【7回着たらゴミ箱行き】ファストファッションの凄まじい実情

2/9(日) 19:00配信

クーリエ・ジャポン

 

ファッションのあり方は2000年代に入ると激変し、とてつもない速さで大量の服が消費されるようになった。ここ数年で台頭したZARAやH&Mなどのブランドもすっかり定着し、もはやこれらなしでは何を着れば良いのかわからない、という人もなかにはいるだろう。

そんなファストファッションは環境破壊や労働力の搾取と密接につながっており、いま世界的なキーワードとなっている「サステナブル」からはほど遠い産業だ。海外メディアがその実情を報じている。

刹那的すぎる現代人のファッション

「ファッションは色褪せるが、スタイルは永遠だ」と語ったのはイヴ・サンローランだ。ココ・シャネルは「私が作っているのは流行じゃない。スタイルだ」と言い残している。一方、現代のファストファッションブランドが生産する服が「スタイル」として後世に伝えられることはなさそうだ。

しかし、「化石」となって残り続けるかもしれない。

多くの人が身をもって知っている通り、ファストファッションブランドの服は長持ちしない。そして米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、大量に生産・消費される生地の繊維は、60%以上が化石燃料由来の合成繊維だ。そのため、これらの衣類は埋め立てられても分解されない。

「はるか未来の考古学者たちは、深海や氷河、あるいは埋立地のなかに残った合成マイクロファイバーからZARAの名残を発見するのかもしれない」と同紙は書く。

「カンバセーション」によると、ファッションはもっとも環境を汚染している産業のひとつだという。世界中で排出されている廃水の20%、炭素の10%はこの業界によるものだ。炭素排出量に関しては、このペースだと2050年までに25%まで増加すると予測されている。

今なお続く繊維産業の闇

私たちが何気なく買っている服は環境を破壊するだけでなく、人を傷つけている可能性も大いにある。

ファッションとは「力や声を持たぬ人々の労力に依存することで成り立ってきた産業なのだ」と前出の「ニューヨーク・タイムズ」は主張している。

「世界経済において、繊維産業はもっとも深い闇をたたえている。産業革命期を代表する発明品ともいえる『繊維』は、グローバル化された資本主義システムの発展に不可欠だった。そしてその背後には、長きに渡る搾取の歴史が横たわっている」

繊維が生まれた当時、イギリスの工場では児童労働がはびこっていた。アメリカの工場では奴隷が働かされ、工場火災によって大勢の移民の命が奪われたこともある。

そして現代のロサンゼルスにも、賃金の未払いや労働の搾取に苦しむ移民が大勢いる。ファッション産業において「バングラデシュ人や中国人、ベトナム人が非人道的な労働条件に直面している」と同紙はいう

 

 

この「スピード感」の正体

「これは服だけの問題ではなく、使い捨て社会に関する問題でもあるんです」

米メディア「ヴォックス」にそう語るのは、消費者行動の専門家であるマイケル・ソロモンだ。いわく、ファストファッションの発展には、21世紀に入ってからの「グローバル化」と「物流効率の向上」が関係している。

「企業が物事の処理時間をこれほど短縮できたことはありません。そして人工知能が発展しているいま、さらに効率を上げることができるでしょう」

ファストファッションのビジネスモデルを世界で初めて打ち立てたとされるZARAは、約5週間のサイクルでデザインから小売までをおこなっている。年間にして20以上のコレクションを発表しているという。

人口増加=消費される衣料品も増加?

そんななか、「アメリカ人は現在、1980年に比べて約5倍の衣料品を購入している」と報じているのは米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」だ。2018年時点で、年間ひとりあたり約68着買っていたという。世界では年間およそ800億枚の衣料品が消費されていた。

ちなみにイギリスの慈善団体「Barnado」による2015年の調査の結果、一着の服は平均して7回着用されると捨てられていた。

そしてこの凄まじい消費の勢いが、今後10年でさらに加速する可能性がある。というのも、世界人口は2030年に85億人まで膨れ上がると予想されているのだ。

その結果何が起こるのか。同紙によると、「ひとりあたりのGDPは先進国で年間約2%、発展途上国で4%増加すると予測される。この推定値が正しく、かつ消費習慣が変わらなかった場合、世界で消費される衣料品はさらに63%増えるだろう」という。

重さにして、消費量が年間6200万トンから1億2000万トンに増えることになる。

買い方、捨て方にも自分なりの「スタイル」を

この状況を受けて、前出の「カンバセーション」が「スローなファッション」を提案している。いずれも今から簡単にできることばかりだ。少しでも環境問題を気にしているなら、これからの買い物にぜひ活かしてみてはいかがだろうか。

(1)買う前に考えよう
新しい服を買って環境汚染に貢献する前に、一度立ち止まってみてほしい。すでにあるもので代用できない? 誰かから借りられない? 自分で作ってみるのはどうだろう? あらゆる手段を検討したうえで、新しく買うことは最終的な選択にしてみてほしい。

(2)自分の価値観にあった買い物を楽しもう
モノを買うということは、そのブランドの方針に対する「投票」を意味する。だからこそ、どのブランドで買い物をするのかしっかり考えてみよう。その企業が何に力を入れ、どのような信念を持っているのか──そういったことを少しだけリサーチして意思決定をおこなうことは、あなたのスタイルを作ることにもなる。

(3)使い終わったあとまで責任を持とう
服をどこで買うかを考えるだけでなく、手放す方法もしっかり考えるべきだろう。埋め立て地へ大量に運ばれる合成繊維製の服は、20~200年は地中に留まることになるのだ。そこでたとえば、使い終わった服は寄付したりリサイクルしたり、あるいはリメイクするのも良い。週末に家族や友人と服の交換会をするのも楽しいかもしれない。

COURRiER Japon

 

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200209-00000004-courrier-int&p=2

 

 

 

 

 

====================================

 

「使い捨て文化でしたか?」21世紀最先端のファッション哲学がNYファッションウィークで開花

 
 
安部かすみ
 

2月3日から12日まで開催中の「ニューヨーク・ファッションウィーク」。市内ではさまざまなファッションショーが催され、ファッション関係者やモデルなど世界中のおしゃれピープルが一堂に集まっている。

ニューヨークが今年3月より小売店でのプラスチック製レジ袋を廃止し本格的なサステイナブル都市へ新たな1歩を踏み出すというこの時期、数あるショーの中でもあるブランドによる体験型ショーが注目を集めた。

廃棄ゼロに取り組みながら循環するサステイナブル(持続可能)ファッションを創作する前衛的デザイナー、ダニエル・シルバースタインと、彼のブランド、Zero Waste Daniel(ゼロウェイスト・ダニエル)だ。

 

 

 

 

彼は縫製工場と提携し、不要になった裁断後の生地やスクラップ(捨てられる素材)を利用して洋服づくりに取り組みながら、環境に優しい社会の大切さを謳っている。

関連記事:

昨年春に大阪の阪急うめだで開催したイベントも大盛況だった。

 

ランウェーのないショー

ゼロウェイスト・ダニエルの今回のショーは、マンハッタンのイマーシブ(没入)体験型ミュージアム、Arcadia Earthで行われた。

モデルエージェンシー、Role Models Managementとのタイアップイベントで、会場で演じるのはニューヨークで活躍するハイスペックのモデルたち。

彼らが役者に扮し、深刻な地球温暖化や海洋汚染、ファッションが与える影響について訴えかけ、参加者は館内15のセクションを歩きながら楽しく学べるという試みだった。あるときはファッションのお葬式に参列したり、あるときは紙芝居形式で環境を守る重要性について学んだり。

 

なぜファッションに持続可能が必要とされるのか

ここでなぜ、サステイナブル(持続可能)ファッションが今注目されているのか、考えてみたい。ゼロウェイスト・ダニエルの取り組みとは対局にあるのはファストファッションだ。

90年代後半以降、安くて大量生産されたファストファッション全盛の時代だった。しかしなぜこんなに安い価格が実現できるのか考えてみたことはあるだろうか。まず1つは、生産地の劣悪で公正ではない労働環境が問題になっている。また質が悪くて長持ちしない使い捨て衣類は消費サイクルも早い。高級ブランドとて、値下げ処分をしなければ大量の売れ残りが出る。そのようにして大量の衣類が焼却処分され、環境に与える汚染問題は深刻だ。

それらの問題により、ここ数年でさまざまな企業がサステイナブル(持続可能)ファッションへ取り組み始めた。100%再生可能でリサイクルできる原料への切り替えに取り組んでいる「パタゴニア」、プラスチック製ボトルを洋服に再利用する人気アパレル「エバーレーン」、高級ブランドの買取りで循環システムを作り上げた「マテリアルワールド」など。ゼロウェイスト・ダニエルもそんな流れで、2017年に誕生したのだ。

 

 

 

中には高性能で便利な商品を生み出し、真剣に環境や労働問題に取り組む企業もあるので、ファストファッションを全否定するつもりはない。でも安くて長持ちしない衣料が手元にあるとすれば、それらはどこでどのような人々によりどのような環境とプロセスで大量生産されているか、想像してみるのも悪くない。

多くの人が少し見方や意識を変えてみるだけで、世界は少しだけ良い方向へ舵を切る。ゼロウェイスト・ダニエルのショーは、そのことを楽しみながら教えてくれるものだった。

 
 
 
 
 
 
 
 

 

All images and text (c) Kasumi Abe.