きまぐれデイズ

きまぐれデイズ

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セルジュとイレーネがラコンブラード学院で再会し、2人がセルジュの仕事先である南イタリアのアルベロベッロのオリーブ農園に移住してもうじき一年が経とうとしていた3月……前年の12月にイレーネの妊娠がわかり、その知らせを受けた事でセルジュとイレーネの結婚式の準備のために数人の友人と共に駆けつけたケイトともうすぐ花嫁に……そして母親になろうとしているイレーネが充てがわれた自宅の庭でハーブティーを飲みながら昔話とセルジュとの再会について話している

 

ケイト「もう6ヶ月か……調子は大丈夫?」

 

イレーネ「うん……今は大分安定期に入って落ち着いてきてるから」

 

ケイト「それにしても……ホント、奇跡だよね……2人して向かうとこがセルジュさんたちの母校でそこで再会して……今ではお腹に赤ちゃんと来るんだから……でもさ、あの時会えなかったらどうするつもりだったんだよ?」

 

イレーネ「うーん……ルノーさんの所で働くか、ケイトのとこに戻るかだった気がするわ」

 

ケイト「(お茶を一口飲みつつ呆れて)随分いい加減だね……まあ、あんたなら働き口はあるだろうけど……もしあんたとセルジュさんが会えなかったら……あたし……あの時あんたが学院に行こうとしてること……セルジュさんに知らせなかったの後悔するとこだったんだよ……なんでセルジュさんに学院に向かってること、あたしにも口止めしたのさ?」

 

イレーネ「(お茶を一口飲んで考え込み)……賭けてみたかったのよ………私はセルジュを散々振り回して彼の人生を滅茶苦茶にしてしまったんだもの……私たちと出会わなければセルジュはピアニストとして成功して……パトリシアさんみたいなステキな人と巡り合って結婚して、いい子爵様になって幸せな人生送れたのに……だから神様に許してもらえるか賭けてみたの」

 

ケイト「神様以上に許してもらいたかったのは……ジルさんに………じゃない?」

 

イレーネ「(寂しげな表情をしつつクスリと笑いカップを置く)……そうかもしれないわね……オーギュスト・ボウは私を娘として大事に育ててくれはしたけど……本来あの人にそうされなければならなかったのは兄さんだもの……(苦笑し)かと言って私はいい娘にはなれなかったけどね……」

 

ケイト「無理もないさ……死神がジルさんやセルジュさんにしたことを思えばそうなるのも……それに死神も……ジルさんに親らしいことしたくても出来なかったから……あんたにそうしてやったことが罪滅ぼしだったんじゃない?でもってあんたはこうして逞しく生き抜いてるんだから育ての両親にも……死神にも……充分恩は返してると思うよ……」

 

イレーネ「……ありがとう……」

 

イレーネの胸にぶら下げている銀色の十字架が太陽の光でキラリと光る、ケイト、十字架が光ったのを見て何かを思い出したかのようにハッとなる

 

ケイト「そういえば……その十字架って……」

 

イレーネ「(弾けるように笑み)これ?学院で再会した時にセルジュがくれたの……元々はご両親の形見で兄さんにあげた筈のものだったけど……(十字架の真ん中の文字を見せて)ほら、ここにセルジュの名前が刻んであるでしょ?エス、ウー、エール、ジェ、ウーって……なんでか兄さんと同室だった17号室で見つけたらしいわ……兄さんが死んだ後、しばらくして兄さんの荷物から探しても見つからなかったし、カールさんたちからもセルジュは十字架のこと、知らされてなかったのに……私たちが再会した日に兄さんたちの思い出の17号室で見つかるなんて……奇跡だと思わない?」

 

ケイト、あることが頭を過り、一瞬ズキリとするも気を取り直して残りのハーブティーを飲み干してカップに置く

 

ケイト「……奇跡……そうだね……(席を立って)あたし、そろそろ行くよ、 明日の結婚式の支度の準備もあるし……」

 

イレーネ「……ごめんなさい……ケイトにもみんなにも色々させちゃって………」

 

ケイト「何言ってんの?元々あんたの妊娠がわかるまでセルジュさんがズルズルしてたからこうなってるんじゃん…お金がないからとかなんとか言ってさ……」

 

イレーネ「(苦笑して)プロポーズはとっくに受けてるし、……式は収入が安定したのを見計らっていずれ挙げるつもりだったのよ…でも実はセルジュのご両親もセルジュが出来たことがきっかけで正式に結婚したらしいわ……」

 

ケイト「(やれやれと思いつつ)……そっか……とりあえず明日のためにも子供のためにも今日は早く休むんだよ」

 

イレーネ「ありがとう……」

 

ケイト、イレーネを家に戻した後、ルノーがあてがってくれた宿に向かう

 

ケイト『(M)ジルさんがこの世から飛び立って11 年…明日いよいよ彼の妹であたしの親友であるイレーネがジルさんの最愛の魂の伴侶だったセルジュさんと結婚する……去年の4月にラコンブラード学院で再会し、今はフランスで有数の彫刻家となったルノーさんの実家のアルベロベッロのオリーブ農園で共に暮らし始めたものの、セルジュさんはカツカツな状態で式を挙げるのを遠慮していた………で、暮らし始めて半年と3か月過ぎた頃にイレーネから妊娠の知らせを受けたことであたしはジョンを含めたチロルの仲間とルノーさんと今年出所してきたボナールのおっさんに協力を仰ぎ、イレーネの体調も気にしつつ結婚式の準備をすることとなった……セルジュさんとしては式は自分達のお金でやりたかったようだが、ジルさんを愛し、イレーネを娘のように可愛がっていたおっさんの親代わりとしてのたっての願いで押し切られる形での式となった……快く思わない所もあるだろうが、無論、資金のほとんどはおっさんが出している……その式の前日に……ジルさんが無くしていたお守りの十字架がセルジュさんの手に戻り、セルジュさんからイレーネに渡された経緯を知り、それを目にするのは不思議な気分だ』

 

ふわりと春の風が吹き抜ける

 

ケイト「ジルさん……あたしあの日のことは誰にも言ってないし、この先も言うつもりはないよ……だってそれが……2人の約束だから……」

 

ケイト、空を見上げつつ、12年前のチロルでのある夜のことに思いを馳せる

 

 

回想シーン

 

12年前の秋……セルジュたちがチロルに越してきて3か月に入ろうとしていたある日、ケイトのベーカリーの煙突掃除を終えたセルジュとジルベールは厨房から離れたキッチンで軽い昼食を食べ終える……が帰ろうとした矢先にジルベールが何かに気づく

 

ジルベール「セルジュ……もうしばらくここでゆっくりしない?」

 

セルジュ「え?……でも」

 

ジルベール「僕、喉乾いちゃってさ……(ケイトの母に)すいません、水2人分ください」

 

ケイトの母「ええ……待っててね」

 

セルジュ「(ぼうっとしつつもなんとか答える)…ありがとうございます」

 

しばらくしてケイトの母が水を持ってきてそれを飲む2人……セルジュが水を飲んで立ちあがろうと同時にジルベールがそれを止める

 

ジルベール「ちょっとたんま」

 

セルジュ「え…?」

 

ジルベール、言うや否やセルジュのおでこに手を当てる

 

ジルベール「やっぱり熱い」

 

セルジュ「だ……大丈夫だよ!」

 

ジルベール「こういう時の君の大丈夫程あてにならないいものはないね」

 

そこに再びケイトの母がやってくる

 

ケイトの母「どうしたの?」

 

ジルベール「セルジュ……熱があるかもしれないんです」

 

ケイトの母「まあ……すぐにお医者様を呼ぶわ!」

 

セルジュ「ご迷惑をかけるわけには……(言いながらも表情はクタリとしている)」

 

ケイトの母「(遮って)困った時はお互い様よ、ジルベール、ゲストルームに案内するからセルジュを運んで貰えるかしら?」

 

ジルベール「はい!」

 

 

ジルベールがセルジュを担ごうとすると同時にケイトがイレーネをつれて帰宅してきた

 

ケイト「ただいま」

 

イレーネ「お邪魔します……(セルジュがグッタリしてるのに気づき)て、セルジュお兄ちゃん、どうしたの⁈」

 

ジルベール「なんでかわかんないけど熱出したんだ……ちょうどいい……ベッドまで運ぶの手伝ってくれ!」

 

イレーネ「ええ!(ケイトの母に)すみません、お世話になります」

 

ケイト「まずはベッドに運ぶのが先だ……部屋にはあたしが案内するから母さんは医者呼んで!」

 

ケイトの母「わかったわ!」

 

ジルベールとイレーネ、セルジュを担ぎ、ケイトの案内でゲストルームに向かう

 

ケイトが部屋のドアを開けると、中は物が少ないが埃一つなく整然としていてベッドには真新しいシーツが敷かれている

 

ジルベール、イレーネ、ケイト、ベッドの上にセルジュを寝かせる

 

ケイト「あ……寝巻きがないや……弟のやつだと小さ過ぎるし……参ったな……」

 

ジルベール、イレーネ「「弟⁉️」」

 

ケイト「あ、言うの忘れてた……実は父さんと母さんの間に生まれた弟がいるんだけど、今、子供のいない叔父夫婦の養子になっててさ……この部屋はあいつがうちに来る時のために使ってるんだ」

 

イレーネ「仲いいの?」

 

ケイト「まあね」

 

ジルベール「セルジュの寝巻き……どうする?」

 

ケイト「隣行ってジョンのとこでジルさんの分も込みで2人分借りてくるよ……あっちの親父さんのやつなら多分大丈夫だ」

 

イレーネ「ありがとう、頼んだわ!それまであたしたちがセルジュお兄ちゃんを看てるから」

 

ジルベール「イレーネ、とりあえず、タオルと水!」

 

イレーネ「わかったわ!」

 

しばらくしてタライに入った冷水とタオルをイレーネが持ってきて、ジルベールがそれを受け取り、冷水につけて絞ったタオルをセルジュのおでこに乗せた後、ジョンの父親の寝巻きを持ってきたケイトがジルベールに寝巻きを渡してジルベールがセルジュにその寝巻きを着せた後に医者が到着してセルジュを診察する

 

イレーネ「医師(せんせい)、兄は大丈夫ですか?」

 

医師「ああ……過労で熱はあるが、今日明日安静にしていれば治るだろう」

 

ジルベール「……良かった!」

 

セルジュが絶対安静となったことでセルジュ、ジルベール、イレーネはケイトの家に泊まることが決まり、イレーネはケイトの部屋で、ジルベールはセルジュのいるゲストルームに泊まることとなり、ゲストルームにはリビングにあるソファーがジルベール用のベッドとしてゲストルームに運び込まれた

 

夕食時、ケイトとイレーネはケイトの母と共にキッチンで食べるが、ジルベールはセルジュのいるゲストルームでセルジュの様子を見ながら食べる

 

ゲストルーム

 

ジルベールが食事を食べ終わったと同時にセルジュが目を覚ます、ジルベールが食べている小さなテーブルが食べ終わった後の皿と水とセルジュへの病人食としてのポム・ピュレ(マッシュポテト)とすりおろしたりんごが置かれている

 

セルジュ「……ん」

 

ジルベール「(気配に気づいて)大丈夫?」

 

セルジュ「……(ハッとして)そういえばさっき……!」

 

ジルベール「倒れたんだよ……でケイトの母さんが呼んだ医者に診て貰ったら過労だって……結核じゃなくてホッとしたけどしばらく休めって事で今夜、ここに泊まらせてもらうことになったんだ……イレーネはケイトの部屋で寝るみたい」

 

セルジュ「……そっか」

 

ジルベール「食事、持ってきたけど食べられそう?」

 

セルジュ「うん……今日は自分で食べるよ……前と違って手は使えるし……」

 

ジルベール「Non、僕が食べさせるよ……心配かけたバツさ……(スプーン突き出して)はい、口開けて……」

 

セルジュ、バツが悪いのか苦笑しつつ、口を開け、ジルベールはポム・ピュレ、次いですりおろしたりんごをセルジュの口に運び……しばらくした後全て食べ終わる

 

ジルベール「(ニヤリとして)次は薬だね」

 

セルジュ「口移しは止めてよ!心臓に悪いから!」

 

ジルベール「(舌打ちをしつつ)ったくキスなんて何度もしてるだろ?」

 

セルジュ「それだけじゃなくて……君に遷したくないから!君まで倒れたら困るんだ‼️」

 

ジルベール「ホント……唐変木くんなのは変わらないんだね」

 

セルジュ「(薬を飲みつつ)なんとでも言ってくれ」

 

ジルベール「ま、それだけの口が叩けるんなら寝れば明日には治るんじゃない?」

 

セルジュ「え……?」

 

ジルベール、セルジュに笑みを向け、おでこにのみ、口づける

 

ジルベール「元気になったらお預けさせた分、覚悟しとけよ!」

 

ジルベール、盆と食器を持って立ち去り、セルジュは薬が効いたのか、次第に眠気が出てくる

 

 

深夜のゲストルーム

 

セルジュがスヤスヤと眠るのに対し、ジルベールはチロルに来てからはほぼ毎日セルジュと肌を合わせて眠ってるので落ち着いて眠りにつけず部屋を出る

 

すると何処からかくるりんごと紅茶の香りに誘われたジルベールはその香りの正体が知りたくなって部屋に戻ってランタンに火を灯し、香りの元を辿ってキッチンにたどり着く

 

辿り着いたキッチンではケイトがティーポットに刻んだりんごの入った紅茶を淹れており、テーブルには彼女が持ってきたであろうランタンが置かれていた

 

 

ジルベール「いい匂いだね……僕にもくれる?」

 

ケイト、ジルベールに気づいてドキッとするも平常心を装いつつ振り向く

 

ケイト「……ああ、よかったらクッキーも食べる?店のあまりだけど」

 

ジルベール「……嬉しいね……」

 

テーブルには2つのランタンが置かれ、ジルベールとケイトが向かい合って座り、クッキーとアップルティーに舌鼓を打つ

 

ケイト「…どう?」

 

ジルベール「売れ残りにしては悪くないね……この紅茶も美味しい」

 

ケイト「死んだ父さんが好きだったんだ……眠れない時とか風邪ひいた時に良く作ってくれた……小さい時、ミルクが苦手だからその代わりにって」

 

ジルベール「そっか……そういえば君は父さんに貰った形見とかはあるの?」

 

ケイト「……ないよ、強いて言えば店と……弟かな?最も今の店も建て替えたやつだけどね」

 

ジルベール「……え⁈」

 

ケイト「去年死んだ父さんが本当の父さんじゃないこと……前に話したの覚えてる?」

 

ジルベール「…ああ」

 

ケイト「実は…火事が起こる日に偶然母さんと叔父さんの話、聞いちゃったんだ……叔父さんは弟を養子にすることを頼みにきて…そこであたしの本当の父親のことも話してた」

 

ジルベール「確か…君の母さんに暴力ふるってお腹にいる君を殺そうとして…君が3つの時に殺人で刑務所に入ったって言ってたね」

 

ケイト「(頷き)それで…ずっと父さんの本当の子だと信じていたからどうしていいかわからなくて帰る気になれなかった……でも父さんも母さんも必死に探してくれて……父さんはあたしを見つけた時、一言も責めないで家まで手を繋いでくれた……その日は父さんの誕生日の前日だったから明日になったら父さんにケーキを焼こうと思って眠りについたよ、謝る代わりに形で示そうって……なのに(拳を握りしめ)あたしたちが寝静まった所に脱獄した生みの父親が窓から侵入して…それに気づいた父さんは母さんにあたしとピーターを連れて逃げるよう指示したんだけど、母さんはあたしを連れ出そうとしたものの、あいつに捕まりそうになってやむなくピーターを連れて隣のジョンの家に逃げたらしい」

 

ジルベール「……そいつの目的は一体何だったの?」

 

ケイト「母さんとやり直してあたしたちを奴隷みたいに働かせるつもりだったらしい……父さんはそいつを気絶させてからあたしを助けにきてくれたけどあたしが目を覚ました時は一面、火の海だった……」

 

ジルベール「放火したの実の親父だろ?」

 

ケイト「(頷く)母さんに絶望を味わせるためにあたしと父さんを殺して自分も死のうとしたんだって………父さんは目を瞑って煙を吸い込まないようにあたしにハンカチを当ててくれて……あたしを抱きかかえて外に出たものの……あたしを母さんに引き渡した後に追いかけてきた生みの父親を止めようとして包丁で刺されて……」

 

ジルベール「……死んじゃったんだね……生みの親父は?」

 

ケイト「(乾いた声で)父さんが命懸けで足止めしてくれたおかげで追いかけてくることは無くなったよ……そいつも父さんと同じ焼死体で発見されたらしい……詳細は母さんとジョンにほとんど聞いたことなんだけどな……村では知らない暴漢が侵入して放火ってことになってて放火したのがあたしの生みの親父ってことは母さんとジョンとジョンの両親しか知らないんだ………であたしたちはジョンのうちで世話になった後に父さんの兄貴にあたる叔父さんに店を建て直してもらって今に至るってわけ……」

 

ジルベール「弟のピーターは店を立て直す交換条件として叔父さんちの養子になったわけか……でもなんで僕に話してくれたんだい?」

 

ケイト「あ……(赤面して)わからないけどジルさんなら話してもいい気がしたんだ…なんていうか引かないで聞いてくれるって思って……」

 

ジルベール「(呆れて)なんで僕が引くのさ?君も君の母さんも何も悪いことしてないじゃんか……(哀しげに遠い目をして)でも羨ましいな…血は繋がってないのに命懸けで愛されて……僕の親はそういう愛情はくれなかったから…」

 

ケイト「確か……ジルさんをほったらかしにして東南アジアに行った上に向こうでイレーネにも酷い仕打ちをしてたってイレーネが言ってた」

 

ジルベール「(苦笑して)それ、半分あってるけど半分違うよ………実は僕とイレーネは生みの父親が違うんだ……(拳を握りしめ)僕の本当の父親は戸籍上の叔父として僕を育てた……オーギュなんだよ」

 

ケイト「…え⁉︎」

 

ジルベール「詳しい事情は知らないけど僕はそいつと母親の不義の子でね…多分イレーネが酷い仕打ち受けたのは僕に似た顔で生まれてきたからだと思うんだ…オーギュは僕を育ててくれたけど……(更に拳を握りしめる)父さんが君にくれたような愛情を一度も与えてくれやしなかったよ‼︎」

 

ケイト「じゃあ…セルジュさんと出逢うまでずっと寂しかったんだね……」

 

ジルベール「(虚をつかれて)…寂しい…か…そうかもしれないな…」

 

ケイト「セルジュさんから……お守りとかはもらった?」

 

ジルベール「(頷き)セルジュの亡くなった両親の形見の十字架を貰ったよ…だけど学院出る時にどっかに落としちまったみたいなんだ…(俯き)逃げることで必死だったからなかなか探す余裕なくてね…少し余裕ができた時に荷物の中を漁ったけど見つからなかった」

 

ケイト「…そのことは…」

 

ジルベール「セルジュにも誰にも言ってない」

 

ケイト「なんであたしには話してくれたんだい?」

 

ジルベール「(意味ありげにフッと笑み)さあね…僕にもわからない……」

 

ケイト「そ…(むくれてみせるも何かを思いつき)ジルさん……目、瞑って」

 

ジルベール「え?」

 

ケイト「(頬を赤らめつつ)口止め料!誰にも言わないつもりなのにわけ教えてくれないのフェアじゃないし!」

 

ジルベール「(吹き出して)何だよそれ?」

 

ケイト「いいから!」

 

ジルベール、クスッと笑い目を瞑る……ケイト、ジルベールの頬にキスを試みるもドキドキして進めない

 

ジルベール「ねえ…いつまでこうしてればいいんだい?そろそろ戻りたいんだけど」

 

ケイト「あ…えっと…」

 

言葉が出てこないケイト、対してジルベールは椅子から立って身を屈めてケイトにいたずらっぽい笑みを浮かべて顔を近づける……胸が高鳴って思わず目を閉じるケイト…ジルベール、そっとケイトの頬に手をやり右の頬に口づける

 

思いがけないジルベールからのキスに心臓が飛び出るような気持ちになるケイト

 

ジルベール「(ニッと笑い)口止め料、これで契約成立だね」

 

ケイト、赤面しつつも頷く

 

ジルベール「安心していいよ、僕も君の親父のこと、セルジュにも誰にも言わないから……それと(ケイトの唇に人差し指を突き出し、再びニッと笑い)キスは友達同士でもするけど、君に大人の真似はまだ早いよ、だからそいつは大事な時までとっときな…(冗談ぽく笑い)なんてこれ、セルジュの受け売りだけど……紅茶とクッキー美味かったよ……メルシイ」

 

ケイト「……メルシイ」

 

ケイト『(M)2人しか知らないあの日のキス…唇ではなく頬で恋人同士のそれとは違ったけどこれはあたしにとっての特別なものだ……だからあたしは十字架については絶対にイレーネにも誰にも話さない』

 

結婚式当日

 

控室

 

ウェディングドレスに着替え終えて手にブーケを携えたイレーネが鏡で自分の姿を確認している

 

ケイト、控室の外からドアを叩き、イレーネを呼ぶ

 

ケイト「イレーネ、支度出来た?」

 

イレーネ「はーい」

 

イレーネ、ドアを開けてウェディングドレス姿をケイトに見せる

 

イレーネ「どう?」

 

ケイト「綺麗だよ……」

 

イレーネ「ありがとう……じゃあ今日はお願いね」

 

式を行う礼拝堂に向かおうとする2人……ふとあることが浮かびイレーネを呼び止める

 

ケイト「イレーネ」

 

イレーネ「なあに?」

 

ケイト「セルジュさんと……幸せになるんだよ……そうすれば多分ジルさんは許すよ」

 

 

イレーネ「ありがとう……!」

 

ケイト、イレーネ、微笑み合い、改めて礼拝堂へと向かう