児童相談所に勤務する夏目アラタは、連続殺人事件の被害者遺児である山下卓斗から「父を殺した犯人に代わりに会って欲しい」という依頼を受ける。

卓斗は未だ発見されていない父親の首の隠し場所を聞き出そうと、アラタの名を騙って犯人の品川真珠と文通しており、直接会って話すことを真珠から求められたためだった。

小中学校で落ちこぼれのいじめられっ子だったという真珠のプロフィールから、エリート公務員ぶればマウントが取れると思っていたアラタだったが、逮捕時の「太ったピエロ」とはまるで別人の華奢な少女のような姿で現れた真珠に驚き、つい地が出てしまう。

アラタが手紙の主では無いと見破った真珠が面会を打ち切るのを何とか止めようと焦ったアラタは「俺と、結婚しよーぜ!!」と口走る。

元々アラタは結婚には何の夢も持っておらず、真珠と本気で結婚する気もまったく無かったのだが、真珠の巧みな駆け引きと真珠の無実を信じる弁護士・宮前の真珠への協力もあって、婚姻届を提出して正式に真珠と夫婦となった。 

1審で黙秘を貫いていた真珠だったが、控訴審では自分につきまとっていたストーカーが真犯人であり、そのストーカーが自分の父親なので庇うために今まで黙っていたのだと主張する。

宮前と違って真珠の無実を信じないアラタだったが、真珠が虐待された子供だったこと、婚姻届を渡された時に心を開いた子供のような笑顔で嬉し泣きした姿を目の当たりにしたことなどから、徐々に心を動かされて真珠に惹かれてゆく。

その一方で、真珠が宮前やアラタの同僚の桃山、被害者遺族である卓斗まで巧みに篭絡していることには気づいており、しおらしかったりはすっぱだったりと様々な顔を使い分ける真珠の本心をつかめずにいる。 

真珠が8歳で施設に保護された時と21歳の逮捕時で30も知能指数が上昇した謎、母親の環が真珠を決して歯医者に行かせず高カロリーな食事で太らせていた理由、1審で真珠が早く起訴されたがった真意、そして事件の真犯人は誰なのか…。

様々な謎が交錯する中、真珠にまつわる重大な秘密が明らかになり、事態は大きく動き出す。

三池崇史監督、柳楽優弥と黒島結菜が主演で映画化。



















結婚に夢は抱いていないが、虐待された子供を救う為に暴力も辞さない夏目アラタと3人バラバラにして殺害したシリアルキラー「品川ピエロ」である品川真珠の事件の真相を聞き出そうとする知能戦が、自分のことを理解して欲しい無条件の愛を欲する品川真珠のしおらしい面やはすっぱな面や相手の内面を見透かしたような発言に翻弄されながらも、事件の真相を探る夏目アラタとアラタの無条件の愛と理解を欲しがる品川真珠の面会室のガラス越しに繰り広げる緻密な知能戦は、さながら気になっている女性の素顔を知る為に相手の発言の奥にあるものを探るラブゲームのようであり、ラブコメディのようである前半部分は緻密な心理戦と徐々に明らかになっていく事件の真相にグイグイ引き込まれていく。

中盤戦からは、品川真珠の過去や真珠と宮前の本当の関係や事件の真相が掘り下げられ、死に取り憑かれた品川真珠の魂と傷ついた心を抱えた夏目アラタの魂の救済と結婚の終着点が丁寧に描かれていて、単なるシリアルキラーのサイコサスペンスだけでなくピュアなラブストーリーに仕上がっている傑作サスペンス漫画。