避難までの道のり③ ~閉ざされた窓と赤いコーン~
4月6日に始業式となり、安全かどうかわからないまま、学校が再開しました。
その2日後の朝、
ご飯を食べていたときに、突然、ドロリと長男が鼻血を出しました。
普段、鼻血を出さない子だったので、とても不安になりました。
耳鼻科にて診察を受けると、医師には
「ただの花粉症ですよ。心配ありませんよ。」
と言われ、安心したものの、内部被ばくの初期症状なのではないのかと半信半疑でした。
この頃、学校でも鼻血や体調不良を訴える子供が多く出ていました。
母親たちは、なぜこんな危険な時に、学校へ行かせるのか、そして、本当に行かせて大丈夫なのか、みな疑問でした。
子供たちに、少しでも被ばくをさせないために、登下校時には、車で送り迎えする親の姿が見えました。
雨の日には、傘をさして迎えにいく母親や、車で、小学校の正門付近が渋滞しました。
専門家の話によれば、車内と車外では、放射線量に大差はなく、遮断できるものではない。
そのことについて、母親たちは、百も承知です。
ただ、歩いて登下校する子供たちを考えると、歩けば土埃がたちます。それに、歩きながら、息を吸う。
そういう動作での内部被ばくを恐れていたのです。
雨が降って、肌につけば、空の放射能が雨と混ざり、濃い放射線を肌に浴びてしまう。
学校でも、雨にはなるべく当たらないように、と指示がありました。
子供たちには、登下校に使用する、朝用のマスクと、帰り用のマスク、それに予備のマスクをいつも持たせました。
学校で、子どもたちが口にする、水道水についても、みな不安は感じており、水筒を持ってきたい、と多くの声が寄せられました。
しかし、学校側の対応は
”学校には、屋上に備えつきの水タンクがあり、汚染されていません。
水筒については、口をつけた水筒の中は、長時間放置すると雑菌が繁殖してしまうため、衛生面からすると良くありません。
どうしても個人で水筒を希望したい場合は、学級担任へその旨を文書で提出し、学校長の許可を受けたもののみとします。”
というお知らせが生徒を通じて、渡されました。
水筒を持つことに対して、こんな文書が来ること自体が奇妙に感じ、担任の先生にきいたところ、
「水筒を許可すれば、当然、水筒を持てる子、持てない子が出てくる。
というのは、
水筒の中身について、品薄である市販のペットボトルの水が手に入った家庭、そうではなかった家庭。そういった、家庭の差が生じ、
すべては平等に教育を受ける、という概念から外れてしまう
と教育委員会から通達が来た」
との説明を受けました。
ナニヲイッテイルンデスカ・・・・
確かに、母親間でも温度差はあって、放射能に対し、気にする人、気にしない人。気にしてるけどあきらめてる人。
でも、子どもを守りたいから起きている事柄なのに・・・
守りたいのに・・・
大人は自分で考えて、行動できるでしょう。
でも子どもたちは、大人が守ってあげなければ、誰が守ってあげれるのでしょう・・・
家庭では母親の目があります
でも、一歩外へでると、例えば学校へ行っている間など、母親が守りきれなくなります
子どもたちが、どんなものを食べ、どんなものを飲んで、体内に吸収するのか
学校での生活は、朝8時から夕方4時まで、平日7時間すごすところです。
その時間、どうやって過ごしているのか、こんなときだから、余計不安でたまらないのです。
そんな気持ちをくみ取ってほしい、と思いました。
PTA総会では、父母たちからたくさん、放射能対策について質問が飛び出しました。
それに答えるのは学校長でした。
除染についても、国や行政があまりに反応と行動が遅く、何もしてもらえないことに対し、
こうしている間にも子どもたちは被ばくしている。父母たちは自分たちで子供を守りたい!大人の自分たちは、被ばくしてもかまわないから、除染させてくれ、とお願いしました。
しかし、校長先生の回答は
「校庭の表土除去については、今のところ、もっとも効果的であるとされていますが、勝手に掘り起こしてもらっては困ります。まず、その削りとった土をどう処分するのか、その方法を国にお伺いをたてないと・・・まず、教育委員会から指示されないと動けないのが実情です。」
これには父母たちは、絶句してしまいました。
目の前に有害物質があって、自分たちで取り除こう!という意思や熱意があるのに、それすら認めてもらえない。
悔しさが残るまま、PTA総会は閉会となりました。
それから、1ヶ月が経過し、教育委員会から回答が寄せられ、
① 除染は教育委員会、福島市で行うこと。(高線量科学物質扱いとなるため、処分方法や扱い方など、規定があり、難しいらしく、一般の人にはできない、とのことでした。)
② 学校5月28~31日の4日間にかけて、実際の表土除去、および校舎内外の除染作業につき、休校。
③ 具体的な表土除去の方法としては、天地替え(表面の土を地中へ埋め、雨などが入り込まないように、ビニールなどで覆い、更に元々地中にあった土を表面へ戻す、という作業)
この様子は、テレビや雑誌、などの様々なメディアでとりあげられました。
休校が再開し、登校時には、こどもたちは、校庭を横切り、校舎へと進みます。
校庭は、ブルーシートで覆われたまま、風と一緒に、ブルーシートがはためいて、土が舞う中、子どもたちはマスクをして通りすぎていきます。
表土除去しても、体育館まわりやプール周りの下水道近くには、まだまだ高線量のところが各所あり、それぞれのところに、立ち入り禁止の文字と赤いコーンが立てられていました。
そのそばを、子どもたちが歩いていくのです。
表土除去後、学校から、各地点の線量が記された校舎敷地内見取り図が配布され、それには、全教室の窓側、中央側、廊下側の座席の空間線量、およびベランダ、犬走りなど掲載されていました。
2階よりも1階のほうが線量が高く、座席によって、線量が異なるので、(やはり窓際が高い)、同じ生徒が被ばくすることのないように、席替えなどは頻繁に行われました。
4月の半ばに入り、蒸し暑くなってきても窓は閉じられたままでした。
(避難までの道のり③ ~閉ざされた窓と赤いコーン~ 完)
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