両備バス労働組合のストは、利用者に受け入れられるのか?私的な考察 | 鉄道ジャーナリスト加藤好啓(blackcat)blog

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福祉と公共交通の視点から、鉄道のあり方を熱く語る?
blackcat こと加藤好啓です。
現在の公共交通の問題点などを過去の歴史などと比較しながら提言していきます。
随時更新予定です。

タクシー事業などを営む八晃運輸(岡山市)が、岡山市中心部循環バス「めぐりん」(以下、「めぐりん」と表記)の新規参入を巡って労働組合が雇用を守れないとしてストライキを打って出たのだが、このストライキに関しては会社を援護するようなストライキに見えて仕方が無いと感じるのは私だけであろうか。

 

 

岡山・両備バス労組、一部路線で午後ストへ 黒字路線の新規参入に対抗

 岡山県を中心にバス事業などを展開する両備ホールディングス(両備HD、岡山市)の「両備バス労働組合」は23日、黒字のバス路線へ競合事業者が新規参入することに伴う労働者の賃金減少や雇用不安を解消するよう求め、一部路線で午後1時から1時間のストライキに入る。

https://www.sankei.com/west/news/180423/wst1804230010-n1.html

 

このストライキは、27日にも終日行われるとされているが、交通機関でのストライキを知らない世代が多い中で、こうした行為は一般の人に受け入れられるのだろうか?

 

個人的な見解として書かせていただければ、答えはNOだと思う。

いかにその理由を述べてみたい。

 

今回のストライキは、最終的には赤字になると従業員の雇用を守れなくなるからストライキをすと言っているが、結果的には「めぐりん」の運行許可取り消しを会社と共闘して運動しているようにしか見えないわけです。

また、規制緩和に関しては小泉総理時代に進めていったことであり、国交省はその方針に基づき審査しているに過ぎず、小嶋社長の31路線一斉廃止届けは、それに対する国交省向けのプラフ(まぁ、言わば揺さぶり)と見ていましたので、いずれかの時点で取り下げると私も読んでいました、少なくとも国交省の幹部もその辺は想定していたのでは無いでしょうか。

ただ、そこで組合が路線廃止反対には動かず、このタイミングでストライキを行うとなれば、国交省としても労使がタッグを組んで運行取り消しを求めていると感じるわけです。

 

役所の掟

役所が一番嫌うのは行政の瑕疵を認めることです。

行政の判断が誤っていたと言うことは、行政としては極力認めたくないわけです、まして、規制緩和は小泉総理時代に大々的に進められて現在の政権でもそれが追認されている。【その背景には新自由主義の竹中平蔵がいることが問題だと個人的には思っています】

結局、国交省は政府の方針に基づき、そろえるべき資料が揃っており形式上の問題が無いと判断したので許可を出すと言ったわけです。

その辺りに対して小嶋社長が、手続きの一部に瑕疵があったとして不服申し立てをしましたが、こうした許認可の場合、不服審査を申し立てても、それが覆ることはまず難しいです。

さらに、そうした申し立てをしてくると、行政は瑕疵を認めたくないですから余計に取り消しなどを行いません。

 

それは、行政庁は間違ってはいけないからです。

行政庁は、常に正しい判断をしていると見做されるからです。

もちろん、人間のすることですから間違いが無いとは言えないわけですが、行政庁は一度決定したことを反対意見が多いから撤回しますとは成らないんです。

それは、行政の安定性という観点からも必要なことなんです。

一度許可した、でも反対派の意見があるからやっぱり取り消します・・・では、行政庁の言葉を信じて手続きをしてきたものはたちまち困ってしまいますよね。

だから、行政庁が一度出した答えは、余程強い圧力でも無い限り変更されません。

まぁ、そんな圧力が与野党のいずれかから掛けたら、それこそモリカケ問題の再燃だとか言い出しますから、両備もさすがにしないでしょうが、それくらいのことをしなければそう簡単に行政庁は取り消しを出さないと考えます。

そう考えると、両備としては次の一手として、訴訟しか無いと思うのですがそうなると、時間もかかるし金もかかる。
結果的に、会社自体が疲弊してしまうことになりかねません。

 

国鉄解体の遠因を作ったスト権スト
現時点で考えられることは、「めぐりん」が岡山市中心部と岡山市東区西大寺地区を結ぶ路線(仮称:益野線) を運行することに対して反対と言う声を労使双方で上げても結果は出ないと言うことです。
まして、ストライキをすれば、ストによる利用者が不便を被りますが、結果的にそれは「めぐりん」を利することになりかねません。
これは、国鉄時代のスト権ストとも共通することかと思うのですが、国鉄がストライキをしたら東京都に荷物が入ってこなくなって卸売り物価が上昇して政府も悲鳴を上げるだろうと考えていました。
実際、自衛隊の鉄道連隊に対して、貨物輸送を行うよう指令を出すことも考えていたようですが・・・。
実際には、国鉄がストライキをしていても卸売物価は殆ど変化していない、それは貨物輸送の殆どがトラック輸送で対応できていたことが証明されたからでした。
結果的に政府も開き直り、いつまでもストライキをしていれば良いという態度になりました。
慌てたのは、組合です。
結果的に組合の負けでした、スト権が獲得できると思っていた夢はその時点ではかなく消えてしまったのでした。
その後も、ストばかりを繰り返していた国鉄に対して荷主は厳しい目を向けるようになり貨物輸送は縮小再生産に向かうことに、特に昭和57年では、大幅な減量ダイヤで列車キロ自体が減少すると言う自体となり、昭和59年には、57年・58年を併せただけに列車削減を余儀なくされ、多くの職員が過員となってしまう状況が起こりました。
今回の両備の場合もそうした流れになりかねないと思ってしまうのです。

両備バスがストライキをしたら市民が困るだろう・・・実際に困る人が出てきます。
ただし、そのうちそうすることで元々出かける必要があった人は他の交通機関などを使って目的地に向かいます。
また、どちらでも良かった人は出かけることすら止めてしまいます。
そうして、こうした人たちはストを解除しても再び両備バスを利用するかというと必ずしも、そうとは言い切れないわけです。

両備を使わずに「めぐりん」に流れる場合もあるわけです。

行政は、「行政庁の間違いを認めたくありませんから、瑕疵は無い故に、取り消す必要は無い」と言うでしょう。
本来であれば、付加価値を高める(グループ会社との連携を強化するといった方法も有ったのではないでしょうか?)
結局、両備バス組合が行った、もしくはこれから行おうとするストライキは、会社・組合双方にデメリットはあってもメリットはないと個人的には考えてしまうのです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

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