

産経新聞 2月18日(水)13時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150218-00000511-san-int
「私にだってね、人間性ってものがあるんだよ!」
レジ係の中年の女性は机をたたき立ち去った。モスクワの大型スーパーでの出来事だ。
ロシアのスーパーではレジ作業が遅く、混雑すると数十分待つこともある。そのような中、女性は突然記者に「あなたで終わり」と言った。後の客は別のレジに並び直せという。彼女は作業終了のランプをいつの間にか点灯させていたが、誰も気がつかなかった。
「責任者を出せ」「裁判に訴えるぞ」。憤慨した客が口々に叫んだ。とても自分だけ立ち去ることはできず、「なんとかなりませんか」と聞いたが、彼女はトイレに行きたいという。「戻ってから続ければ」と促したが、客の罵声がひどくなると、前述のようにたんかを切って立ち去った。
ただ同情もした。この店の別の店員は、いつも帰宅が深夜1時で、翌朝6時には家を出ると教えてくれた。責任者らしき人は見当たらず、他の従業員は知らんぷり。トイレに行くのも容易ではなさそうだ。
私が学んだ1990年代半ばのロシアにはスーパーなどなく、ソ連崩壊後の混乱による生活苦から、多くの女性が厳寒の駅前などにずらりと立ち並び、パンや日常品を売っていた。そんな光景は見なくなったが、仕事で悩む女性は今も少なくないという。(黒川信雄)