1人の悪意は99人の善意を砕くという。
それほどまでに悪意──負の感情は強く、醜悪な力を持っている。
人は己の負の感情ですらコントロール出来ないのに、あらゆる人の負の感情を集めて使いこなそうとした者がいた。
その結果、アレが生まれてしまった。
「そうそう!フォーゴットン・ホロウの洞穴の中にあるやつ……遥か昔、生贄として洞穴の中に閉じ込められた女がその魔石のせいで、ヴァンパイアになったんだって〜!」
「そうなんだ〜!てか最近ヴァンパイアがフツーにシムの町で暮らしてるよね。ちょっと前まではヴァンパイアなんて おとぎ話だと思ってたのに実在してて、しかもシムと共存したいとか言い出すなんてリアルって小説より奇だよね〜」
「うんうん……てかヴァンパイアが闇の魔石の力で誕生したんなら、他のオカルトシムもどこからどうやって誕生したんだろうね?」
「そもそも、その闇の魔石って何なんだろ?どこから出てきたんだろうね…………ねえねえ、アリスちゃんはどう思う?」
「アリスちゃん?」
「また寝とるがなー!!」
「アリステラ、床で寝るなんて はしたないよ!起きて起きて!」
「おはよ〜じゃないよ!さっきまで本読んでたのに急に寝ててビックリするわ!」
アリステラ「ごめんねぇ、文字をずっと眺めてたら……ボンヤリして、眠くなっちゃったんだぁ」
「ほんとマイペースだねぇ」
「うるさ!」
「まーた、ミッチがバカなことやってるよぉ」
アリステラ「あらあら……ミッチちゃんったら……」
教師「こらー、トニトルス!!勝手に校内放送でやかましい歌を流すんじゃない!」
ミッチ「ゲッ、もう先公が来た!でも……ここでやめるなんてロックじゃないよな!うおおぉ、この勢い止められねえ!!」
「先生に放送切られたね」
「止められてて草」
アリステラ「ミッチちゃんったら、今日も元気だわぁ。よいしょ……」
「アリスちゃん、帰るの?」
アリステラ「うん……今日はミッチちゃん、ライトちゃんと帰るんだぁ」
「またねー、バイバイ!」
アリステラ「……明日……」
「そう言わずに頼むよー!お前なら頭良いし、お前が入るだけでウチのチームのレベル、グンと上がるんだよ!」
ライト「私1人 入部するだけでレベルが大きく上がる?つまり、他のメンバーも たかが知れてる低レベルなチームということですね。なおのこと お断りします」
「なんでだよ!」
ライト「はぁ……ハッキリ言わないとわかりませんか?」
ライト「私、バカや無能が嫌いなんです。バカしかいないチームに入ったら、私にもバカが移るじゃないですか。低レベルな部活動に付き合ってる暇も私にはありませんので……失礼します」
アリステラ「ライトちゃん……チクチク言葉は使っちゃダメって言ってるでしょ」
ライト「ハッキリ言わないと理解できないバカだから仕方ないでしょう。ほら、ウチのバカも拾って行きますよ」
アリステラ「もう……」
ライト「勝手に校内放送使ってノイズ音を響き渡らせたら叱られるに決まってるでしょう」
アリステラ「そうだったんだ。うんうん、確かに新しい何かをひらめいたら皆に共有したくなっちゃうもんねぇ」
ライト「はぁ……バカですね……」
ミッチ「…………」
アリステラ「…………」
ミッチ「……おう」
アリステラ「……ごめんねミッチちゃん……もう……戦う力、残ってないよ……」
ライト「……同じく、です……」
ミッチ「……そう、か…………じゃあ……また、駄目だったな……」
ライト「……死ぬという言葉は、適切ではありません……私達は、人じゃなくて……“物”なんですから……」
ドライブ「……?」
?「すみません……今は急いでるんです、自己紹介はまた後日……貴方にこれを託しに来ました」
ドライブ「大切なものを見ず知らずの私に預けるのか?貴様は何者だ、何を企んでいる」
?「……今は何も言えません、とにかくお願いします!」
ドライブ「ああ……」
ドライブ「……ちょっとな」
オムニ「ふーん……?まあいいや!それよりドライブさん、今日は流星群ですぜ!めーっちゃ綺麗ですぜ!!一緒に見ましょうよ、ねっ!!」
ドライブ「わかったわかった……」
オムニ「ぎゃあああああああ!!ド、ドラ、ドラドラドラドラーイブさあああぁぁん!!」
ドライブ「……むぅ」
オムニ「寝てる場合じゃねえですよドライブさん!!1階!!1階に来てくだせえ!!」
ドライブ「……?」
オムニ「子供が、さ、さ、3人も……な、なんスかコレ!?まさかドライブさんの隠し子ですか!?」
ドライブ「そんなわけあるか!バカも休み休み言え!!」
「わあ、良かったです。狙い通り、力が戻りましたぁ」
ドライブ「貴様は昨夜の……一体何者だ」
ドライブ「クリスタルクラフター……では、昨日渡してきた宝石は貴様がカットしたものか」
サラリン「はい!すっごく大事な自信作なんですぅ……」
オムニ「ほあぁ……ドライブさん……オレ、話についていけないんですけど……この男といい、この乳児×3といい……何がどうなってんスか……」
ドライブ(なんかイラッとするな、コイツ)
オムニ「ほ、宝石が乳児!?何言ってんだお前!宝石が人になるわけないだろー!?」
サラリン「し、信じられないかもしれないけど本当なんですぅ……その子達はカオスと戦う為に僕がデザインした、宝石人形(ジュエルドール)なんですぅ……」
ドライブ「……カオス?」
オムニ「な、なにカオスって。しかも戦うって穏やかじゃねえなぁ」
ドライブ「黙って聞け」
オムニ「いや、だって!邪悪な生命体とか狭間の世界とか、滅茶苦茶じゃないッスかぁ!」
ドライブ「は?おい、ちょっと待て……」
サラリン「えーい!」
ドライブ「えーい、じゃない!!」
サラリン「はわわ……す、すみませぇん……」
オムニ「きゅ、急な転移は心臓に悪い……」
オムニ「ひいぃ、全身ビリビリくる……まさか、あそこにカオスってのがいるとか?」
サラリン「はい……」
オムニ「やり直し!?」
サラリン「ドール達はカオスと戦う為に作られた人型兵器です。あれらの核に使われている宝石には……特別なパワーが秘められている。そのパワーのお陰であの子達はカオスと戦えるし、それに肉体が破壊されてもまた再生されるんですよ……赤ん坊の状態ですが」
サラリン「あの子達は今までにも、何度も何度もカオスと戦って封印してきました……その度にあの子達も破壊されて、また赤ん坊となって再生されてきました。でも昨日はちょっと宝石のパワーが尽きてしまって、再生されなかったんですよね……駄目元でドライブさんに託したんですけど、そのお陰でパワーがチャージされて今朝また復活したんです」
サラリン「それは……今、一気に話したら混乱させちゃうかもだし、ちょっと言えないですぅ……ただ、まあ……一言でいうなら……貴方がクイーンから直に力を与えられた、元キング……だからですね」
ドライブ「なに?どういうことだ、詳しく話せ!」
サラリン「ううぅ……詳しくお話したいのは山々なんですが……僕、こうやって実体を保っているのに制限時間があるんですぅ……だから、詳しい話は次回にして……大事な話をします…………ドライブさんには、この人形達を育ててほしいんですぅ」
ドライブ「はぁ!?」
ドライブ「急にそんな事を言われて二つ返事で引き受けられるか!!そもそも兵器だというなら、何故そんな……赤子の状態から育てなくてはならない非効率的な作りにしたんだ……!」
サラリン「それもワケがあるんですけど……お話してる時間がありません〜」
ドライブ「チッ……」
サラリン「あっ、そういうのは全然大丈夫なんですよ!だって、この子達は人形だし……見た目も性格も、全部 僕がデザインしたものなんですぅ。設定された性格通りの反応をするAIみたいなものです……だから胸を痛める必要はないんですよ」
ドライブ「……そういう問題ではないだろうが!さっきから貴様には倫理というものが激しく欠落している!戦う為に作り出されて、死んで、また生き返って、また戦って死んで……虫唾が走る!!」
サラリン「死ぬんじゃなくて壊れるだけですよ、そして壊れたら勝手に修理されるんです。人形だって何回も言ってるのに、わかんないんですか?」
サラリン「それに、カオスと戦えるのは特別なパワーを持つ その子達しかいないんですぅ……その子達を育てなければカオスと戦えるものはいません……誰かが戦わなければカオスは復活して、この世界を破壊しつくしますよ……そんなの、絶対ダメ……ですよね。ドライブさんに拒否権はないんですぅ……世界を救う為に、守る為にも……その子達を、ちゃんと育ててくださいね」
オムニ「ここ……オレ達の家っすね……アイツいなくなっちまったけど……」
ドライブ「後に残されたのは私達と……この子達だけか」
ドライブ「…………奴は、信用に足る人物ではない。奴についても、カオスについても、コイツらについてもわからないことが多すぎる」
ドライブ「カオスについての情報、狭間の世界とは誰か、狭間の世界に誰がどうやってカオスを封印したのか、クリスタルドールとは何か、サラリンは何者なのか、そして……何故 人形の力の供給源が私なのか……謎だらけだ」
オムニ「殆ど何もわかんねーや!」
ドライブ「だが、まあ……コイツらは普通の赤子と同じで世話をしなくては生きられないようだし……私が側にいないと肉体を保てないそうだし……奴の言いなりになっているようで癪だが、ひとまず面倒を見るしかないだろう」
オムニ「でっ、ですよね!戦いとか、カオスというか、そういうのは一旦置いといて……お世話しましょうや!オレも手伝いますから!」
ドライブ「うむ」
ドライブ「あっ」
長すぎてプレイにすら辿り着けなかったので、プロローグとして0話にしました。
次回から子育てプレイしていきます。