2月1日の記事で、「事務所のあるマンションから出てくると、でかいショーウィンドウが毎度目に飛び込む」なんて話をして、Wikipedia 情報によれば、「UNDERCOVER(アンダーカバー)」は、「高橋盾氏が「1989年に設立したアパレルブランド。株式会社アンダーカバーにより展開する」とある」といった情報を参照しました。おぉ、国産ブランドだったか!と感動したものです。
なお、BLMは海外ブランドも好きです。要は、ブランドの品質管理権限者(マネジメントの主体)と、そのブランドの需要者と、品質を支えている関係事業者の関係が近いものが、いい商品やサービスを創るのではないか、と思うのです。加えて、海外ブランドの価格は、やっぱり何か泡のようなもので、付加価値が必要以上に注入されて膨らんでいるような気がする。それをありがたがって高いお金で購入するのは、まあ、それは個人の楽しみレベルならいいけど、それが度を超えて、人間の階級を上下に分けるような結果になるなら嫌悪感を抱かないではいられん、という訳です。
何を言いたいのかえっと、要は、BLMとしては、ファッションは、人々の多様性を反映した、個性の表現として利用され又は楽しまれるなら、その各ファッションの記号としてのブランドのマーク(商標等)について、それを権利化して、品質管理権限を行使する商標権者の役に立ちたい!と思ったりします。
なんで、こんな話をしているのか、今日も事務所からでてきたら、以下の写真のようなものを見つけたから。「なんか、最近、この椅子のデザイン、ウェブ上でみたな?なんだろう。」『ANARCHY CHAIR」ですって。
2022年2月26日撮影(Photo by BLM)
〈ブランドのイメージの話〉
「UNDERCOVER/JUN TAKAHASHI」のブランドの商標に近い位置で「ANARCHY CHAIR」を表記しているとすると、重要なメッセージ性が感じられます。
自己の商標に、強い情報を持つ記号(文字や図形だけでなく特徴的な椅子の形状も含まれる)を併記する場合、その情報が自己の商標に付着し得るので、その位置関係は、よくよくコントロールする必要があります。
逆に、併記しているということは、この記号(以下の写真で言えば「ANARCHY CHAIR」の文字と、特徴的な丸と「A」の文字を背負う椅子の形状)は、「「UNDERCOVER/JUN TAKAHASHI」のブランドにとって、重要な位置付けなのだろうと認識される訳です。
2022年2月26日撮影(Photo by BLM)
〈商標法実務的な話〉
上記はブランドのイメージの話ですが、商標実務的な話を考えると、洋服屋のショーウィンドウに「ANARCHY CHAIR」と表記して大丈夫?と一応立ち止まって考える訳です。
ちなみに、J-PlatPat で、「ANARCHY」又はこれが含まれる文字を検索すると、以下の登録商標が出てきます(権利者は関係なさそう…。未確認です。)。詳細は「こちら」をご参照。第25類の洋服等を指定しており、存続期間も満了していないので、「おやっ。この権利を侵害しないか大丈夫?」とリスク管理はしておいた方がいい感じではあります。まあ「ANARCHY CHAIR」と一連一体であるという点と、椅子について使用しているので権利範囲外という点と、そもそも出所識別標識として使用していない、、、等いろいろ言えると思いますが。法務部的には嫌でしょうね
(指定商品について以下省略。)
あぁ、こんな話をしようと思ってたわけではないので、戻しましょう。そもそもこの椅子は何でしょう?…ということでウェブを検索。以下のfashionsnapサイトによれば、この椅子は、「天童木工」さんが製造販売するもののようです。同社については「こちら」をご参照。
デザインの仕事や勉強をされている方のみならず、今日では一般生活者においても有名ですかね?柳宗理さんの椅子に関わっていたりするメーカーです。「こちら」に情報あり。
以下の記事を引用させていただくと『デザイナー高橋盾が手掛ける「アンダーカバー(UNDERCOVER)」が、天童木工製の「アナーキーチェア(Anarchy Chair)」を2月26日に発売する。アンダーカバーの青山店、仙台店、金沢店、名古屋店、京都店、公式オンラインストアで取り扱う。』とのことです。おぉ、今日じゃん アンダーカバーさんのホームページには、「こちら」に掲載されています。
で、上記記事では『アナーキーチェアでは背面にアナキズムのシンボルであるサークルAを配置し』とのことですが、あぁ、このブランドに詳しくないBLMとしては、「あぁ”なんだなんだ、アナキーチェアーって」って知りたくなります。
うむ、使用価値を有する商品に付いている記号(ブランドの記号なら、商標って言えるんでしょう。)は、通常は、その使用によって得られる価値(いわば信頼)が蓄積していくと解されるのが商標法的な考え方。でも、この謎の記号が、この商品に付加価値を与えているような気がします。
そして見つけた『カーサ ブルータス』サイト(同雑誌の2022年2月号より)の以下の記事。
こちらの記事によれば、『〈アンダーカバー〉の高橋盾』さんが、『自身がデザインした椅子』のようで、その製作が、『天童木工』さんによるもの、ということのようですね。
記事を引用させていただくと、『高橋盾がデザインし、佐々木一也と共に作り上げた《アナーキーチェア》。これまで〈アンダーカバー〉のアトリエ用やワンオフ(一点物)として作られてきたが、この2月にデザインを一新して一般発売される運びとなった。』とのことです。
〈商標法実務的な話再現〉
うむ、上記fashionsnapサイトの「天童木工製の「アナーキーチェア(Anarchy Chair)」という言い回しは、ちょっと違うような…。
ここで、BLMが法務部的な話が再現(この会社の担当者さんの名称は実際のところ不明。)、「アナーキ-チェア」って、天童木工さんのブランドじゃなくて、「やっぱりうちのブランドじゃん」ってなことで、やっぱりリスク管理に慌てる感じ 「いや、待て、アナーキーチェア、アナーキーチェア、一連で称呼、どころか連呼されてるし、一連一体で、上記登録商標「ANARCHY(アナーキー)」とは非類似だよ、そもそも商品が非類似だし」ってなことで、頭がフル回転し、「まあ、大丈夫かなぁ」てなことになるような(はっは妄想スミマセン。)
〈より視野を広げて、アート的な話〉
毎度即席(スミマセン)のウィキペディア情報によれば、『アナキズムのシンボル』の項目で、『アナキズムのシンボルとして一般に知られているものは黒旗とサークルAである。アナキストは伝統的に政治活動におけるシンボルの重要性に否定的だが、それでもこの2つは彼らの思想の象徴として広く採用されている』とのことです。なるほど、サークルAというのは、もはや一私人に独占させるべき記号ではないようですね。そもそも単純な図形と「A」の構成から成る図形は商標登録に馴染まないし、「アナキズム」というのは、文字列からは「無政府主義」程度の意味であり、それが背負う意味は、歴史的、思想的な深いものがあり、と、考えると、本日のこの椅子は『〈アンダーカバー〉のアトリエ用やワンオフ(一点物)』という、いわばアート作品がありその複製品といった類いのもの(いや、それ以上ではあると思う。)と言えるかもしれません。この椅子を買う人は「椅子」を買う、というより、ブランドの思想の記号を買う、ということなんでしょうかね…。
うぅ難しい。法務部的(またまた登場、妄想の法務部的部員)には、自社が発している価値はなんなのか、社会に受け取られる価値はなんなのか、を見極めて、知的財産法上のリスク管理や価値を維持する活動に貢献しないといけない訳ですね。アートが入ってくると難しいしかも、市場の識別標識(商標)が絡んでくると、さらに意味不明
ってなわけで、やっぱり表参道の面白さ、って、そこにアートがあるから、なんだと思います。
で、今日は、天童木工さんの話はほとんどしませんでしたが、「椅子」という使用用途のある対象って、日本では、極めて、著作権法上の著作物と解されることって難しい。けど、結構、天童木工さんはアートに関わる仕事をしているような気がします。
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