<Illust.:Tin Woodman / William Wallace Denslow>
【子育てを 今一度洗濯したい】
前回「ハンドラ」という概念を説明して 「言葉にする力が対象物をコントロールする力になる」と話した。だから「ハンドラを掴んでね」と。
でも それだけじゃ足りない。・・
たとえハンドルを握ったとしても、運転の仕方を知らず、クルマを操れなきゃ意味がないでしょ。
もし、教習所で 教官が クルマの運転の仕方を知らなかったとしたら?、生徒やクルマ社会はどーなる?・・たぶん事故の絶えない 無茶苦茶な世界になるだろ~。
では もし、子育てで 親が ネガティブな感情の対処の仕方を知らなかったとしたら?、子どもや人間社会はどーなる?・・ソコも さぞかし無茶苦茶な世界になるだろ~。
で、ソコに、定型の人たちは 上手く順応できても、凸凹には 無茶過ぎるので、今回は「感情とは何か?、また、ソレを どーやってコントロールするのか?」について、ブリキなりに考察する。
【旅の仲間たち】
教習所では 実技の前に学科で基礎を学ぶ。ココでも 同様に「感情とは何か?」から学んでいく。
手始めに、バイブルの『ちゃんと泣ける子に育てよう』から引用する。
感情は、身体の中を流れるエネルギーであり、それは意識でコントロールすることができない身体の反応なのです。
んっ?・・そう。実は「感情は意識でコントロールできない。」(←って自爆?!)
結論から言うと、コントロールする対象物は 他にある。また 思考が それを解くカギとなる。
これを整理すると・・
- ①「思考(=脳の働き)」を学ぶ。
- ②「感情(=心の働き)」を学ぶ。
- ③「本当のスキルとは?、コントロールする対象物とは 一体何か?」に辿り着く。
となる。で、これは、・・
- ①「脳」を求める「案山子」と出会う。
- ②「心」を求める「ブリキの木こり」と出会う。
- ③「望みが叶うステキな都」に辿り着く。
と、『オズの魔法使い』(ライマン・フランク・ボーム著)のストーリー展開に似ている。(←偶然?)
【思考とは?】
原作で描かれた案山子は、初めから とても賢い(←本人はそう思ってないけど)。彼は その優れた知恵で何度も仲間たちを救う。・・そんな彼が希求する「思考」とは一体何か?
ブリキの解釈(←AIになぞらえた解釈)では 前回触れた通り、思考は「真似っこ」で、脳は そのための「装置」となる。・・つまり、次のようなモノ?!
「思考」の働きを、この手のオモチャに例えると、
- 1)左手(のスイッチ)を握りながら、「ワンワン」と声を吹き込む。
- 2)再び左手を握ると、「ワンワン」と再生される。
- 3)今度は右手を握りながら、「ニャンニャン」と声を吹き込む。
- 4)再び右手を握ると、「ニャンニャン」と再生される。
となる。・・
(↑なお、AIでは、吹き込む声を「教室信号」と呼ぶ。また、一般に 習熟した真似っこは「習慣・癖・スキル」等と呼ばれる。普段無意識にしゃべったり歩いたりできるのは、この働きのおかげ。)
【思考の弱み】
でも、「思考」には 厄介な欠点がある。・・
試しに、オモチャのレコーダーにイヌを「ニャンニャン」、右を「左」とデタラメに吹き込んだら どーなる?・・
無論 その通り再生するでしょ。
脳も同じで、「思考」は 常に「教師信号が正しい前提」で働く。・・すると、あの無茶苦茶な世界の子らは どーなる?・・
無論 脳としては正しくても、人としてはオカシな言動をしてしまう。いわゆる発達凸凹になる。
(↑なお、不適切な「教師信号」を 心理学では「イラショナル・ビリーフ」と呼び、説法(泥中の花)では「泥」と呼ぶ。また、適切か否かは 絶対的ではなく、TPO(=時と場所)によって変わる。)
【感情とは?】
ここで「感情」の出番となる。・・
原作に登場する ブリキの木こりは、元々ニックという人物だった。が、魔女の呪いで ブリキのカラダになり 心も失ってしまう?!・・そんな彼が求める「感情」とは 一体何か?
ブリキの解釈では「感情」とは、上述の欠点を補うための 「思考の働きを監視する装置」(=セーフティー・ガード)となる。
これをクルマに例えると「計器類」となる。特に「ネガティブな感情」は 異常を知らせる「警告灯・警報(=アラート)」と言える。
(↑「思考」が「感情」を解くカギとなるのはこれが理由。・・クルマやエンジンが何か分からずに、インパネの計器類を理解するのはムリでしょ。)
で、思考に従って行動したとき、結果が(脳の持ち主にとって)良ければポジティブな感情が起き、悪ければネガティブな感情が起きる。
(↑よく「迷ったときは頭で考えず、心で感じろ。」と云われるのはこれが理由。)
また「警告灯」には オン/オフのスイッチが無い。・・なぜなら勝手に消されては困るから。異常原因を解消しない限り、警告灯は消せないでしょ。
(↑意識で感情をコントロールできないのはこれが理由。)
【安全運転という、スキル】
では、どーやってコントロールするのか?
今度は飛行機の機長に成ったつもりで、警報が鳴ったときの対処の仕方を探っていく。次のように・・
「ネガティブな感情が起きた?!」→(原因は?)→「自分の行動パターン(=習慣)に 何か問題がある?!」→(さらに その原因は?)→・・
すると、大抵「養育者の不適切な言動」又は「自己の解釈の未熟さ」、つまり「イラショナル・ビリーフ」に辿り着く。と気づくだろう。
大河原先生の言葉を借りると、『大人がその出来事をどのように意味づけ、どのように語るのかということを通して、子どもは自分についての認識というものを形成していきます』という。
ここに 教官や親の責任がある と言える。
(↑大人が コレを果たさないのが「機能不全」であり、コレを遂行しない限り「負の連鎖」は止まない 仕組みになっている。)
【育児実習】
では、一通り仕組みを知った処で 実技に移る。この知識を 実際の子育てでど~活かすのか?・・
以下に ブリキなりの 例を挙げる。なお、子らは 小学校低学年くらいの想定。
◆その1「親、ブチ切れるの巻」
- 1)仕事で疲れている中、夕飯の後片づけを始める。
- 2)食器を洗う傍で 子どもらの遊ぶ声が 耳に障る##
食器の扱いが雑になり、ガチャガチャと音を立てる。(←☆) - 3)ふと、食卓に放置された 子らの食器が 目に入る###
- 4)「いつも 食器を片付けろッて 言ってんだろ~ッ!」っと怒鳴る。(←☆)
- 5)内心 ≪んっ。自分の中に『怒りの感情』がある?!≫ と気づく。
- 6)さらに・・≪「怒りは二次感情」で「一次感情は期待」だ。 (←※補足)
つまり「期待通りに成ってない」サインだ。
でっ、自分が期待していたコトって何だ?
・・
あぁ~「疲れてて、それを気づかって欲しかった」んだ!
でも自分の行動パターン(=☆印の部分)が未熟(=不適切)だなぁ。≫・・と気づく。 - 7)「ごめんごめん。今日パパは すごく疲れていてシンドイから 協力してほしい。」と 言葉にして伝え直す。(←♪)
- 8)今度は、子どもらも 期待通り協力してくれる。・・やんやーやんやー。
◆その2「子どもたち、ケンカするの巻」
- 子)子どもたちが大声を上げたり叩き合ったりして ケンカを始める。
- 親)「どーした?」と間に割って入る。
- 子)「〇〇が急にブッてきた!」「はっ? そっちが先だろ!」と双方譲らない。
- 親)「ほら。『怒りの感情』って何だっけ?」と尋ねる。
(↑事前に教えてある。大抵入浴のときに。) - 子)「二次感情。」
- 親)「そーだね。じゃ~『一次感情』って何だっけ?」
- 子)「期待。」
- 親)「そーだね。何を期待してたんだ?」
- 子1)「一緒に〇〇して遊びたかった/〇〇を貸してほしかった」など。(←♪)
- 親→子1)「その期待は叩いたら実現スルの?・・
しないね。じゃ~どーすればイイ?」 - 子1→親)「(相手に)口で言う。」
- 親→子1)「そーだね。やってみて。」
- 子1→子2)「かーしーて。」(←♪)
- 親→子2)「貸してほしいってさ。どーする?」
- 子2→子1)「いーいーよ。」・・やんやーやんやー。
(もし、上手く行かなければ、その晩 お風呂で教えればイイ。・・なお♪印の部分で「ネガティブな感情を言葉にする力」を実践している。)
◆その3「子ども、ヤリたくナ~イッ!の巻」
- 子)子どもが「宿題しない」とグズる。
- 親)「さっさとヤっちゃって。」と声を掛ける。
- 子)「や~~だ~!」と駄駄を捏ね一向に宿題を始めない。
- 親)「いい加減にしろッ## さっさとヤれ!!」とブチ切れる。
- 子)「ギャ~~」・・泥沼。
(やり直し)
- 子)子どもが「宿題しない」とグズる。
- 親)「んっ、モヤモヤしてるな。」と声を掛ける。
(↑イヤイヤ感が強い場合、抱っこして落ち着かせる。) - 親)「このモヤモヤは何の感情だっけ?・・なんでイライラしてるんだ?」
(↑事前に教えてある。が、大抵答えられない。←それだけ難しいコトを学ぼうとしている。) - 親)「そのモヤモヤは、○○が宿題をするためにカラダ中から絞り出して集めたエネルギー、つまり『やる気』の感情だね。
〇〇は宿題が大変だって・でもヤらなきゃダメだって・ちゃんと分かってるんだね。
もし本当にヤらなくてイイと思ってたら、そのモヤモヤは表れないよね。
そこまで出来てるって凄くない?」
(↑マジで凄い。脳の働き!) - 親)「で、そのエネルギーは大声を出したり机を叩いたりするのに使うモノ?・・
違うね。さぁ~ヤッちゃおーっ!」
(大抵、ふて腐れつつも宿題を始める。が、姿勢が悪い。←気持ちの表れ。・・) - 親)「背筋を伸ばして!姿勢が悪いと筋肉がエネルギーを使っちゃう。勿体ないよ。」
(↑背筋を触ると、笑顔→真剣モードになる。・・で、最後まで出来たら・・) - 親)「やり遂げたね!〇〇は凄いよ。」と締めくくる。・・やんやーやんやー。
何度か繰り返すうちに、子どもらだけで上手くコントロールできるようになる。(←子どもってスゲ~、人間てスゲ~ッと思う。)
【オーバーザレインボー】
さて、子どもたちが コントロールできるようになった【対象物】とは、一体何か?・・
それは「脳(の働き)」であり、「自分自身」。・・(←操りたいのは「計器類」ではなく、「エンジン」であり、「クルマ」でしょ。)
すなわち、「ヒトの成長とは、自分自身をコントロールする術を学ぶコト」であり、「子育てとは、親子でコレに取り組むコト」だと思う。
一方、現代社会では「ヒトの成長とは、経済や科学の発展」であり、「子育てとは、子どもを叱るコト」だと勘違いしているのでは ないだろーか?
ブリキは、この負の連鎖を止めたくてステキな都を目指している。・・その虹の彼方へ、自らの足で歩んで行けると学んだが、同時に 独りでは辿り着けないコトも学んだ。
だから、ぜひあなたにも虹の彼方を目指す「仲間」になってほしい と願う。・・ってコトで、助けてください。力を貸してください。どうか末永くよろしくお願いいたします。 → ・・<おわり>
【補足:参考書籍】
もっとちゃんと学びたい人におすすめ。怒りの二重構造などが読みやすく紹介されている。
子どもが自分で読めるワークブック。著者らの子どもに伝えようとする姿勢も参考になる。
怒りの他、不安、心配、後悔、妬み等のネガティブな感情の整理術がまとめられている。
オズの世界観がシュールでウィットに富んでて映画とは異なる面白さがあり、大人も楽しめる。