「第十四世マタギ」松橋時幸一代記
甲斐崎圭 筑摩書房


『囲炉裏を囲むマタギたちの口から
軽い溜め息がもれた。
しばし、感慨の空気が漂い、
沈黙のときが流れた。
そんな話がマタギたちの間で
交わされるのは珍しいことである。
マタギの家に育ち、暮らしてきた時幸さえ、
ほとんどきいたことがない。
名人の話が一種の成功談に
入るのかどうかは別として、
手柄話が交わされることは
めったになかった。
たいていの場合は
猟の反省と警告を兼ねての
獲り損じた話や戒めの話であった。
といっても、それは
決して個人攻撃を目的とした
誹謗中傷ではない。
あくまでも、山入りする者としての
注意と心がまえを喚起することを
目的としたものであった。
そんなこともあったから、
特に若い者たちには成功談以上に、
戒めの思いを込めて伝えられた。
それは、何よりもマタギの猟が
共同のものであり、
抜けがけはもちろん、
個人プレイの許されない世界
であることを示している。
今日、マタギ言葉をはじめ、
古くからあった数々の禁忌や風習など、
マタギの世界から消えていくものは多い。
そして、たしかにマタギ仲間でも、
趣味で鉄砲を持つ者もふえたが、
しかし、いったんマタギとして
山入りする時はこの姿勢だけは、
なお厳然と守りぬかれているのである。』





冬のように冷たい雨の一日となった

昨日から一転し

朝から青空が広がって

台風一過

洗濯物を外に出し

強風に転がりそうになりながら

歯科クリニックへ行き

昨日から引き続いて

待ち時間に

「第十四世マタギ」を読み

買い物を済ませて戻ると

また続きを読み

夕食のおでんの下拵えをして

また読み

先週、来月の大切な人との初対面に備え

ちょうど1ヶ月前辺り

(1ヶ月あれば切りたての違和感もなく
切り過ぎても1ヶ月あり
1ヶ月なら伸びすぎることもなく
仕上がりが不満でも直す猶予がある)

ということで

連日雨天悪天の中訪れた

美容室にも読みたくて

「第十四世マタギ」を持参したものの

「マタギ」に反応した美容師さんがあり

読むどころではなくなり

反応したのは

新人の頃から知っていて

20代後半になった

イケメンだけど素朴で素直で

のびのび育った感じの

協調性のあるA君

新人の頃

ふるさと山形の様子を

「けっこう山間の方?」

と、質問したことがあり

『いえ僕のところはそんなでも‥』

という答えだったので

私はすっかり

私の生まれ育った東京都多摩地域辺りと

そう変わらないのだと

思い込んでいましたが

(笑)

『今、私ねマタギに夢中で
マタギの本ばかり読んでるのね‥』

と言うとすかさず

『僕が小学生の頃には確実に
職業がマタギだという人がいて
同級生のお父さんがマタギで
その人が熊の剥製を学校に持ってきて
マタギの仕事の話をしてくれました」

「子供の頃はけっこう熊が出てて
集団下校したり頻繁にしていました」

などなど話が聞けました

\(^ー^)/スゴ~イ

スゴイお話が聞けました

「山間ではない‥」

と、彼は言っていましたが

私の考える「山間」と

A君が考える「山間」には

大きな隔たりがあるのかもしれません

(笑)

山形県のマタギの本も読みました

「ラスト・マタギ志田忠儀」は

山形県の西川町大井沢地区

朝日連峰(磐梯朝日国立公園)

のマタギのお話しで

マタギの志田忠儀さんは

国立公園の整備に尽力し

朝日連峰のブナ林を守った方で

西川町は

A君の家からそう遠くないのです

そしてA君は

「B子さんは秋田県だけど
山形県との県境の山を挟んで近くて
似た感じのところですよ」

(B子さんも新人時代から知っており
秋田県出身の透き通った色白の美人で
明るく素直で気取らない協調性のある子で
素敵な女性となり、現在は産休中)

との情報で

2人とも今はもう担当を持つ

スタイリストなので

私は店長に担当してもらっているので

基本的に2人と関わることは

もう無くなってしまったのですが

たまたま今回は珍しく

手すきでA君が来てくれて

聞いてみたかった

「マタギ」のことが聞けたのでした

(笑)

店長さんに

A君のふるさとの「マタギ」の件を話し

B子さんのふるさとのことを尋ねると

「あ~!なんかB子さんの
お父さんとかお爺さんとかが
休みの日になると鉄砲持って猟に行く
とか言っていたような?
そんな話を聞いた気がするなぁ‥?」

と、また有力情報

グッと来る情報です

(笑)

(40代千葉出身の店長は
マタギという言葉を知らず
前回来店時に私がマタギを説明しました)

(笑)

もう一人は今年の新人君

東京に出てきて3年目

福島県の海沿い出身とのことでしたが

海沿いだけど山もある

と(笑)

「マタギって知ってる?」

聞いてみると

「知ってますよ猟師ですよね」

海沿いとはいえさすが福島県の子

福島県も山間の豪雪地帯には

マタギ集落がありました

そうダム湖に沈んだ

小説「黄金峡」のモデルの

マタギ集落は福島県でした

(笑)

もう



秋田県由利本庄市出身の

B子さんの話が聞きたくてしょうがない

(笑)

秋田県といえば阿仁マタギ発祥の地

マタギ本家

B子さんのお家は

阿仁よりずいぶん南の

由利本庄市

由利本庄市にもマタギ集落があったそうで

自然崇拝や信仰心が強い土地だといいます

B子さんの苗字は珍しく

由利本庄市 B子さん苗字 猟友会

で検索すると

猟友会の同じ苗字の男性が

狩猟で受賞していました

(笑)

お父さんでしょうか

おじいさんでしょうか

親戚でしょうか

(笑)

秋田県の山間集落なんてのは

サルも通わないような峠を踏破し

15キロ歩いてやっと辿り着く

という俗世を離れた別世界

なんてところにあったそうで

(今は道がありますが)

狩猟と川魚による生業

マタギで生活していたといいます

山形A君も秋田B子さんも

「家は山間部ではない」

というのも無理ないですね

(笑)

今、私が読んでいる

「第一四世マタギ」の松橋時幸氏は

マタギ発祥、マタギ本家の地

秋田県阿仁町の比立内集落のマタギです

「山神様は、それはそれは
美しい女神様だども
気がたけだけしい。
夏の間は田畑の神様で
里さ降りでおじゃるが
冬になるど神聖な山さ入られる。
そうすっと、けがれた里のごどは
一切お嫌いになるので
里の言葉は使わんね」

だから、昔のマタギは山に入ると

里言葉は禁止され、仲間にだけ通用する

マタギ言葉を使ったという

阿仁マタギは

山に入るときは山神神社に参拝し

お神酒をあげ豊猟と無事を祈り

お神酒をシカリから順に飲み

シカリの家に帰って酒盛りをし

出発の日は夜明け前に起床

囲炉裏火に塩を入れ

火打石を打って身を清め

村はずれに勢ぞろいし山に入ったという

阿仁には

マタギの里熊牧場や

マタギ資料館があり

全国マタギサミットなども行われ

阿仁マタギの民族文化の

保存伝承に力をいれており

マタギ学校なども行われ

マタギ語り
マタギと行く阿仁の滝歩き
山菜、キノコ採り
阿仁の川歩き
熊の足跡探し

などが行われていて

行きたい気持ち100%越え

(笑)

A君B子さんの共通点は

協調性があるところ

これは地域社会との協調性を求められる

寒くて厳しい冬を

じっと我慢強く耐えて

行かなければならない

東北での暮らしが

関係しているのかな?



東北では

人と人が支えあい生きて来た

困ったことがあれば頼んだり

野菜やお菓子をおすそ分けしたり

道ですれ違うときにあいさつを交わし

そんな関係が普通に存在しているという

そんな東北で育った2人は

2人共、良い意味で

新人時代から印象的でした

店長に

何故、東北の子が多いのか聞くと

「残る子は東北出身ばかり
東北の子は我慢強いのか
この傾向はうちの店だけではなくてね
独立する前の美容室の
グループでもそうだった」



なるほど

私が記憶しているだけで

この店で5~6人

もっといたかもしれない

の新人が

1~2年で辞めている

確かに東北出身者が残ったと言えた