→カモミールベランダのジギタリス
いちにち、駒沢生活実習所のボランティア参加
ここのところのいつもの4人
月1回の元気を確認する日でもあり
とりとめない話題で盛り上がる
ハンドとフットトリートメントが始まる
利枝子さんの
きれいな手だねぇ
なんてすてきなんでしょう
愛されてるねぇ
楽しいねぇ
これ、痛かったねぇ
よくがまんしたねぇ
えらいねぇ
柏もち食べた?
うれしいねぇ
ありがと
小さい声だけど
他の3人の耳に鮮明に届く
言葉で部屋中いっぱいに
利枝子さんは
相手の小さな反応を引き出すように
車椅子に折り重なるように倒れて
いびきが聞こえても
この繰り返しをやめないから
素朴な言葉であふれる
利枝子さんは知らないだろうなぁ
そのリフレインが
私たちに思いがけず理解させる
「あなたの一生はたったひとつのもの」
私たちは、ひたすら目の前の手足をさする