻撃してきました。特に「テッド・クルーズの妻はゴールドマン・サックスの重役だ」だの「ヒラリーはゴールドマン・サックスから講演料をもらった」だのゴールドマン・サックスとのコネクションを攻撃対象にしてきましたが、それで票を集めて当選したにも関わらず、財務長官をはじめ経済閣僚にはゴールドマン・サックスのOBを次々に起用してるんですよね。ラスト・ベルトの人たちは「裏切りだ!」と怒らないんでしょうかね(笑)。

 

■トランプは保守でもリベラルでもない

-トランプは当選したことで、これまでの主張が軟化しているようにも見えます。また、共和党から全面的に支持されているわけではないので、今後どれだけ当選前の主張を実現できるかは不透明だと思うのですが。

 

町山:トランプは選挙中、共和党の政策に一致していること、反していることの両方を言っています。つまり、彼は保守でもリベラルでもない。ラスト・ベルトの白人ブルーカラーにウケそうなことは何でも言っていました。

もともと、大統領選の勝敗を決する激戦州は英語では「スイング・ステーツ(揺れ動く州)」ですから、保守でもリベラルでもあります。特にラスト・ベルトの白人ブルーカラーは労働組合員なので、伝統的に民主党の支持者でした。1980年の選挙ではレーガンに投票しましたが、クリントンもオバマも彼らから圧倒的に支持されていました。オバマは2008年も2012年もラスト・ベルトで圧勝してますからね。GMとクライスラーが破綻した時に公的資金を投入して立て直しましたから、支持されて当たり前なんですが。

今回の投票でも、CNNの出口調査では投票者全体のオバマ支持率は57%と、トランプよりヒラリーよりも高いという異常な状況になっていたんです。

しかも、民主党支持層に限って調べると、67%がオバマの3期目を望んでいる。つまりヒラリーよりもオバマに政権を続けてほしいと。だからオバマ人気はヒラリーにとって追い風にならなかったんです。

今回は「トランプが勝った」から「保守派が勝った」というわけではありません。特に、保護貿易は本来、労働者を守る民主党の政策です。共和党は自由貿易主義です。NAFTAを推進したのも、父ブッシュでした。

ところがヒラリーは今回、NAFTAを否定しませんでした。何故ならNAFTAに実際に調印したのは、ビル・クリントンだったからです。彼が当選直後に批准したのがNAFTAなのです。

またTPPについても、オバマは中国への対抗策として賛成しており、共和党にも自由貿易の立場から賛成者が多かった。民主、共和両方とも否定しにくいNAFTAとTPPに反対したのが、アウトサイダーのサンダースとトランプだったんです。

特に共和党内の予備選中にトランプは、ライバルのジェブ・ブッシュに対して「お前のオヤジがNAFTAを始めたんだ」と攻撃していました。これに対してジェブは共和党のポリシーに忠実に「自由貿易を守る」と言い続けたために、労働者の支持を失ってしまいました。

 

-トランプは共和党の大統領ですが、これまでの共和党を背負っているわけではないのですね。

 

町山:まったく背負っていません。共和党と一致するような政策はそれほど多くないですから。例えば、共和党は、ソーシャルセキュリティーと呼ばれる国民年金を縮小しようとしています。しかし、トランプは、「それには一切手を付けない」と言いました。庶民の支持を失うからです。

また、「オバマケアに関しては完全破棄」と共和党は主張していますが、トランプは何度も「改善する」と言っています。つまり公的医療保険制度そのものは残すと主張しているのです。オバマケアのおかげでやっと医療保険に入れた人は全米で2千万人もいるので、彼らから再び保険を取り上げるなら、選挙に勝てないからです。

イデオロギーではなく、有権者を喜ばせる政策ばかり立てることが「ポピュリズム」なので、トランプは「“美味しいとこ取り”ばかりしてるから、政策が矛盾してしまう」と指摘されてきました。それでも、とりあえず美味しいとこ取りをすれば、選挙には勝てるわけです。
(以下略)

 

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ピエロであることを自覚しているピエロと、
自らがピエロを演じていることの自覚なき真正のピエロと・・・


私にはどうにもトランプ氏がピエロに見えて仕方がないのです。
もちろん、トランプ氏が、自らがピエロを演じていることを自覚している、つまりはサーカスでのピエロ役のコメディアンであるなら、それはそれで素晴らしいピエロなんですが・・・


いかんせん、トランプ氏は自分がピエロのように見られているという自覚が全然ないようで・・・


これは世界にとって喜劇なのか悲劇なのか、・・・・

いや、半分は喜劇で半分は悲劇なのか・・・

 

いずれにしてもトランプ氏は、どの段階で自分が世界中から「全然リスペクトされていない最低の大統領である」ことを、自覚するのでしょうか。

それとも、私のそういう予測を丸ごと全部外すような「素晴らしい大統領」にどこかで見事に変身してしまい、「見たか、バカたれどもめ!これが俺の真の姿だ!」として、世界中をあっと言わせるようなことになるのか。

 

ムムム・・・、

 

トランプさんね、目立ちたがりの、抜け目ないただのオジサン、のような気がするのです。

いやはや・・・

 

ではでは。

ご紹介(フェミニズムの話系)

ちょっとご紹介したい記事がありまして。
アメリカはカリフォルニアにご在住の日本人女性の方のブログなんですが、“フェミニズム”に関した論考なんです。
とても納得できる素晴らしい記事に思えまして、是非皆さんにご紹介したいと思った次第です。

 

 

◆苺畑より◆
『現実離れした現代フェミニズム、フェミニズムを再び偉大にするにはどうしたらいいのか』
http://biglizards.net/strawberryblog/
私が尊敬する旧フェミニストの大御所クリスティーナ・ホフ・ソマーズ女史の最近のコラム「フェミニズムを再び偉大にする方法(How to make feminism great again)」という話をちょっと読んでみたい。

ヒラリー・クリントンが大統領選で大敗してからというもの、過激派フェミニストたちの振り乱しようは見苦しいばかりである。人気テレビ番組「ガールス」スターのリナ・ダナムは蕁麻疹が出て療養中だとか、人気歌手のケイティー・ペリーなどツイッターで「革命来る!」と叫び、現代フェミニストのリーダーロビン・モーガンなどは「病める父系社会は女と死闘中だ。」とまで書いている。

しかし多少良識あるフェミニストたちの間では、最近のフェミニズムはエリート過ぎるのではないかという反省もみられる。しかしソマーズ女史はそのもっと上を行き、現代フェミニズムはアメリカ社会から離れてしまったというより、現実社会から完全に離れたものになっていると語る。この現実離れしたフェミニズムを再び地球に連れ戻すためには一体なにをしたらいいのか、ソマーズ女史には提案がある。

 

■第一に、合衆国を父系社会と呼ぶのはやめること!
父系社会というのは男性だけが権力を持ち女性には何の権限もない社会をさすが、女性が国務長官になったり連邦裁判官になったり主流政党の大統領候補にまでなれる社会を父系社会と呼ぶのは正しくない。にも関わらず、なぜフェミニストたちは女性は未だに虐げられた存在だという嘘を触れ回るのか。

アメリカの女性の給料は男性の2/3だとか、四人に一人の女子大生が強姦の犠牲になっているとか、女性はネット上で激しいセクハラや暴力にあっているとか、虚偽の女性虐待説がまかり通っている。こうした虚偽の訴えは本当の問題解決から資源を取り上げることになり、害あって益なしである。

今日の女性運動は男性も女性と同じように葛藤していることを認めるべき
現代社会で生きている以上、苦労をしているのは女性だけではない。男性もそれなりに苦労しながら生きている。確かひ大会社の社長とか科学者とか国会議員とかはは、まだまだ女性の数は少ないかもしれない。しかし労働者全体を見た場合、男性の方が圧倒的に重労働で危険な仕事についている。職場で怪我をしたり死んだりするのは男性(特に労働階級)が女性より圧倒的に多いのだ。

また教養の面でもラテン系や原住民の女性は白人男性よりも高い率で大学に進学している。無教養な男性が増え社会の経済を支えられなくなって困るのは男性だけでなく女性も同じである。

過去の女性運動は女性の平等な権限を勝ち取ることにあり、その功績はすばらしいものがある。しかし現代のフェミニズムは一部の人々の権力争いにと成り果てている。「どうも彼女達は金星と火星の間ではゼロサムゲームしかないと考えているようだ。」とソマーズ女史。これは昔恋愛学のジョン・グレイ著の「男は火星、女は金星からからやって来た」という本の題名から来るもの。ゼロサムゲームというのは戦いでどちらかが勝てはどちらかが負けるという意味。

しかしほとんどの女性は男女の間で戦争が起きているなどとは考えていない。普通の女性にとって男子は敵ではない。彼らは兄弟であり息子であり夫であり友達なのだ。普通の女性はフェミニストが考えるような理想の女性像を求めていない。2013年に行なわれたピューリサーチ調査によれば、アメリカのお母さんたちに、どのような役割分担が理想かというアンケート調査を行なったところ、61%のお母さんたちがパートか専業主婦が理想だと応えたという。ロンドン経済学校の社会学者キャサリーン・ハーキム女史も西欧州においても同じような結果が出ていると語る。

フェミストらは自分らが理想に描く女性像を支持しない女性たちを自らを嫌う男尊女卑主義者として軽蔑するが、いまは2016年、1960年代とは違うのだ、女性の自由な意思を尊重すべきなのでは、とソマーズ女史は問いかける。

フェミニストたちが男女には全く何の違いもないと主張することによって女性全般を傷つけている。医学的な男女の差は議論の余地がない。だが、だからといってそれを理由に女性蔑視をすべきだなどとは誰も言っていない。

本当の男女平等社会というのは、女性だから男性だからといってその役割を限定するのではなく、個人の自由な選択と個々の才能によって判断されるべきなのである。女性の大半が専業主婦を求めるならその選択は尊重されるべきだ。しかし女性でも科学者や兵士や工学士を求める人が居るなら、男子と平等に機会を与えられるべきで、同じように保育士や看護士になりたい男性にも同じように雇用の機会が与えられるべきなのだ。

そうやって個人の自由な選択を可能にさえしておけば、たとえ結果的にある職種に男子が多かろうと女子が多かろうと、それは差別ではないのである。フェミニズムの一番の問題は女性をひとつの集団として判断し個人としての才能を無視していることにある。そうやって一番傷つくのは、やはり女性なのに。<了>

 

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いや、素晴らしいご意見だと。

 

ではでは。