今日は自分のお気に入りのSF作品をご紹介します。

「火星年代記」レイ・ブラッドベリ   
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火星年代記
レイ・ブラッドベリ
訳 小笠原豊樹
早川書房 世界SF全集 13巻
1981年 第4版

1950年発表の作品なので、70年ほど昔の作品になります。現在はハヤカワ文庫から出てます。

これまで何度も読み直してきましたが・・派手な感動はないんです。
とっても地味な物語なんです。

でも、即効性のあったかさじゃない、身体の芯があったまるようなあったかさが、じんわりじんわりやってくる物語です。

わかりやすくいうと、エアコンのあったかさじゃなくて、ストーブみたいなあったかさみたいな感じの。

・・・・

ブラッドベリとの出会いは、5歳上の当時大学生だった姉が読んでいた文庫本でした。

「10月はたそがれの国」
この文庫本が家の中に落っこってて、なんともいえないファンタジックなカバーに惹かれて読んだのがきっかけでした。

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不思議な手触りのする文章で、そしてまた感情の奥底をさらっていかれるような雰囲気で、夢中になって読みました。

中学生だから、読んでて難しくてわかりにくいところもあったのだけど、とにかく不思議な雰囲気と磁力を持った作品でした。

ここからブラッドベリの作品をたくさん読むようになりました。

さて「火星年代記」のあらすじですが・・

舞台は1999年の未来。

人類は何度も火星に探検隊を送り込むものの、そのたびに火星人の抵抗に遭い、火星征服は失敗に終わっていた。

火星人は人のこころの中に入り込む能力を持っていて、人間には太刀打ちができなかったのである。

そんな火星人も結局は、人間の持ち込んだ細菌によって絶滅してしまうのだが

火星を征服した地球人による火星植民地化が進み、多くの地球人が火星に移住することになった。

そんなころ、地球では大規模な核戦争が勃発し、火星に移住した多くの地球人が故郷である地球に戻ることになる。

・・・

果たして火星と地球の行く末はどうなるのか?

こんな感じの、1999年1月から始まって2026年10月までの27年間に及ぶ火星の歴史を

26編の短編でつなぎあわせた作品がこの火星年代記なのです。

・・・

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この各短編がなかなか読ませるのです。

シニカルなショートショートみたいなものあり、叙情的なファンタジーなものあり、アメリカの作家エドガー・アラン・ポーや「猿の手」へのオマージュ的な作品もあり、とにかく読んでて飽きさせません。

ちなみにあの手塚治虫さんも、この作品が大好きだったようです。

もしかしたら「火の鳥」のストーリー構成のヒントにしたのかもしれません。

ブラッドベリの詩的で柔らかな文章は、天気の良い日になだらかな起伏の山々を眺めているような、登っているような気持ちにさせてくれます。

彼の作品は、そもそもSFSFしていないところが魅力なのですが、派手なメカやアクション的なもの、科学進化的な要素を求めているひとには、物足りないないかもしれません。

でも、長い目で見ると、派手な作品がどんどん陳腐化していくものが多いなか、逆にシンプルなブラッドベリの作品はいつまでもその魅力が色褪せないのではないか。
そんな風に思ったりもします。

物語には、執筆された当時の時代背景をもとに、アメリカへの痛烈な風刺も織り込んでいます。

火星先住民の過去の歴史を全く顧みずもせず、暴力的に侵略し、自国の街の名前をその土地につけていくところなどは、いつかどこかで見た記憶ですし

いまの国際社会の中で起きている様々な紛争も思い起こさせます。

そして読んでいて、なにより一番恐いのは

地球を破壊し、滅亡させてしまうほどの、愚かな人間のこころです。

何度痛い目に遭っても、戦争を繰り返す、愚かな人間のこころです。

「まるでケダモノのような・・」
とは良く使われる言葉ですが、動物は不必要に他の動物を大量に殺すようなことはしません。

意味もなく大量に虐殺したり、略奪したりして、傷つけるのは人間だけです。

そんな悲しい現実に気づかせてくれる物語でもあります。

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SF嫌いな人とストーヴ的な地味な暖かさが好きな方にオススメの一冊。

各国指導者にもぜひ読んでもらいたい一冊。笑

ご興味がありましたら、ぜひどうぞ。