彼女は唇をすぼませ、テーブルを見つめる。僕は待った。



「ひとつお願いがあるの」


突然ベラは僕と視線をあわせた。



 彼女は僕に何を頼む気なんだろう?僕が彼女に教えたくない本当の事を聞きたいんだろうか?―――絶対に彼女に知られたくない真実を。



(ベラはエドワードさっとが身構えたことに気付いた)



「何を頼むかによるな」



「大したことじゃないの」


彼女は約束した。



 僕はまた好奇心をそそられ、待った。



「私のためを思うなら…」


彼女はレモネードのボトルを見つめながらゆっくりと言い、ボトルの丸い口の部分を小さな指でなぞる。


「今度無視するときは、事前に教えてもらえる?こっちも覚悟ができるから」



 彼女はそうして欲しいのか?それに僕に無視されるなんてよくないことだろうに…僕は微笑んだ。



「確かにフェアな気分がするね」


僕は賛同した。



「ありがとう」


彼女は顔を上げて言った。僕を安堵させ声をあげて笑いたくなるほど、彼女の表情はとてもやわらいでいた。



「それじゃ、僕もひとつ答えてもらってもいい?」


僕は希望を抱いてきいてみた。



「ひとつね」


彼女は許してくれた。



「君の仮設をひとつ教えてよ」



彼女の顔がぱっと赤らんだ。


「それはダメよ」



「条件はつけてなかっただろう。君はひとつ答えるって約束した」


僕は主張した。



「自分だって約束を破ったくせに」


ベラも言い返してくる。

「一つだけでいい―――笑わないから」



「ううん、笑うわよ」


彼女は絶対そうだと思っているようだが、僕はそれが面白いことだとは全く考えてもいなかった。



 僕は別のやりかたで説得しようとした。


彼女の瞳を上目づかいで見つめる―――上目づかいなら簡単なことだ―――そしてささやいた。


「頼むからさ」



 彼女はまばたきをして、呆然とした。


 僕はそんなリアクションがくるとは予想してなかった。



「え…何?」


ベラはめまいを起こしているようにみえた。何かマズイ事をしたのか?



でも、僕はまだあきらめないぞ。



「一つだけ仮説を聞かせてよ」


視線は彼女をとらえたまま、優しくおびえさせない声で頼んだ。



 僕の不意打ちを満足感が、ついに功を奏じた。



 「えぇと、あの、放射線を浴びたクモにかまれたとか?」



(ベラは誘導されるがままに答えてしまった)