STRATOSPHERE「SL-1」インプレッション
取材・執筆/小原由夫

お世辞抜きで、この10年で出会ったケーブルの中で最も感動したもの


忠実伝送への飽くなき探求を続けるサエクコマースのケーブル。スウェーデンに拠点を置く欧州有数のメーカーSUPRAの輸入代理店でもある同社が、自社ブランド製ケーブルで打ち出すスタンスは、導体の素性をストレートに活かすこと。新製品SL-1の特徴は、最新のPC-Triple C/EX導体の使用と、スーパーストラタム構造の採用だ。

この導体は、5N銀パイプにPC-Triple C銅を挿入し、そのまま鋳造した複合素材。銀メッキとは根本的に異なる構造で、銀の高伝導性能がもたらす可聴帯域外の超高域信号伝送に期待したものである。このメリットが、外周部の絶縁導体の表面積増大に伴うスーパーストラタム構造特有の高周波特性の良好さと相まって、現代のハイレゾ音源ならではの広帯域/高解像度にマッチするのではないかという着想によるコンセプトである。

チャッキング機構を備えたプラグ部は、確実な勘合が可能。ケーブルそのものも決して固過ぎず、取り回しはやりやすい。一聴して驚かされたのは、ローレベルの情報の圧倒的なリニアリティ。微細な音のニュアンス、質感がこれほど明瞭に再現されるケーブルは、かつて経験がない。それに伴ってステレオイメージの空間再現が図抜けている。ダイナミックレンジの拡大と共に、再現できるキャンバスが圧倒的に広いのである。

ヴォーカルの質感は、生々しいという表現を通り越し、怖いと形容したくなるスーパーリアリズム。オーケストラでは分厚い壁が聳え立ち、それが何層も折り重なっているかのよう。使い古された表現だが、聴き慣れた耳タコのコンテンツから新たな気付きが多々あった。

お世辞抜きで、この10年で出会ったケーブルの中で最も感動したものと断言しよう。いい意味でウェルバランスだが、アピールが乏しいと言われてきたサエクのケーブルが、ひとつ突き抜けるどころか、とてつもない次元に達したのだ。

http://www.phileweb.com/interview/article/201704/11/450_3.html



(小原由夫