ブライアン・ウィルソン『Gettin' in Over My Head』 | Music and others

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このアルバムは、決して評価は高くありません。 どちらかと言えば、ファンからは無視されがちな作品と言えます。但し、あの悪夢とも言えるアルバム、『Sweet Insanity』(Insanity ; 精神異常、精神病)に区切りを付ける必要があったのだと個人的には強く思いました。時期も2004年6月と云う微妙なタイミングでした。


私がこのアルバムを即買いしたのは、亡きカール・ウィルソンがリードヴォーカルを取る"ソウル・サーチン"(Soul Searchin')が収録されているからです。96年にビーチ・ボーイズのアルバム用にレコーディングされているのですが、案の錠オクラ入りにされたままになっていました。


このアルバムは、1回のみの契約だったのか不明ですが、音楽に対する"愛"を感じさせるライノ・レコーズ(Rhino Records)からのリリースです。但し、本当の意味での新作は僅かに3曲のみで、過去に作られたものの様々な理由で発表されなかった楽曲が大半となっています。


極め付けは、90~91年にかけてレコーディングされたものの、契約先のサイアー・レーベルとの間ですったもんだがあり、結局"オクラ入り"となった『Sweet Insanity』からの曲が5曲もあることです。ブートレグで出回っていた音源が、正式にリリースされた意味はあるのでしょうが、世界中のブライアン信者はとうの昔に入手していた筈です。


そして、このアルバムの最も不運な点は、僅か3ヶ月後にあの『Brian Wilson presents "Smile"』がリリースされたことでしょうね。 何を隠そう、私もこのアルバムは、買ったまま放置していたと言えます。ヴァラエティに富んでいるのですが、散漫な印象を受けてしまいがちです。また、同年の2月には、すでにロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホール(Royal Festival Hall)にて、あの『スマイル』の初演コンサートが行われていましたから。


聴いていたのは、"Soul Searchin'" と5曲目のらしくないギター・ソロをアッサリとクラプトン(Eric Clapton)が弾いている"City Blues'" だけだったような記憶があります。このアルバムだけは、"クラプトン買い"しておりませんでした。



◇ **** Track listing ****

1."How Could We Still Be Dancin'?" (Brian Wilson, Joe Thomas)
   Featuring Elton John on lead vocals

2."Soul Searchin'" (Brian Wilson, Andy Paley)
   Recorded by The Beach Boys in 1996, but discarded. This version features Carl Wilson on lead vocals
3."You've Touched Me" (Brian Wilson, Steve Kalinich)
4."Gettin' in Over My Head" (Brian Wilson, Andy Paley)
5."City Blues" (Brian Wilson, Scott Bennett)
   Features Eric Clapton on electric guitar

6."Desert Drive" (Brian Wilson, Andy Paley)
7."A Friend Like You" (Brian Wilson, Steve Kalinich)
   Features Paul McCartney on co-lead vocal

8."Make a Wish" (Brian Wilson)
9."Rainbow Eyes" (Brian Wilson)
10."Saturday Morning In The City" (Brian Wilson, Andy Paley)
11."Fairy Tale" (Brian Wilson, David Foster)
12."Don't Let Her Know She's an Angel" (Brian Wilson)
13."The Waltz" (Brian Wilson, Van Dyke Parks)

*)Remarks;
  Tracks 8, 9, 11, 12 and 13 originally recorded for the scrapped Sweet Insanity album in 1990/1991.





◇ "How Could We Still Be Dancin'?" Featuring Elton John on lead vocals;
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何処に行っても存在感たっぷりなエルトン・ジョン(Elton John)の登場です。 ホンキートンクなピアノに即座に分かるヴォーカル、かつての"土曜日は僕の生きがい"("Saturday Night's Alright for Fighting" )程の若々しさはありませんが、イケてると思います。
イントロでの多重コーラスは本当に素晴らしく、ブライアンの声も若々しさが戻り素晴らしい幕開けだと思います。








◆ "Soul Searchin'" features Carl Wilsonon lead vocals;
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お蔵入りとなっていたカール渾身?の曲、そのヴォーカル・トラックだけを取り出し、新たなバッキング・トラックを付け加えて再生したのがこの"Soul Searching"です。
明らかな反則技ですが、「何も言わずに聴け!」と言いたい楽曲です、少なくとも私には・・・・。やはり、カールのハイトーン・ヴォイスがなくては成り立たない曲ですね。 この曲、先にキング・オヴ・ソウル(King Of Rock'n' Soul)こと、ソロモン・バーク(Solomon Burke)に提供されて陽の目を見ました。 私のブログ(ここ↓)でも取り上げましたが、シンプルですがいいメロディーです。









◆ "City Blues" Features Eric Clapton on electric guitar;
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何も注釈を付けなければ、さして目立つような類のフレージングもなく、手グセ満載と言うほどのギターソロではありません。かなり、やっつけ仕事的な感じが漂いますネ、残念ながら。





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誕生日が僅かに2日しか離れていない偉大なアーティスト、ポール・マッカートニー(Sir Paul McCartney)とブライアン、この二人が同じ曲の中でデュエットするだけで、途轍もないマジックが産まれたのか? 残念ながら、そんなコトは起きていないようです。(笑)これが生で見れるのであれば、何も言うコトありませんけどね。 1967年に二人は初めて出会い、お互いに尊敬し合い、ようやくここに共演出来たわけです。


 
◇ "A Friend Like You" Features Paul McCartney on co-lead vocal;







最後に、そのいわく付きの『Sweet Insanity』 に収録されていた、かつてのビーチ・ボーイズの曲のリメイク版を聴いてみてください。受け止め方は様々ですけど・・・・・。
精神科医、ユージン・ランディ氏(Eugene Landy)の影響下にあり、完全に人格をコントロールされたいたと言われていました。 所謂”操り人形”のようになっていたとか、向精神薬の過度の服用により病状がさらに悪化していたとも・・・・・・。


◆ ”Don't Let Her Know (She's An Angel)” from 『Sweet Insanity』;







98年リリースの『Just Imagination』リリース以降(ブログではこちら↓↓)、完全復活に向けて始動して行ったブライアン・ウィルスン、"Pet Sounds"ツアー、あの幻のアルバムを記憶を辿りながら再解釈した『SMILE』、そして『SMILE』ワールドツアー、我々ファンにとっては至福の時が訪れたのです。

失われた時間は簡単に取り戻すことは難しいけれど、ブライアンは確実に歩き始めたのです。天才と狂気とは裏表なのかもしれません。 このアルバムを、「書き下ろしの新曲でのアルバムを切望していた」メディアへの痛烈な回答とは思いたくはありません。

また、ソロとして来日し集大成とも言えるライヴを観たいです。 今年はポールが来るんですから、是非!