高校生の頃、カラオケボックスが
街にいくつか開設されるようになり、
スナックなど夜の世界でのお楽しみや、
観光バスでのレクリエーションといった
イメージのあったカラオケは、これにより
一般的な娯楽へと変貌しました。

 

私も友人と、放課後に何度か
最新鋭のカラオケボックスに
足を運んだものです。
 

大学に入ると、カラオケに行く機会は
更に増えたのですが、その頃から、
自分の歌声を褒められる事が
増えてきたのです。

元々私は特徴のある声をしていたのですが、

中学の時は歌唱力に活かせなかった

その声も、時を経て武器として

使える術をいつの間にか

身につけていたのでしょうか。

 

中には、カラオケに行こうという話に

なった時に、

「私は歌いたくないけど、袋小路くんの

歌声を聴きたいから(カラオケに)行く」

という女の子もいました。

 

結構おだてられると調子に乗るタイプで、

一時期はバンドのヴォーカルを務め、

ライヴをした事もありました。

 

ただ、思ったより楽しくなかったので、

その一度のライヴだけでやめましたけど。

 

その後、件の女の子(余談ですが、

恋仲ではありません)から、

オーディションを受けてみればと

言われましたが、自分は人よりは

ちょっと歌がうまい程度の人間であり、

とてもプロになれるような

実力ではないと思っていたので、

お断りしました。

 

その後は、高校時代の友人と

飲んだ後の〆にカラオケに行く位で、

歌を歌う事に関してはそれほど

深く関わらずに過ごしてきました。

 

それでも、人前で唄う事は全く抵抗はなく、

自分の歌声を知らない人と

カラオケに行く際には、いつも

「俺の歌声、聴かせてやるぜ」

みたいな気持ちにはなりますね。

 

ただ、歌う事は趣味でもなんでもないという

状況が長く続いていたのは確かです。

 

 

 

2016年の夏、私は仕事でいくつか

失敗を重ね、かなり落ち込んでいました。

 

その失敗した事が常に頭をもたげ、

違う仕事も身が入らないという

悪循環に陥り、こういう状態が

長く続くのであれば、こころの

医療機関の受診も考えてみようかと

思うようにすらなりました。

 

そんな時、職場の女性スタッフに、

「心が参っている時、

どうすればいいと思う?」

と聞いてみました。

 

すると、こんな返事が返ってきました。

 

「一人カラオケなんかどうですか?」

 

後から聞くと、そのスタッフは

一人カラオケはした事ないそうですが、

そんな事で心がスッキリするとも

思えないけどなと感じつつ、

駅の近くのカラオケ店に向かったのでした。

 

 

 

つづく真顔