この日のりーちゃんは、映画を見に行くことになっていた。数日前から楽しみにしていて、朝もウキウキだ。
映画館はショッピングモールの中にあって、少し早めに到着した我が家。時間を潰すためにオモチャを見に行くなどしたいのだが、我が家の場合はちょっと問題がある。りーちゃんをオモチャ屋さんに連れて行くと、遊びを終わらせるのに時間がかかってしまうのだ。映画は当然、時間が決まっている。りーちゃんがクズって時間がかかるようだと、映画に遅れてしまう。もはやダディのパワーでも、大きくなったりーちゃんの強制排除はできないのだ。
そこでマミとダディは、りーちゃんと約束をすることを試みた。「りーちゃん、このあと映画だから、時間が来たらオモチャは終わりにするよ」「マミとダディが行くよ、って言ったら、遊びを終わりにできる?」「お約束できるなら、オモチャのところに行くよ。お約束できる?」
こうして言い聞かせるが、最初は何も反応を示さないりーちゃん。こうした約束を理解するのは難しいかなと思いつつ、何度か説得を試みた。すると、何度目かの「約束できる?」に対して、りーちゃんが「うん!」と答えた。
これにはマミもダディもびっくりしながら、「偉いねぇ」「お姉さんだねぇ」とベタ褒め。りーちゃん、親のお話をちゃんと理解できているのだろうか。
きっと理解できていると信じたい夫婦。しかしまだわからない。実際にオモチャ屋さんで遊んで、時間が来て、「映画行くよ」と言われてすぐに遊びを終わらせられて、ようやく理解できていたと言えるからだ。
いつものように、周りのお子さんたちよりもひときわ大きいりーちゃん。他のお子さんたちとトラブルにならないか見守りつつ、映画の時間を待つ。りーちゃんは「おぎんぎょう」で大人しく遊んでいる。
そしていよいよその時はやってきた。「りーちゃん、そろそろ終わりにするよ」「そろそろ映画に行くよ」と促すマミとダディ。しかしりーちゃんは「おぎんぎょう」を移動させ、小物類をあちこちに整理して、なかなか遊びを終わらせる兆しを見せない。
「ダメなのか…」と不安になりながらも説得を続ける両親。「それで終わりね」「それやったら、行こう」と何度言っただろう。りーちゃんがついに遊びを終わりにして歩き始めた。
またしてもベタ褒めするマミとダディ。オモチャ屋さんから映画館までは少し距離もあるのだが、問題なく移動することができた。こんなにスムースにオモチャ屋さんを離れることができたのは、初めてのことではないだろうか。
今回は、りーちゃんが楽しみにしてることを後ろに持ってきて、オモチャ屋さんを訪れるという作戦が功を奏した。作戦のおかげなのか?いやいや、りーちゃんの成長のおかげなのだと、マミとダディは信じておりますよ。