この朝のりーちゃんはなかなか大変だった。まず間違いなのが、マミとダディが寝坊したことである。そう、りーちゃんではなく親が悪いのだ。それも二人揃って。
わずか10分程度ではあったが、朝の10分は大きな出遅れだ。りーちゃんが起きなかったらかなり困るところだったが、思いのほか素直に起きそうだった。「朝ごはんはそうめんでいい?」と聞かれ「うん!」と即答。しかし次の瞬間「もー、◯◯だよ」「◯◯がいい」とゴニョゴニョ言っている。よくよく聞いてみると「もー、おふねがいい」と言っていた。
「おふね」とは、「お船を漕いで行きましょう」という歌で、歌に合わせて足を曲げ伸ばしする運動である。本人は寝た状態で、親が両足首を持って、上下させて曲げ伸ばしする。もともとは赤ちゃんが「大」を出やすくさせるための運動なのかな。本来は全く違うメロディらしいのだが、我が家バージョンは、お兄ちゃんが赤ちゃんの頃の最初にマミが間違えたので、「パン屋のおじさんパン切って」のメロディになってしまっている。
いずれにしてもりーちゃんはこれがお気に入りで、特に好きなのは歌の合間にダディが「チュチュン!」と言いながらお腹などをくすぐるアレンジである。ひとしきりやってもらって、ケタケタ笑ったりーちゃんは、すぐに起き出してきてくれた。
やはり寝坊の出遅れは大きく、時間ギリギリに家を飛び出したりーちゃんとダディ。この日はバスが予定よりだいぶ早く来て、集合場所までかなり遠い時点で追い抜かれてしまった。
「りーちゃん、バスに乗れなかったら大変だ!急げ急げできる?」と言われて、少し早歩きになったりーちゃん。しかしそれはバスが近くに見えている間だけだった。バスが遠ざかって小さくなると、いつも通りゆっくり歩く。最近は側溝の蓋のコンクリートの上を歩いて、ポコポコ音がするのがお気に入りのりーちゃんである。
それでも、再び近づいてバスが大きく見えると、また早足になった。バスに乗れなかったら困るということは、りーちゃんもよく理解してはいるみたい。他の親御さんたちをだいぶ待たせてしまい、お詫びをしながらりーちゃんをバスに乗せるダディであった。
この日もいつも通りニコニコしながら、りーちゃんはバスに乗った。なので、まあ良しとしましょう。しかし親たちは、もう少ししっかりせねばなりますまい。