私はお会いしたことはない。
と、改めて断る必要もないか。
元上司に、自家用車で官邸に入れる、世界でも滅多にいないような方がいて、私たちはボスとか、サー、あるいは船長と呼んでいた。
3年ほど前になるだろうか。
やはり、元上司の家に招かれた時、20年ぶりくらいにお会いした。
3人の上司との飯会。
皆さん、悠々自適の方ばかりであり、もちろん私は一番の若造。彼らの子どもくらいの塩梅だ。
が、ともかく、極貧の今も、昔の島ちゃんとして見てくださっているのには、感謝感激である。
ボスは、家の引っ越しがその国の第1の新聞、ストレート・タイムズに載るくらいの勇士だった。
その時も、相変わらずの大将であるのが印象的だった。
その方が、夫人の葬儀に出られるのかどうかは知らない。
が、夫人の悲報に接し、ついその方を思い出すと同時に、ひどく寒さが身にしみる秋の夜長に、つい咳き込んでしまったのである。