<野村HD>金融市場の動揺が直撃 欧州・米州でリストラへ

毎日新聞 4月12日(火)20時52分配信
 野村証券を中核とする野村ホールディングス(HD)が12日、欧州・米州地域のリストラに踏み切る方針を発表し、市場に波紋を広げた。永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)の進める海外事業の「選択と集中」の一環だが、新興国の景気減速や原油価格急落を発端とする金融市場の動揺が直撃した格好だ。2008年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を買収し、世界的プレーヤーを目指した野村HDの世界戦略は4度目の大規模リストラを迫られることになった。

 「厳しい環境下でも持続的に利益をあげることができる体制作りを行う」。野村HDは12日夕の発表資料で、欧米の株式関連事業を扱う法人向け業務(ホールセール部門)の立て直しを図る方針を示した。

 08年のリーマン買収後、大規模なリストラはこれで4回目となる。11年度には2回にわたって12億ドル(当時の為替レートで約972億円)、12年度には10億ドル(同785億円)の人件費などを中心としたコスト削減を行った。しかし、海外事業で黒字を確保できたのは金融市況回復の追い風を受けた10年3月期のみ。15年4~12月期も629億円の赤字となり、12年9月に掲げていた「16年3月期に海外事業で500億円の黒字」の目標達成は困難な状況だった。

 野村HDでは欧州事業の相次ぐリストラで旧リーマンの有力幹部が次々と退社。国際金融規制が厳しくなり、世界的に投資銀行業務は収益力が低下するなか、金融市場の混乱が追い打ちをかけた。証券業界では「ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど世界トップクラスとの競争に割り込むことができず、収益力で水をあけられていた」(アナリスト)との指摘が出ている。

 同社関係者は「海外事業の黒字化目標が達成できなかった以上、次の一手を示さないといけない。(世界経済が)暴風雨の中で何もしないわけにはいかない」とこぼす。3回の人員削減後も黒字化できなかった海外事業をどう黒字化するのか、戦略の見直しが問われている。【片平知宏、松倉佑輔】

 ◇野村ホールディングス(HD)の海外戦略

 野村HDは2008年9月、経営破綻した米投資銀行リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を買収。買収関連費用として約1900億円を投じ、投資銀行で世界トップ10入りを目指した。しかし、高給のリーマン社員を抱え込んだことが社内の摩擦を生んだ。また、欧州債務危機を背景に欧州事業の赤字が続き、好調な国内事業の足かせとなった。このため、11~12年度に欧州事業を中心に人員削減などの大規模なリストラを実施。海外事業で「選択と集中」を打ち出し、欧州事業を縮小する一方、米国、アジア事業の強化に注力。昨年12月には米大手資産運用会社に10億ドル(約1100億円)の出資を決め、リーマンの部門買収以来となる大型投資を再開した。
最終更新:4月12日(火)22時28分
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