全国に4万ある八幡社の総本宮である宇佐神宮(大分県宇佐市)。日本史の教科書では、道鏡や和気清麻呂らが登場する奈良時代の宇佐八幡宮神託事件で有名です。その一角に参拝客を迎えるように小さな蒸気機関車が佇んでいます。ドイツ・クラウス社製の10形「26号」。1891(明治24)年生まれ。九州鉄道(国鉄の前身)創業期に導入された20両のうちの1両です。

 

 

 

 

 

クラシカルな細長い煙突が魅力的。71年間活躍しました。山口県防府市で保存されている防石鉄道の機関車も同型です

 

 

 

私が先日訪れたJR鹿児島本線近くに残る赤レンガアーチの旧線(福岡県岡垣町)も、走っていたかもしれません。26号は九州鉄道の国有化後も、鳥栖機関区の入換用として戦後まで使用されたそうです。

 

 

26号にはその後「第二の人生」が待っていました。「還暦」が近づいた1948(昭和23)年に大分交通に移籍。こんどは宇佐神宮と国鉄宇佐駅、隣町の豊後高田を結ぶ宇佐参宮線で、同線が廃止された65年まで人々を乗せて働きました。

 

 

引退したころには貴重なSLであるとの認識が広がっていて、保存後も修繕されたり屋根が設けられるなど地域によって守られてきました。そのあたりの経緯は地元が刊行した「しあわせなクラウス」という絵本にまとめられているようで、こんど読んでみたいと考えています。

 

 

 

クラウス26号のまわりには、保存修復運動を伝える案内板などが設置されています

 

 

 

現役当時を知る形式に懐かしさを覚えるのに対して、自分が生まれる以前に活躍していた保存車両は何となく「資料」として見てしまうものですが、明治、大正、昭和、平成を経て今を生きるクラウス26号には自然と親しみが湧いてきます。

 

 

誕生から130年。九州の鉄道黎明期の生き証人として、地域に愛されながら歴史を伝える役割は続きます。

 

 

 

(おまけ)

国道10号中津バイパスにあった「ようこそ宇佐へ」の看板。英語で書かれていて、さすが「USAシティー」。思わず笑ってしまいました…