ミラボオ橋の下をセエヌ河が流れ


   われ等の恋が流れる


  わたしは思ひ出す


悩みのあとには楽しみが来ると






   日も暮れよ鐘も鳴れ


   月日は流れわたしは残る






手と手をつなぎ顔と顔を向け合う


   かうしていると


  われ等の腕の橋の下を


疲れた無窮の時が流れる






   日も暮れよ鐘も鳴れ


   月日は流れわたしは残る






流れる水のやうに恋も死んで逝く


   恋もまた死んで逝く


  いのちばかりが長く


希望ばかりが大きい






   日も暮れよ鐘も鳴れ


   月日は流れわたしは残る






日が去り月が行き


   過ぎた時も


  昔の恋も ふたたびは帰らない


ミラボオ橋の下をセエヌ河が流れる






   日も暮れよ鐘も鳴れ


   月日は流れわたしは残る










          

                   (ギィヨオム・アポリネエル)