やっぱり、彼らの胃袋は……。 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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2階の休憩室のようなところに行った。
ここには、ホテル唯一のテレビがあるからだ。

ジュネーブからTGVで30分足らず。
スイスとジュラ山脈をはさんで、ベルガルドという町がある。
人口わずかに1万人強。
日本なら、さしずめ村である。

しかし、この小さな町には、世界各国から要人、有名人が尋ねてくる。

それは、この町にベル・エポックという、ミシュラン三ツ星レストランがあるからだ。

造りが城のようで、壁は淡い桃色。だから、人によってはピンク・ハウスなどとも呼んでいる。

しかし、その名前からくるイメージに反して、堅いこと請け合いだ。
とにかく、ホテル関係者は、フランス語しか話さない。

毅然としたホテルのマダムにいたっては、文と文の間に息を吸い込むような、独特のフランス語を話す。
初めて聞いた時は、喘息か喉に病があるのかと思ったが、それがこの地方のハイクラスの話し方らしいと感じたのは、しばらく経ってからである。




ところで、1階のレストランは三ツ星だが、2階に付属するホテルは一ツ星である。


だから、フランスの田舎宿にしては、珍しく浴槽もある。

が、わずか3チャンネルしか電波が入らないテレビは、部屋には置かれていなかった。


レストランの食事は、確かに旨い。
が、日本人には嬉しさに笑みがこぼれてしまうくらいの料理の値段も、ヨーロッパのサラリーマンには、とても口にできないべらぼうな値段だ。


だから、ヨーロッパ人、特に地中海沿岸の諸国から出張してきた者には、レストランの食事には手が出ない。


だから、ベル・エポックの隣にあるイタリアレストランに出向いてピザを買い、インスタントコーヒーで腹を満たすのである。






2階からは、時折1階からでも聞こえるような、甲高い声がしていた。


イタリア人がテレビの前で、全身で喜怒哀楽を示している。

ワールドカップの中継だった。


時に歓喜し、時にオーッと言いながら頭を抱える。


そうしながらも、ピザをパクついているのだが、このピザがすごい。

日本の出前で有名なピザの、2倍から3倍の厚さだ。
かつ、ウルトララージサイズ。

私もこのピザを食べたことがあるが、1枚平らげるのに1時間近くかかった。

まあ、あちらのレストランはのんびりしているから、普通のスピードかも知れないが。

ちなみに、ここのピザは、私の記憶の中では、一番旨い。
レストラン内に、瀬戸物焼をするような、直径5メートルくらいの粘土造りの窯があり、オーダーごとにピザを窯に入れる。

ふかふか、熱々のピザが運ばれてくる。
窯を扱うじいさんは、いかにも頑固者という感じで好感がもてた。







話が飛んでしまった。


広間でテレビに釘付けになっているイタリア人は、あっという間に、1枚を平らげていた。



獣の唸り声のような叫びをあげながら、2枚目をパクつく。



見ているだけで、お腹がいっぱいになった。




80婆さんにも、誘いの言葉を投げかけるのが礼儀の彼ら。




さすがに、胃袋も違うのだなあ。




そう、感心させられた。