光が射す場所 313 | 蒼のエルフの庭

蒼のエルフの庭

気象系グループの青の方への愛を叫んでおります
主に腐小説中心の妄想部屋でございます
ご理解いただける方のみお入りください
(男性の方のご入室はお断りいたします)

すっかり餡の作り方も堂に入ってきた若主人

白いんげん豆での白餡もお手のものになっていた

薄い桜色にするのも成功した

後は上に乗せる求肥

練り上げるのに結構な時間を要するが

コツを掴めば早い

問題はどうやって花びらの型に抜くかだ

青物問屋の若智屋に菓子屋の型抜きなどない

若主人、ここに来て頭を抱え込んだ

 

八刻に来ている若旦那

不完全な菓子が皿に乗っている

出されるのは毎日同じ

いくら智が作ってくれても

少々飽きが来ているが

そこはおくびに出さずに頂く

(味は太鼓判を押せるから問題はない)

 

「櫻餡はほんのり香りがするな ・・・

 これで完成じゃねえのか?」

 

これ以上は菓子屋の仕事のような気がする

 

「求肥を花びらの形にしたいんだが ・・・

 一つ二つなら包丁で細工も出来るが

 百個となると ・・・ 型がいる ・・・

 家はなないからなぁ ・・・ 

 う~ん ・・・ 木型を作ってみるか」

 

「おいおい、お前さん菓子屋になるのか?

 そんなもんを作ってたら絵が完成しないだろう」

 

見た所あまり進んでいないような気もする

 

「ああ、そうだ」

 

若主人が思いだしたように膝を打つ

 

「なんだい?」

 

「絵は仕上げに入るつもりだが

 どうする?」

 

質問の意味がすぐに分からず

ちょっとの間頭の中で考える ・・・

 

「どうするって ・・・ 何がだ?」

 

「今回は茶会もあるだろ?

 だから、お前さんも忙しいと思ってな」

 

そう言われて、意味を理解する若旦那

思いきり怖い顔をする

 

「馬鹿を言うんじゃないよ

 それだと智翔の絵じゃなくなるだろ

 約束を違えるんじゃねぇ

 今日から泊まり込むに決まってるだろう」

 

「良いのかい?」

 

「いいに決まってるだろ

 おとっつあんも了承済みだよ

 夕べだって、いつからだって聞かれたんだから」

 

茶会が近付いているから気にしてくれているようだ

 

「じゃあ、挨拶に行った方が良いのか?」

 

「私が家に戻った時

 頼んで行っただろうが

 その必要はねぇ

 そうとなれば、泊る支度を」

 

「支度なんぞ要らねえだろう

 体一つで十分だよ

 何も持ってくるんじゃねえぞ」

 

「それなら、馴染みの菓子屋で木型を借りて来てやる」

 

「本当か?」

 

「ああ、どんな型だ」

 

「お前が持って帰ってきた

 は~との形をした型だよ

 薔薇の花びらの」

 

「それだと桜には見えねえだろう」

 

「櫻に見えなくて良いんだよ

 笹を開けたら花びらが出て来るって仕掛けだ

 型が見つからなければ

 櫻の型でも良い ・・・

 餡を桜の花形にして求肥で包むのも粋かもしれぬ」

 

此奴、完全に菓子屋になっちまったと

呆れ返る若旦那

 

「お前さんの本業はなんだい?」

 

聞かれた若旦那

キョトンとした顔をして

 

「青物問屋の主だが ・・・」

 

「どう見ても、菓子屋だな ・・・

 何でそこまで入れ込む?」

 

何でも極めたい性分は昔から

分かっててもぼやきたくなる

 

「そりゃ ・・・ 食べさせたいお人が来るからだよ」

 

そう言われてもピンとこない若旦那

あらぬ疑いを抱き始める

 

「食べさせたい?

 どこぞの ・・・」

 

それを聞いて大きく溜息を溢す

 

「はぁ ・・・ お前さんの焼き餅は

 売りには出せないんだよ」

 

「じゃあ誰なんだい?」

 

「お前さんだよ」

 

そう言われても解せない

何故なら試作品が毎度出てくる

 

口を尖らせてプイっと横を向く若旦那

 

「私が信用できねえのか?」

 

低い声で睨まれたから敵わない

 

「私の為なら、別にこれで良いんだが ・・・

 そうだ、明日からお八つを買って来てやるよ」

 

慌てて取り繕ったような笑みを浮かべる

 

「毎度この菓子じゃあ飽きるだろう

 煎餅を用意してあるよ

 それをお食べ」

 

 火鉢の側から菓子器を前に出す

 

「煎餅も用意してくれたのかい?」

 

「味見ばかりですまなかったな」

 

どうもはぐらかされた気もするが

これ以上深く詮索して

機嫌を損ねれば口をきいて貰えなくなる

引き際を心得てる若旦那は笑みを浮かべる

 

 

「翔、この絵の鶴 ・・・

 喜んでもらえるだろうか?」

 

「大野殿と櫻井殿にか?」

 

「ああ ・・・ お二人に ・・・」

 

「お前さんの絵には力がある

 300年先まで飛んで行ってくれるよ」

 

「そうだな ・・・

 落款と名入れは、茶会の日に此処で ・・・

 その後、お前さんの家の床の間に飾っておくれ」

 

それがどんな意味を持ってるのか

まだ思い当たらない若旦那

首を傾げて、その意味を考えている

 

若主人はそんな若旦那を見ながら

 

大野殿に逢ったら

一番に泣きそうな気がするが ・・・

 

お二人が跳んでくるということは 

きっと意味があること

大野殿の心が揺れているような気がする ・・・

 

 

二人のお力になれるように ・・・

それがこの絵かも知れない

 

 

そんな事を考えながら

煎餅を口に放り込む若旦那の嬉しそうな顔を見つめた

 

 

 

 

 

<続きます>