速さを考えるシリーズの前回は、向上を目的とする「速さ」についてしっかり定義する重要性についてお話しました。

今回は、前回登場した「早度」を向上することによるもう一つのメリットをお話します。






早度とは、動き出しの速さという意味です。

早度が向上することによって、最高速度が決して速くない選手であっても勝てる可能性があることに言及しました。






そこで今度は「動き出しが速いというのはどういうことか」という点について考える必要が出てきます。






一つは当然、時間的な速さのことです。

Aという状態からBという状態になるまでの速さのことですね。

具体的には静止状態から動いている(機能的に動ける)状態までの速さです。






今回ここで僕がお話したいのは、もう一つの観点です。

これは特に相手がいる競技で重要になってきます。


相手がいる競技の大半の場面においては最高速度そのものよりも、相手を抜く、かわす、相手より速く飛び出すなどの要素が結果に影響しています。

サッカーのドリブルで相手DFをかわしてゴールを決めるなどが代表的な例ですね。






では、なぜそのように相手を抜いたりかわしたり出来るのでしょうか。

そこに関わる要素はどのようなものがあるのでしょうか。





当然様々な要因がありますが、相手との関係性という観点から考えると、それは「認識力」です。
相手の、こちらの対する認識力にギャップを作ってしまえということです。





つまり、こちらの動きを認識されなければ相手を出し抜ける訳です。

人間は認識できない動きにはついていけません。





JARTAで推奨している立甲(高岡英夫氏提唱)も相手との認識力のギャップを生む要因として関係しています。|志村智久選手、サッカー(GK):JARTAサポート





ごく稀に「消えた」と言われるような評価を受ける選手がいます。

また、「いつのまにか」倒されていたと相手に言わせるような選手もいます。

この「消えた」とか「いつのまにか」と相手に言わせるような動きが鍵になります。






人間は自分が認識できない動きにはついていけないどころか、感覚としても捉えられないことがあるのです。

感覚として捉えられなければ、その相手がどんなに素晴らしい速さや筋力を持っていても、出し抜けます。






こういった有利なギャップはどのようにして作り出せるのでしょうか。

パフォーマンスにおけるこの要因の一つとして考えられるのは「運動様式の違い」です。(他にもありますが、それはまたいずれ)





体幹部をゆるめ、機能的に使えるところを増やすトレーニングも、もちろん相手の認識力にギャップを生み出す戦略に深く関与します。|志村智久選手、サッカー(GK):JARTAサポート




人間は自分と同じ運動様式は、速さでは劣っていてもその動きそのものは認識できます。

つまり「速いな」とはなっても「消えた」「どうなったかわからなかった」とはなりにくいのです。

相当の速さの違いがなければ毎回出し抜けるという訳にはいかなくなったりします。






ですので、要するに相手が採用している運動様式とは異なる運動様式でこちらが動けばよいということです。
この部分の原点は、武道・武術にあります。

具体的なところはまた次回、お話したいと思います。











JARTA

中野 崇