幻のジェームス・ディーン・ジャケット | 板橋区の隠れ家ヨーガ・スタジオ

幻のジェームス・ディーン・ジャケット




ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」という映画を観たことがあるでしょうか?

私は今から20年前、高校2年の時に、

日比谷でリバイバル上映された時に初めてこの映画を観ました。

当時、内容は正直あまりピンとはこなかったのですが、

この映画での赤いジャケット姿のジミーが何ともかっこよく、

それしか頭の中に残っていない映画でした。




この映画は1955年にアメリカで製作、上映されたもので、ジミーは当時若干24歳。

背景は学園もので、転校生のジム(ジェームス・ディーン)は、

2枚目のせいもあり、不良グループに目をつけられ、

喧嘩、チキン・レースでの勝負をすることになります。

内容はさておき、ジミー以外の不良グループは皆、

黒いレザーのライダース・ジャケットにジーンズ、ブーツという服装の中で、

ジミーだけが赤いジャンパーに白いTシャツ、ジーンズにブーツ。

レザーよりも質の低い素材のジャンパーなのに、

黒の中にジミーの赤だけが最高に栄えている映画でした。

この映画の上映後、アメリカの若者の間で、この赤いジャケットが大流行したそうです。

誰もがジミーになり切ったのでしょう。




影響されやすい私は、

映画館を出た瞬間から頭の中では赤いジャンパーを着た自分の姿がしっかりと映っていました。

家に帰って早速、赤いジャンパーを求めて洋服屋さんです。

地元の洋服屋、デパート、上野アメ横、原宿と色々歩きました。

しかし当時で32年前のジャンパー、どこのメーカーなのか、

それに日本で同じ物が存在するのか、現在も売っているのか、

全く知識のないままに買いに行ったのですから見つかるはずがありません。

デパートに赤いジャンパーが売っていても、

何ともお上品なお品で、とてもジミーの後光ジャンパーとは似ても似つきません。

少々諦めモードに入った時に池袋の若者専門の洋服屋に一つの赤いジャンパーを見つけました。

それはコットン生地で、形もまさしくジミー・ジャンパーです。

ただ一つ何点があります。

それは背中が真ん中から割れて開いたデザインになっているのです。

一時そういうデザインが流行ったそうですが、

ジミー・ジャンパーを求めている私にとっては何とも間抜けなデザインです。

しかし早く赤いジャンパーに身を纏いたい願望が抑え切れなくなっていたので、

そのジャンパーを購入しました。

背中の間抜けデザインは、近所の直し屋さんで閉じてもらい、

周りから見れば一瞬、‘おっ、ジェームス・ディーンのジャンパーじゃん?’

と思われるだろうと期待して身に纏いました。

しかしジミーの天下一品の着こなしには足元にも及ばず、

後光どころか蛍の光もささないような感じです。

それでもめげず、へインズの白いTシャツ、

リーバイス501ジーンズ

(実際ジミーが穿いていたのはLEEだということが後で分かり、当然LEEを買いなおした),




そして足元には黒いブーツ(ジミーも映画では黒いブーツを履いている)、

これでもまだ足りない。

そう髪型はオールバックとリーゼントの中間くらいに前髪を上げるのだ。

ここまでやってようやっとジミー。

しかし外人の髪の生え方は後ろに向かっているので、自然に後ろに流れるのですが、

髪質が柔らかい、典型的な日本人生えの私が後ろに髪を持っていくと、

真ん中に分け目が出来てしまい、

短く髪を刈って分け目をなくそうと試みると、

気が付いた時にはスポーツ刈りになっていたと

とても苦労と努力を重ねていた高校時代でした。


そんな状況なので、自分の単なる赤いジャンパーでは納得出来ず、

本屋で立ち読みしながら、文献などで色々と調べました。

そして最初に分かったことは、

*ジミーのジャンパーはマクレガー製である

*そのジャンパーは‘スウィング・トップ’と呼ばれている

でした。

その知識を基にもう一度洋服屋さんに行くのですが、

マクレガー製のスウィング・トップでもジミーと同じ形はありません。

‘本当にマクレガー製のスウィング・トップか?’

と疑問を持ち更に調べたら


*メーカーはバラクーダーでドリズラー・ジャケットと呼ばれている

*メーカーはマクレガーでドリズラー・ジャケットと呼ばれている


と何とも不確か情報しか掴めませんでした。

そしてその本に掲載しているジャケットが明らかにジミーの物とは違うのです。

そんな暗礁に乗り上げられてしまった私はいつの間にか浪人時代を過ぎて大学生になっており、

ジミー・ジャンパーのことも忘れていました。



それから約10年後、30歳過ぎくらいの時です。

当時アメリカのヴィンテージ古着にはまっていた私は、

一冊丸ごとビンテージ古着が掲載されている本を古本屋で見つけ、

面白そうだと思って購入しました。





ぱらぱらとページをめくり眺めていくと、ある1ページに目が止まりました。

‘1950年代マクレガーのAnti-Freeze Jacket’

詳細を読んでいくと‘ジェームス・ディーンが映画‘理由なき反抗’で着ていた...’

と書いてあり、写真を見ると黒のジャンパですが、

それは間違いなくジミー・ジャンパーの色違いでした。

生地は実はナイロン製、インナーにフリースのような生地が張ってあるらしいのです。

なるほどナイロン製か、これで謎が解けました。

写真や映画で見ると、コットンのように見えたり、

光って見えるのでレザーかなと思ったりしたのですが、ナイロンだったのです。

そして映画の1シーンでジミーは、Tシャツ一枚で寒さに震えているひ弱の友人に

`Put on my jacket, It`s warm. `

と言って自分のジャンパーを渡すのです。

初めて映画を観た時には、このぺらぺらのジャンパーがそんなに暖かいのかな?

なんて思ったのですが、インナーが付いていれば納得です。

これだと確信を得た瞬間、ここ10年以上忘れていたあの熱い思いが一瞬にして甦ってきました。

この時にはヴィンテージ古着を探すのも大分慣れていたので、

見通しはとても明るいです。

しかし独自で築き上げてきた古着ルートを使って、

同じモデルは見つかっても黄金の赤は見つかりません。

そして黄金の赤が見つかっても、ビッグサイズだったりと難航は続きます。

そんなある日、ある海外のオークションで

赤のジャスト・サイズのマクレガーAnti-Freeze Jacketを見つけたのです。

初めてその上着に出会い、憧れ、探し求めてからもう20年近くの月日が経とうとしていました。

‘時はお金では換えられない、長年の歴史にピリオドを打つ時だ’

と一枚のジャケット探索に決別しようと思い、

いくらお金を出しても絶対手に入れると強く決意をし落札しました。

落札金額は公表しませんが、アメリカから自分の手元にジャケットが届きました。

この手にした瞬間からもうジャンパーではなく、

ジミーが映画で言っているように‘jacket’と呼ぶことにしたのです。





なるほどナイロン製、これなら映画で艶があるように映るな、

着てみると

‘ウォ~暖け~~~......’

感動の一瞬です。ウェストが絞り込んであるので丈が短くなり、

ちょっと動くとズボンのベルト・ループよりも上に上がります。

ジミーも映画でそのシルエットのシーンが多々あります。

そして最も大事なのは襟なのです。

ジミーは常に襟を立てて着ているのですが、

私が昔買ったジャンパーは襟を立てても、

根性がなくすぐに襟が寝てしまいます。

このジャケットは違います。襟を立てたら、

少し寝る感じで自然な具合で襟の立ち感が残るのです。

完全に自分とジミーがシンクロする瞬間です。



当時17歳、ジミー24歳。
購入時34歳、ジミー24歳。
いつの間にかジミーの歳をはるかに超えて年上になっていました。
それでもあのジャケットを着たジミーはいつまでも私よりも年上であることでしょう。


先日、外で着るのが勿体無くてずっと大事に保管していたジミー・ジャケットを取り出して外出しました。

My jacketに白いTシャツ、そしてジーンズを穿いた私の姿を見て、私とmy jacketの歴史を知らない妻が、

‘なんかそのジャンパーかっこ悪いね、他のを着てよ’

とあっけなく言いました。

前髪を下ろしていた髪型がいけなかったのでしょうか?

いや、何をしても同じように言われることでしょう。

それでもがっかりすることなく、ただ笑っただけの私は随分と老いたなと感じました。

それでも自分の中ではこれを着る時は何歳になってもジミーとシンクロすることでしょう。

そしていつか寒そうにしている誰かに

`Put on my jacket, It`s warm. `

というセリフを吐いてさりげなくMy jacketを渡したいという夢がまだあるのです。