『I am Brian Wilson』(Kindle版)パートⅡ | Music and others

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遅れて来たブライアン・ウィルスンBrian Wilson)のファンである小生が読み始めた自伝、と云うか、回顧録をもう一度辿っています。 精神的に余裕が出て来た今、興味深いセクションを丁寧に読み解いています。
 
昨年の11月下旬以降、ほぼ2ヶ月あまりに亘りブログは休んでいました。  オフィスの移転プロジェクトに、居住しているマンションの管理組合の理事長職として総会を控えており、この二つに専念したかったのです。 両方共に何とか終わり、新しい環境でリフレッシュしての復活?です。


ImBW-memoir-201610

 
そして、パートⅠをアップしてからずっと放置していた、I am Brian Wilson』の再開です(笑)
 
原書は大体一気に読むか、或いは、精神的に余裕がある時でないと、理解することは難しいですね。
 
原題は『I Am Brian Wilson : The genius behind the Beach Boys』です。
 
全部で10章に分かれており、 
    「Fear」、「Family」、「Foundation」、「Home」、「Fathers snd Sons」
    「Echoes and Voices」、「Sun」、「America」、「Time」、「Today」
と云う構成になっています。
 
一度何となく読み終えてから、もう一度内容と関連性のあるアルバムを聴きながら、幾度となく読み返しております。 お陰で、今までそれほど聴き込んでいなかったアルバム、70年前後のいわゆるブライアン不在時期のアルバムの良さがあらためて心に沁みて来ています。
 
印象深い、そのものズバリのタイトルの第5章、、ここではファンの方ならご存知の様に、ウィルスン三兄弟を支配し虐待していたと言われる父親、マレー・ウィルスン氏への怨み、つらみが綴られています。 母親であるナンシーやカール、デニスに対する親愛の情とは真逆の存在として表現されています。 
それと対比するかの様に、従兄弟のマイク・ラヴの事も引き合いに出されています。
 
私が熱心ではないブライアン・ファンとして興味があったのは、愛憎渦めくマイク・ラヴに対する感情と、永遠に封印された『スマイル』の断片についての真実の2点でした。
 
 
ただ、こんなにも内面の心情を吐露されると、ブライアンも弱さを見せる人間であることを知りました。
ブライアン・ファンの方にバッシングを浴びるかもしれませんが、少しばかり、自身を正当化し過ぎている様に感じる部分があちらこちらに垣間見えます。 と言うのも、都合の悪いこと、触れられたくない事は極端なまでに伏せられているように思います。
 
ここ数年間にに読み終えた偉大なミュージシャンの自伝、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、キース・リチャーズ(Keith Ricahrds)、ニール・ヤング(Neil Young)のどれとも違う世界観がありますが。 
 
もう少し赤裸々なことも明かして欲しいと思うのですが、無理なんでしょうね。音楽制作の場での新たな発見を期待して読むとかなりがっかりしてしまいます。 
 
 
第6章、「Echoes and Voices」では、あの『ペット・サウンズ』のレコーディングのことが少しだけ描かれています。
 
読み返して印象に残ったことを記したいと思います。
ブライアンがもっとも引用したミュージシャンは、同じく天才と呼ばれたフィル・スペクター(Phil Spector)その人です。 各章にて再三に亘り彼の名前が出て来ました。 個人的には、彼の作品だったり、その功績には疎いので余りピンとは来ませんでした。 繰り返しその名前が出て来ます。
 
後半の章では、割と時系列的に展開して行き、リリースされたソロアルバムの話も断片的に登場します。
 
 
各章の冒頭には、楽曲の歌詞が綴られていますが、ここでは”Just Wasn’t Made for These Times”の冒頭の一部が掲載されています。
    
      They say I got brains
        But they ain't doing me no good
        I wish they could
        Each time things start to happen again
        I think I got something good goin' for myself
        But what goes wrong
 
とても繊細な歌詞であり、当時の創作活動の中で次第に大きくなりつつある、ビーチボーイズやレコードレーベルとの距離感を表現している内容ですね。      
 
ブライアンが復活の手がかりと自信を持った、”Brian Wilson Presents Pet Sounds Live“の話も出て来ます。
 
また、2002年にバッキンガム宮殿の裏庭で開催された”エリザベス女王戴冠50周年記念コンサート”に、アメリカ人のミュージシャンとしてはトニー・ベネットと共に招待されたことを非常に誇りに思っていたようである。リハーサル時にエリック・クラプトンがステージに登場し、彼のファイヴァリットであると言う”The Warmth of the Sun“をデュエットし、エリックがギター・ソロを織り込んだと言う逸話が語られていた(考えられない組み合わせだけに、観てみたい瞬間ではある!)。
 
ご存じのように、ビーチ・ボーイズ・ソングスの中で、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)のファイヴァリットは、”God Only Knows”です。
コンサート当日のエンディングでは、ビートルズの”All You Needs Is Love”をジョー・コッカー(Joe Cocker)、ロッド・ステュワート(Rod Stewart)、エリック・クラプトンらを従えて、ポールと同じフロント・ステージで歌った事が非常に印象的だったようですね。
 
Pet Sounds』のサウンドがいつ産まれたのか振り返ると、それは初めてラジオけら流れる”Be My Baby”を聴いた時かもしれないと思うと語っています。 また、ディオンヌ・ワーウィック(Dionne Warwick)やアリーサ・フランクリン(Aretha Franklin)らのソウル・シンガーのヴォーカルの表現力に触発されたのかも知れないと述懐しています。
 
そして、暗黒の時代に入るキッカケとなったキャピトル・レコーズとの確執について触れられています。
        「I don’t have more music fast. I was exploring.
と、言うシンプルな表現が全てを物語っていますね。
 
同時代1965年にリリースされた、『Beach Boys' Party』 と 『Rubber Soul』 とのギャップからいよいよ探求の道に進むことを宣言しています。ここからは、もう『Pet Sounds』の優れた楽曲の数々についての言及が止まらなくなります。皆さんは、どの曲がフェィヴァリットでしょうか?
 
私は、やはり“God Only Knows”ですね。ブライアンがカールに伝えたアドヴァイスはたった一言、「Sing straight」ですが、ファースト・テイクでは8人もののヴォーカルをレイヤーリングした分厚いコーラスに覆われた曲だったそうです。
 
ブライアンの思い入れがより強いのは、やはりほとんどワンマン・レコーディングとなった“Caroline , No”のようです。
 
そして、異次元の世界に向かう、あの『SMiLE Sessions』の話が断片的に語られます、勿論本質的な部分は触れられていません。
あの有名な“Sandbox”で産まれた楽曲、そして、到底マイク・ラヴには理解されない歌詞だと断言はしています。 
 
ヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)とのコラボレーション、”Heroes and Vetellans”は最高傑作だと信じていると。
 
ただ、予想通りで、思い出したくないのか、或いは、思い出せないのか、頭の中を駆け巡る声(様々な声)と共に封印された多くの真実は闇の中にとどまっています。
 
それから、過度のアルコール、様々なドラッグ、ジャンク・フードによって体重は最大270ポンドにも増量したわけです。 この暗黒の時代に、時折現世に飛来してアルバム制作に参加したりもしています。
 
ご存知の様に、『SMiLE が封印された後、67年からの数年間は例のローファイなアルバムがリリースされ、その中に”SMiLE”のセッションの音源の一部が使われると言う事になります。
 
そして、67年の『Smily Smile』から『Wild Honey』、68年の『Friends』と続いて行く訳ですが、さらっと流して殆ど言及していません。 よく知られているように、『Smily Smile』 に対する想いはたった一言、”Bullshit !! ”だと・・・・・。私自身にとっても、殆どスルーしているアルバムと言えます
 
 
 本人の弁に寄れば、77年リリースの『Love You』はその時代に作られたアルバムの中では最良の部類に入ると…。 ファンの方はご存知ですが、ブライアンが全面的に参加したアルバムであり、作曲と演奏にそれなりの才能を注ぎ込んでいます!? 
 
ただ、本人がいみじくも語っているように、大半がただのパーティソングです。また、当時夢中になっていたアナログ・シンセサイザーの ARPMoog で作り上げたベース・サウンドを、amazing bass soundと述べて楽曲自体を引っ張って行く核になっていると云う、ちょっと自画自讃が過ぎるところもあります。
 
 
Brian Wilson Presents Pet Sounds Live “によって徐々に自信が戻って来たようで、オムニバス・アルバムの Gettin’Over My Head』 のレコーディングを経て『SMiLE』再演の道筋が見えて来ます。 ロンドンでのエリック御大とのレコーディングにおいても、そのギター・ソロにダメ出しをするなど、少しずつ自信を取り戻して行く様が述べられています。
 
 
     How Could We Still Be Dancing.     with Elton John
     City Blues.                 with Eric Clapton
     A Friend Like You.            with Paul McCartney
 
ライバルでもあり尊敬しているポール・マッカートニーとの共演では、彼のヴォーカルがフラットしていたと半分言いたい放題な面もあります(笑)。
 
そして、最も気に掛けていた末弟の今は亡きカールの最期のレコーディングとなった“Soul Searchin’“の最もフィットする、居場所が見つかったと述べています(涙)。
 
 
続いて、あの封印された『SMiLE』の再構築の経緯が少し触れられて行きます。ご存知の様に、 ダリアン・サハナジャ( Darian Sahanaja が残されていたSMiLE Sessions のレコーディングの全トラックの断片を全てコンピュータに取り込み、ブライアンと共に聴きながら再構築して行ったのです。
    原文でも、
       “Slowly with the band, with Van Dyke’s help.  We started to rebuild SMiLE.  We didn’t use all the pieces
と表現されている通りですね。
 
しかしながら、触れられているのは僅かに3ページ半足らずです。
この章を丸々使い切る位のエピソードを期待したけれど、それはすでに公開されたムーヴィー、『Beautiful Dreamer』を観れば良いのかとも思いました。
 
2004年に行われ成功裏に終わった“SMiLE”ツアーが、これからの創造性の爆発の端緒だと断定しています。
    The Start of a creative explosion

不思議な感覚ですが、この回顧録を繰り返し読んでいるといつでも何かエナジーを貰えるのです・・・・。

 
◆ The Warmth of the Sun - Brian Wilson/Eric Clapton;