先月27日、灘酒研究会創立100周年記念講演会、祝賀会が開催され、甲子園へ。
灘酒研究会は、灘の日本酒の酒質向上と、
酒蔵同士の親睦を深めるために創立された、酒造技術者集団。
創立時の100年前と言えば、私の曽祖父、曾祖母の時代。
当時第一次世界大戦中で、その後第二次世界大戦、
そして阪神淡路大震災と大変な時代を何度も乗り越え、
脈々と活動を続けてこられてきたと思うと、それだけでも凄いのですが…。
この100周年のお祝いという記念すべき日に、講演でお声がけをいただきまして…。
あまりに大きなお話で、本当に私でいいのですか?!と何度も聞き返してしまいました。
長い歴史あり最高の酒造り技術を持つ方々に向けて、何をお話すればよいのでしょうかと、
何度も相談しながら、お声がけいただいた半年前から講演当日まで、
ずーっと悩み続けていました。
まずは、灘酒をしっかり知った上でないと、何もお話できないと思い、
年末には灘研に所属する大手酒蔵中心に10蔵取材を兼ねて見学に伺ったり、
灘研で取り組んでいる灘の生一本の日本酒9銘柄を、
日本酒にお詳しい方々にお集まり頂き、テイスティングしながら、
頂いた御意見をまとめたり(ご協力くださった皆様、本当に有難うございました)。
リアルな声を聞く機会は皆様意外とないのではと思い、
様々なデータも交え、お伝えしたいことをイメージしながら、時間をかけて準備をしてきました。
記念講演会では、剣菱に長年お勤めの内田恵介氏による灘研のお話、
そして酒類総合研究所理事長の後藤奈美氏の酒米や清酒酵母について、
専門的でテクニカルなお話のあとに、若輩者の私…という順番。
緊張しつつ会場に入ると、灘研のOBの方々はじめ、
醸造機器メーカーの方々など、日本酒専門家の皆様がずらり200名ほどいらっしゃる
空気感に圧倒され、更なる緊張感に押しつぶされそうになりつつ、本番を迎えました。
正直言いますと、これまで知ってるつもりで、灘酒を勝手にイメージし、
地元兵庫のお酒ながら飲む機会も限られていたのですが…。
今回、じっくり向き合う時間をいただけたことで、灘酒の凄さ、深さ、魅力を
存分に知ることができ、各蔵それぞれに光る個性があるにも関わらず、
そこがあまり知られていないことが勿体無い、とも感じました。
講演では、これまで全国200以上の酒蔵を訪れながら、
日々様々な方に日本酒の魅力をお伝えしていく中で肌で感じていること、
これからの灘酒100年に向けて、日本酒業界の未来に向けて、
何か少しでもヒントになればと想いを込めてお話させて頂きました。
終わったあと、反応を伺うのがドキドキでしたが、とても興味深い内容だった、面白かった、
と多くの方がお声がけくださり、ホッと胸をなでおろし。
「本当に日本酒が好きなのが伝わってきたよ」との御意見いただけたのは嬉しかったです。
現状支持されている日本酒の味わいなど、どういう傾向にあるのか、というのも、
データをもとに客観的な視点でお話させていただきましたが、
ご興味持っていただけたようですね。
灘研メンバーでもある造り手の皆様と講演にあたり何度もやり取りさせていただきましたが、それぞれ皆様とても魅力的ですし、大手蔵ももっと造り手のお顔が見えてこれば、
身近に感じられるのでは、とも感じましたよ。
灘酒研究会が出版している「灘の酒用語集」、私も一冊手元にありますが、
まさに日本酒の辞書のように素晴らしく濃い内容でとっても勉強になります。
すでに廃版になっていますが、100周年を迎えるにあたり、英語版を作成されました。
その翻訳をしたのが、玉川酒造の杜氏であるフィリップ・ハーパー氏。
ご自身がこの灘の酒用語集をボロボロになるくらい愛用していることもあり、
翻訳の話が来た時には光栄なことだと、二つ返事でOKされたのだそうです。
灘研のHPに、550ページ以上ある中から抜粋され掲載されているので、
ぜひ多くの方に読んで頂きたいですね。
生まれも育ちも兵庫県の私にとって、
灘酒はおそらくご先祖様も代々愛飲してきたことでしょうし、
今回このような大切な節目に御縁をいただけたことは、とても感慨深く光栄で。
私の一生振り返った時に、あおい有紀10大ニュースの一つになることは
間違いない瞬間でした。
これからの100年、また大きく日本酒の歴史も変わっていくことと思いますが、
日本で造られる日本酒の未来は、生産量を下支えしている大手酒蔵にもかかっている、
ということを改めて認識する機会にもなりました。
祝賀会でも、灘や伏見の酒蔵の皆様、酒造機器メーカーの皆様など、
多くの方々と交流させていただきました。
灘研の皆様、貴重な機会を本当に有難うございました