今回はハンガリーに生まれカナダで活躍したイラストレーター、ラズロ・ガルによる「人魚姫」の絵本をご紹介します。
私がこの絵本を買ったのは20歳頃でしたが、当時の日本の絵本では見かけないような独特な細かな描写と美しい色彩に魅了されました。出版からけっこう長い時が経っても書店で本書を見かけたので、人気が高かったのでしょう。
「人魚姫」
ハンス・クリスチャン・アンデルセン:原作
ラズロ・ガル:絵
マーガレット・マローニー:再話
桂宥子:訳
(ほるぷ出版 1985年8月刊)
表紙もそうですが、絵のまわりの装飾が凝っていて見応えがあります。もちろん挿絵の美しさは言わずもがな。
訳者あとがきによれば、原画のサイズは幅1メートル程もある大きなものだそう。その大きな画面に細かく描きこまれた花火や波しぶきの美しさには目を奪われます。
人魚姫とその家族は自身の娘や妻など身近な人たちをモデルにして描いたということで、リアルな表情は印象的です。
人魚姫のお祖母さんは上品で優しそうですね。
魔女は不気味!蛇か何かがモデル?
海と空の美しい色合いに人魚姫が溶け込むように描かれた最後のシーンは特に胸を打ちます。
物語の世界に存分に浸らせてくれる絵本です。