【研究授業の感想(東條)及び研究協議内容】
「じゅげむ」の音読発表では、手を挙げた数名の生徒さんが、実に楽しそうな表情で「じゅげむじゅげむ・・・」と時に早口言葉も交えながら語られました。
中にはかなりの演技派もいて、早口そして最後はゆっくりと締めて終わらせる等オチに至るまでの〝間(ま)“の取り方も絶妙です。
思わず聴き惚れてしまう場面もありました。
その楽しそうな様子から、
☆「読む」「聞く」そして「書く」他に、「演じる」(落語しぐさや〝間”を楽しむ)喜びもまた落語の魅力、醍醐味のひとつであると思い当たった瞬間がありました。
⇒これについて授業終了後の研究協議の場で、他の学年の先生からも「総合学習の時間に何かできるかもしれない」との声があがりました。
また小川哲男氏(昭和女子大学教授)からは、発言発表の場面での「チャレンジする子供たち」という新たな視点・発表の段階を踏みながら、その文章(ことば)表現が成長していく様を観察する…という見かたについても教えていただきました。
☆4年生にとって「〝おもしろい”とは何か?」ということを考えました。
ゲラゲラ笑える〝おもしろさ”、人情味あふれる泣き笑いの〝おもしろさ”、思わずゾッするような怖い噺の中の〝おもしろさ”・・・いろいろなおもしろさがある中で、生徒さんたちは「話のおもしろさを紹介する文」を書くときにまず何を思うのだろう?ふと思いました。
⇒授業終了後の研究協議の場で、押上武文氏(日本学校図書館学会顧問)より、
〝おもしろい”には
◆事柄のおもしろさ
◆展開の面白さ
◆比べるおもしろさ
◆組立てのおもしろさ
があるとのご教示をいただきました。
本を紹介し合うグループワークの場面では、各自の「気に入った本」としてどんなものが選ばれたのか興味を覚えましたので、可能な範囲内で児童の皆さんの席を廻ってみました。
すると、
『落語絵本2 まんじゅうこわい』(川端誠作/1996年クレヨンハウス)、『落語絵本1 ばけものつかい』(川端誠作/1994年クレヨンハウス)、『落語絵本9 そばせい』(川端誠作/2005年クレヨンハウス)の作品を選定した生徒さんが多かったようです。
(※これには先生方によるブックトークの影響も見られたとのこと。)
中でも、
☆『落語絵本2 まんじゅうこわい』(川端誠作/1996年クレヨンハウス)は10名以上もの子どもたちの「気に入ったもの」として選定されていました。
この演目自体の「オチのわかりやすさ」「話の面白さ」について(4年生までの)経験から理解できる生徒さんが多かったのではないでしょうか。
またとても印象的だった点に、
☆「紹介文」を書くように言われた際の〈全体としての速やかな取りくみ〉を挙げておきたいと思います。
低学年の頃から「書く」という行為が習慣づけられていること・「書く」ための前段階としての思考の整理が身についている様子の児童の多さに驚かされました。
☆「話す」「聞く」に留まらず「書く能力」を重視した学習指導こそがこちらの小学校の授業における大きな特徴。
調べ学習を始めとする多くの成果につながっているのではないかと感じました。
そしてやはり(以前の校内視察の際にも感じたことですが)、今回研究授業のテーマのひとつである
☆図書館資料をおおいに活用し、学習効果を高める工夫を行っている点について、改めてその実践を知ることができました。
担当教諭と学校図書館司書との連携が見事でした。
⇒授業終了後の研究協議の場では、松本忠史氏(日本学校図書館学会事務局長)より
(教室学習における図書館資料・図書館司書のはたす役割に触れられた上で)「〈学校司書〉配置への道筋ができつつある」とのお話を伺う事ができました。
他、〈絵本〉に焦点を当てた際に以下の点を記しておきます。
☆落語をテーマとした際、教材としての〈絵本〉の利点⇒場面が絵で描かれているのでお話の状況がわかりやすく、(子どもたちが)登場人物の気持ちに共感しやすい。
★落語をテーマとした際、教材としての〈絵本〉の弱点⇒場面が絵で描かれているので、状況を各々の「想像力」で補って楽しむ落語世界の魅力が半減するおそれがある。古典文芸の魅力を知る入口としての役割を担うにふさわしいか否か?
⇒授業終了後の研究協議の場で、研究授業を担当された難波教諭より
「その点は相当悩んで決断した。しかし教科書にある「じゅげむ」だけで終わらせず、落語の世界そのものに興味を持ってもらうためにも、授業中の教材としてやはり絵本が最も適していると判断」とのご説明をいただきました。
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前回の学校図書館視察、そしてこの度の研究授業~研究協議への参加を通し、羽中田校長先生をはじめとする教職員の皆さまによる熱心な取り組み…教員のみならず地域や保護者ボランティアを巻き込んでの〈学校図書館活用〉、その先に目指すものについて私なりに理解できたような気がいたします。
この実践が他の学校にも広がり、「生涯を通じて形成されることとなる教養・価値観・感性」(※押上武文氏によるレジュメから抜粋)を身につける〝はじめの一歩”としての国語授業が広く行われること、その全体化に期待したいと思います。
また私自身、司書としての仕事を(学校図書館で)10年近くする中で、更に学びスキルアップする必要をひしひしと感じたひとときでもありました。
学ばなければならないことがたくさんあります。
第一日暮里小学校の羽中田校長、白井副校長、難波先生、諸先生方、司書の相澤さん、貴重な機会をありがとうございました。
押上武文先生、小川哲男先生、松本忠史先生、『この本読んで!』編集部の皆さまからもたいへん勉強させていただきました。
今後ともご指導をいただきたく、宜しくお願いします。
貴重な機会をいただきましたことに心より感謝申し上げます。
絵本コーディネーター/学校司書
東條知美