逐次通訳のポイント その1 | 炎上勘弁

炎上勘弁

とはいうものの、炎上するほど見てもらえるのかな…。
ま、思いつきのネタで、ぼちぼち いきますね。

以前に「同時通訳」の記事の中で「英語を話せる日本人=通訳者、ではない」と書きました。

同時通訳は特殊な能力を必要とするもので、難しさは理解されやすいのですが、「英語ができるんだから、交互に話す逐次通訳であればできるでしょ?」と思われることも少なくないので、英語を聞き取る自信はあっても、通訳を依頼されると不安になる英語中級者の方もみえるのではないでしょうか?

そんな方に、プレゼンテーションの通訳を前提として、私なりのポイントをお伝えしたいと思います。

(会話の通訳はちょっと違って、少し複雑ですが、やり直しがききます。この連載の後に違いを書きたいと思います。)

ポイントは、大きく5つあります。

1. 発表者が通訳を介することに慣れているか確認する
2. 可能な限り、事前に打ち合わせをしておく
3. 特に数字に関しては、間違いがないように確認しておく
4. 発表者の気持ちを十部に汲み取る
5. 間合いと時間を管理する


今日は、最初の項目についてです。

発表者が通訳を介して話すことに慣れているかは、通訳者にとって最大のポイントです。

たとえ日本語であったとしても、マシンガンのように話す人の言った言葉を、正確に繰り返すのは至難の業です。

発表者の話すことをいかに正確に伝えるかが、通訳者の役割です。

しかし、通訳の経験が浅い場合、長い話すべてを頭に入れて、それを正確に訳していくのは無理があります。

発表者が通訳者のことを考えて短く話を区切ることができれば、通訳は格段にやさしくなります。

ただ、ほとんどの場合、発表者が日本語を理解していませんので、台本がない場合は特に「短く区切ってください。」(Can you separate to short sentences?)と言っておくだけも助けになります。

リハーサルができれば一番良いのですが、すべてのプレゼンテーションでリハーサルができるとは限りません。

短く区切ってほしいと依頼したにもかかわらず、発表者がノリノリになってしまって、長々と話し出すようなことになれば、いっそのこと、通訳者が割って入りこむこともひとつの手です。

通訳者が適当な区切りをみつけたとはいえ、発表者の話をさえぎるように通訳を開始することは、本来は好ましくないのですが、通訳しそびれることによって、発表内容がおかしくなってしまうよりは、ずっとマシでしょう。

必要であれば、この点も伝えておきましょう。「通訳のために、割り込んでしまうかもしれないので、ご理解ください。」(Please understand that I may need to interrupt you for the translation.)と。


また、逆のパターンも考えられます。

英語と日本語は語順が逆になっているので、あまり短くされ過ぎても通訳しづらくなる場合があります。

例えば、発表者が「I think…」とだけ言った場合、どうしますか?
その後に何か考えていることが続くはずです。

方法は2つあります。

ひとつは、アイコンタクトで、もう少し話を続けるように促すことです。
通訳の場所が発表者から離れている場合は、ハンドサインを決めておくのもよい方法です。

もうひとつは、これが必要な「ため(間合い)」であると判断した場合は、言い回しを変えることです。

例えばこの場合、「私はこのように考えています。」と訳します。その後に、考えていることをつなげることができます。

別の例をあげてみます。「I found something that I have never seen before.」といった場合です。

全体を訳すと、「私は、今までに見たこともないものを見つけました。」という感じになります。

もし、「I found something」で区切られた場合、「私は何かを見つけました。」とします。
その後、「それは、私が今までに見たこともないものでした。」と続けます。

このような状況に対応するため、日本語の倒置法を臨機応変に使えるようにすることは、ひとつのスキルです。

今回は、英語の中級者向けのお話でしたが、参考になりましたでしょうか?
もし、こんな場合はどうするの?なんて疑問がありましたら、コメントで残していただければと思います。

お読みくださり、ありがとうございました。