【慰安婦問題】10億円拠出【日韓合意】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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「日韓合意と世論」 akiraブログ2017年1月7日

http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12235919752.html

 

「つまり、合意に賛成した人も反対した人もほとんどは韓国側が約束を守るとは思っていなかった。だから、10億円もソウルの日本大使館前の慰安婦像が撤去されるのを確認してから拠出するべきだと答えた人も多かったのである。

 

ところが、安倍政権はこの世論とは逆に慰安婦像が撤去される兆しすらない昨年8月に拠出を閣議決定してしまった。これには私も正直がっかりしたが、その後の流れを見るとこの対応はやはり正解だった。これで、我が国は約束を完全に履行したことになったのだ。」

 

 

 この点について補足したい。

 慰安婦問題日韓合意を「勝利」と評し、「日本政府はさっさと10億円を拠出すべき」という旨を論壇誌でいち早く示したのは、武藤正敏氏(元駐韓国大使)であろう。

 武藤氏はこう述べる。

 

 

遠藤誉、武藤正敏 「「中国封じ込め」で安倍外交完勝」 (WiLL2016年3月号、ワック)

 

44~46ページ

 

慰安婦支援団体の正体

 

武藤 いま、ボールは韓国側に投げられており、海外が韓国の動向を注視しています。安倍政権の非常に巧みな外交だと思いますね。問題は、韓国政府が挺対協(※)の主張に振り回されることなく国益と国家戦略、地域の安全保障、日本との関係、日韓の世論などを総合的に判断して対応できるかにかかっていると言えます。

 今回の合意に対して、案の定、挺対協に属する元慰安婦は猛反発していますが、それは元慰安婦の一部のみであり、元慰安婦にもいろいろな考えの人がいます。ナヌムの家の元慰安婦にも、「満足ではないが、政府も苦労したので政府に従う」とする人がいます。挺対協やナヌムの家で生活する強硬派の元慰安婦は、生存する元慰安婦四十六人の二割ほど。その他の慰安婦のなかには、「挺対協は慰安婦を代表するものではない」と批判する者もいます。

 今回、新たに設置する基金から、大半の元慰安婦は償い金を受け取り、それによって問題に終止符が打たれるのではないかと期待されます。

遠藤 合意内容では、「韓国側が設立する財団に、日本政府の予算から資金(十億円)を拠出し、心の傷を癒す措置を講じる事業を支援していく」とされていますね。

武藤 アジア女性基金の償い金の時は、挺対協は「日本政府の賠償責任を回避するためのまやかしだ」として全面否定し、元慰安婦の女性たちに受け取りを拒否させました。当初、受け取った七人の元慰安婦たちに対して様々な嫌がらせを行い、「日本から金を受け取るのは売春婦」とさえ非難したのです。それが慰安婦支援団体のすることでしょうか。

 その後、さらに五十四人の元慰安婦がアジア女性基金の償い金を受け取りました。これは元慰安婦の立場を考慮して公表されませんでしたが、挺対協が受け取りを拒否させなければ、ほとんどの元慰安婦は償い金を受け取り、その時点でこの問題は解決していたでしょう。いまのように晒し者にされることもなく、より安らかな老後を送れたはずです。

遠藤 今回は、新しい基金は韓国政府がつくるもの、と韓国を巻き込んだ合意内容になっていますね。そこは注目すべき違いだと思いますよ。

武藤 おっしゃるとおりです。アジア女性基金の例から言って、挺対協は自分たちの支配下にある元慰安婦など、一部の人には受け取りを拒否させるでしょう。しかし、大半の元慰安婦はお金を受け取り、この合意を受け入れるものと考えられます。

 そうなれば韓国の国内世論も慰安婦問題の決着を受け入れ、日本を非難し続けてきた挺対協は孤立する。すると、挺対協の活動はますますエスカレートしていくでしょうが、それに比例して韓国の一般国民はどんどん離れていく。浅間山荘事件などで、全共闘から一般国民が離れていったように。

 私は、挺対協の活動家が強く反発した背景は、この合意によってその存在意義を失うからだと思っています。挺対協の活動の寄りどころは、国内世論の支持です。合意によって問題の最終的かつ不可逆的な解決が図られれば、韓国の国内世論は慰安婦問題から目が逸らされ、挺対協への支持と支援は大幅に縮小します。

 挺対協は元慰安婦に対する支援活動としてばかりでなく、自身の政治目的のために活動を繰り広げてきた面が強いので、慰安婦問題で日韓両国政府が妥結に合意すれば、自身の存在意義がなくなる。したがって、挺対協が一〇〇%満足する解決以外、受け入れない。今回の合意は、それを打ち砕いたのです。こうした点はもっと評価されて然るべきです。」

 

※ 「挺対協」

 韓国挺身隊問題対策協議会の略称。

 

49~51ページ

 

韓国の後出しジャンケン

 

武藤 (中略)韓国の特徴は、大統領が決断を下せば右向け右になる国だということです。そして、これまで日韓関係を前に進めようと信念を持った大統領のときは、日韓関係は比較的うまくいっています。朴正煕大統領であり、全斗煥大統領、李明博大統領の前半ですね。そうした大統領のときは、韓国経済も順調にいっている。歴史を学べというなら、そういう歴史を学んでもらいたい。駐韓国大使時代に、こうしたことも韓国側に伝えました。

 今度は朴大統領が、父・朴正煕大統領が日韓関係の歴史を置き去りにして国交正常化したと評価されていることで、歴史問題に固執した。しかし、いまは日韓関係を立て直す必要性を強く感じている。そうした意向が韓国の裁判所の判決(※)に表れており、マスコミも評価したわけです。

遠藤 司法が大統領の意向を受けて判決を下したとすれば、三権分立の民主主義国家としてあるまじき行為ですが、それではまるで中国と同じになってしまいますね。

武藤 ただし、いま韓国のマスコミ報道にも混乱が見られるのも事実です。慰安婦合意の成否は説得と真正性(合意を真摯に守るとの姿勢)に掛かっているとの社説や、被害者が納得しない合意は無効だとの学者の投稿も載せており、野党は再交渉を強く求めています。

 こうした事態を受け、大統領府は「今回の合意は最善を尽くした結果であり、これを無効といえば、今後どの政府もこうした難しい問題に手を付けられないだろう」と反論しています。こうしたやり取りは、しばらく続くでしょう。

 日本では、韓国が野党に政権交代したらまた約束が反故にされるとの懸念もありますが、そのためにも先に十億円を支払って決着の「既成事実化」を図り、韓国国民に認識させることが重要だと思います。

遠藤 慰安婦像を撤去しないなら十億円の拠出を停止すべきだ、という声が自民党内からも相次いでいますが、像を撤去せずに十億円を支払うことに対して、国民の納得を得られるかどうか。

武藤 もちろん、日韓基本条約と同時に締結された請求権・経済協力協定で日韓間の賠償問題は完全かつ最終的に解決しており、アジア女性基金でも支払っているうえに、さらに十億円を拠出することになった経緯には私にも不満はあります。盧武鉉元大統領が二〇〇五年に、慰安婦など反人道的な行為については日韓請求権協定の対象外だと主張したことなどは、後出しジャンケン以外の何ものでもない。今後は単に不満を言うのではなく、そうした事実を国際社会に発信していくことが必要です。他方で、国益を考えると慰安婦問題だけで判断するべきではありません。中国との関係も考え韓国をどうマネジメントしていくか、総合的な判断をしていく必要があるのです。

 

※ 韓国の裁判所の判決

 「一つが、十二月十七日の加藤達也産経新聞前ソウル支局長の無罪判決。二つ目が、元徴用工が一九六五年の日韓請求権協定が違憲だとして訴えていた裁判で、韓国の憲法裁判所が訴えを却下したことです。こうした日本が絡んだ問題で裁判所が韓国の国民感情に配慮した判決を出してきたことを考えれば、明らかに日韓関係改善を意識した判決と見ることができます。」(42ページ)

 

 

 

 

 韓国がこの合意を破ることを予見しているからこそ、安倍政権は「10億円」を早期に拠出したということになる。

 「韓国は合意を破るから払うな」ではなく、「韓国は合意を破るから払っておけ」なのである。

 ここらへんがわかりにくい。

 関連する論説を紹介しておく。

 

 

「【ワールド・インタビュー】 武藤正敏・前駐韓大使「まず10億円を供出すべき。慰安婦像撤去はその後求めればよい」」 産経ニュース2016年5月5日

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n1.html

 

「 韓国で4月13日に行われた総選挙で与党、セヌリ党が惨敗した。朴槿恵大統領の支持率も29%(韓国ギャラップ4月22日発表)と、前週より10ポイント急落して就任後、最低となった。求心力を失った朴大統領の政権運営に影響はないのか。昨年末の「慰安婦」合意の履行や軍事情報を交換する際の手続きを定めた「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の早期締結など、日韓間に横たわる問題は解決するのだろうか。武藤正敏・前駐韓日本大使(67)に聞いた。

 --与党が惨敗したが、今後どんな影響が出るのか

 「選挙に強く『選挙の女王』と呼ばれた朴槿恵大統領が、総選挙でこれだけ大敗するということは、やはりレームダック(死に体)化は避けられない。それでも韓国大統領の権限はそもそも相当に強い。国民もみな大統領には一目置いているし、やり方次第ではある程度、支持率の回復は可能ではないか。もっと国民と対話して、国民生活に密着したところで支持率アップの努力をしていくべきだ」

 --死に体化している大統領が日韓「慰安婦」合意を履行できるのか

 「総選挙でも争点にならなかった。韓国にとって他にオプションはないのだと思う。昨年末の日韓『慰安婦』合意を、米国が歓迎した。ここであの合意をほごにしたら、米国から『韓国はなんだ』と非難されるだろう。北朝鮮情勢が緊迫している中、中国は頼りにならないし、日米韓3カ国が協力していかなければいけないことは分かっていると思う」」

 

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n2.html

 

「 --合意については、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などが強く反対しているが…

 「印象的だったのが、今回の合意を、朴槿恵大統領自身が説得しようとしていることだ。合意の無効を訴える挺対協や再交渉を強く求める野党に対し、大統領府は『今回の合意は最善を尽くした結果であり、これを無効といえば、今後どの政府もこうした難しい問題には手を付けられないだろう』と反論した。韓国の世論も『合意に満足しているわけでないけれど仕方ない』という雰囲気になっている」

 --元慰安婦の中には合意を受け入れないという人たちもいるが…

 「元慰安婦支援施設『ナヌムの家』に身を寄せる元慰安婦の中には『合意を受け入れる』と言った人たちもいた。その後、周りから引きずり下ろされて発言を撤回している。ナヌムの家に暮らす14人は絶対合意を受け入れないだろう。韓国政府が、韓国に在住する他の元慰安婦18人に直接説明したところ、自分の意思表示ができる人14人は合意を受け入れると言っている。残り4人はすでに自身で判断できなくなっている人々だった」」

 

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n3.html

 

「 --日本が平成7年に設立した財団法人『女性のためのアジア平和国民基金』(アジア女性基金)のときは、挺対協が元慰安婦に支援金の受け取りを拒否するよう圧力をかけたが…

 「それでも韓国の元慰安婦61人ががアジア女性基金を受け取っている。最初に受け取った7人は挺対協から、さまざまな嫌がらせを受けたが、それでもさらに54人が内々に受け取っている。54人については、受け取った元慰安婦に配慮して公表してこなかった。今回は韓国政府が財団をつくって実質的にやるのだから、より受け取りやすくなるはずだ。心配なのは慰安婦像だ」

 --慰安婦像の撤去ではなく、移転でも難しいか

 「世論調査をみると、慰安婦像の撤去については、韓国人の7割以上が反対している。韓国政府にとって、合意の受け入れと慰安婦像撤去という二正面作戦での説得となると難しくなる。慰安婦像の撤去は入り口では難しい。遺憾ではあるが、出口にせざるを得ない。つまり、慰安婦問題が解決したとき、『問題が片付いたのに日本大使館前に置いておくのはおかしい』という雰囲気に韓国全体がなれば、韓国政府も撤去しやすくなる」」

 

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n4.html

 

「 --自民党内では、慰安婦像が撤去されない限り、10億円を拠出すべきでないという意見も出ているが…

 「そういった発言は、慰安婦像の価値を高めているとしか思えない。あまり騒ぎたてなければ、人々の関心は薄れていく。関心のなくなった慰安婦像は、問題解決したときに撤去しやすくなる。日本が慰安婦像に敏感に反応していると、問題が解決しても慰安婦像を置くべきだという話になってしまう。日本は慰安婦像ごときで騒ぎ立てないほうがいい」

 --どうすれば日本の国益に利するか

 「もし慰安婦像のために日本が10億円を供出しなければ、恐らく合意はつぶれる。そうなれば挺対協の人たちは喜ぶだろう。自分たちがこの合意をつぶしたと批判されなくてすむからだ。そうなれば挺対協は、全世界のあちらこちらに慰安婦像をつくってまわるだろう。日本は感情的に反発してはいけない。それをやることで日本はどれだけ損をしてきたか」

 --たとえばどんなことがあるか」

 

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n5.html

 

「 「日本政府は、慰安婦問題で『強制性』にこだわってきたが、『強制性』があったという証拠はないが、なかったということも証明できない。それを言うよりも、挺対協がいかに慰安婦の史実をねじ曲げているかということを言ったほうが効果的だ。挺対協は、元慰安婦の女性たちの証言のみを根拠に主張している。それは、あくまでも元慰安婦たちの個人的な体験に過ぎない。自分たちの都合のよい部分だけを取捨選択していることも考えられる。挺対協の主張が相当いい加減であることを指摘した方が遙かに効果がある。『強制性』の問題に焦点を絞るから、日本は世界からも批判される」

 --来年末に予定されている大統領選が近づくと、慰安婦合意の履行はより難しくなるのではないか

 「だから今年中に10億円を拠出してしまったほうがいい。韓国が受け取ったら、この問題は終結だ。早く受け取らせてしまったほうがいい。お金を供出しないとか言っていると、合意がつぶれ、また蒸し返されてしまう

 --今回の総選挙で知日派の議員の多くが落選してしまった。韓国国会の中でどんどん知日派が減っているが…

 「そういう流れが韓国社会の中でできている。知日派が少数派になり、力を十分に発揮できなくなっているという意味で残念だ。そうなってくると普通の国の外交をしないといけない。つまり議員外交ではなく、外務省の正規のルートを通じた外交だ。日韓関係は国民感情が支配しているが、これからはそういった日韓という特殊なフレームの中でやるのではなく、国際的視野で日韓関係をやっていくことが必要だ。客観的に事実を見つめ合っていく。そういう習慣を作らないといけない」」

 

http://www.sankei.com/premium/news/160505/prm1605050016-n6.html

 

「 --具体的に日本はどう韓国と接していくべきか

 「日本も言うべきことは、韓国に言ったほうがいい。今までは、何かと韓国に遠慮してきた。そうした関係が続いたことが、日本の嫌韓感情をもたらした。韓国の反日感情よりも、日本の嫌韓感情のほうが幅広く、深くなってきている。韓国の人たちにもそれを知ってもらわないといけない」

 --今回の選挙結果は、今後の日韓関係にどう影響を与えるか

 「GSOMIAは難しくなったと思う。野党が政権をとったらまず無理だろう。韓国は、世界の動きをわかっていないし、将来のビジョンも描けていない。韓国はこれまで中国の覇権的な構想にのみ込まれて、おべっかを使ってきた。韓国はそういった事大主義を捨て、もっと自立して自国の国益を追求するべきた。そうなれば日米との関係も、もっと近づくことになるだろう」

(了)」

 

 

 ついでに、「中国との関係も考え韓国をどうマネジメントしていくか」について述べられた箇所も引用する。

 

 

遠藤、武藤 「「中国封じ込め」で安倍外交完勝」 43,44ページ

 

中国に決定的なダメージ

 

遠藤 今回の合意を、「日本側の多大なる譲歩だ」と非常に不愉快に思う人たちが日本国内には大勢いるでしょう。私自身も、岸田外相が記者会見で「当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた」と仰ったとき、「軍の関与のもとに」という言葉にはハッとしましたね。「日本政府がそこまで言ってしまうのか」と少々驚きました。

 基本的に斡旋業者を軍が管理したという点では一定程度の軍関与と言えるでしょうが、「軍の関与のもとに」と直接的な関与を示す表現を用いることに、一部の日本国民は到底納得しないのではないかと危惧したのです。

武藤 現に、納得していない人はたくさんいますね。

遠藤 ええ。しかし他方で、今回の合意で非常に重要なことは、これによって歴史問題で中国と韓国が共闘できなくなったという点です。合意内容にはこうあります。

「今般の合意は最終的かつ不可逆的で、日韓両国は今後、国連など国際社会において、互いを非難することをしない」

 この文言は非常に重要で、韓国は慰安婦問題をもう持ち出せない。すなわち、中国と韓国は歴史問題で共闘して日本を非難することができなくなったのです。これは中国に決定的なダメージを与えています。習近平政権になってからというもの、朴大統領との蜜月関係が続いていました。その狙いは、AIIBへの勧誘や米韓離間など多くの目的がありますが、なかでも対日歴史問題に関して中韓が共闘することでした。

 これは日韓関係改善の大きな阻害要因となっていましたが、今般の日韓合意により、中国の目論見は失敗に終わったと言えます。結果、中国はいままでのように居丈高に日本に歴史カードを突き付けることが不可能になる。中国は韓国と連携して二年後のユネスコ世界記憶遺産申請を準備していましたが、その試みもできなくなったと考えていいでしょう。

 今回の日韓合意は、もちろん日本側からすれば不満な点が多々あることは重々認識しておりますが、しかしながら戦略的に見て極めて正しい判断で、安倍首相の政治決断を高く評価したいと思います。

武藤 「最終的かつ不可逆的~」という点は重要なポイントだ、と私も思いますね。日本では「合意内容を文書化していないから、また韓国に問題を蒸し返されるのではないか」と危惧する声が多く見られますが、共同記者会見を行ってそれが全世界に報道されたわけです。国家間の合意であるということは明確に言えます。

遠藤 いまはIT時代です。文字による証拠以外に、画像や音声による証拠もまた立派な証左になります。全世界が目で見て耳で聞き、確認しているのですから、もし仮にまた韓国がこの問題を蒸し返すようなことがあれば、韓国は国際社会において完全に信用を失い、孤立し、国家として体をなさなくなりますよ。

 中国は、まさにこの「日韓両国は今後、国連など国際社会において、互いを非難することをしない」という文言に腸(はらわた)が煮えくり返るような思いを抱いたものと思われます。一月六日に北朝鮮が水爆実験と称する核実験をしたあと、朴大統領が何度か習近平国家主席に電話会談を申し込んでいますが、現時点(一月十七日)で中国はそれにも一切、応じていません。中韓関係はここまできてしまった。」

 

 

 武藤氏はこの対談をこう結ぶ。

 

 

同52ページ

 

武藤 今回の日韓合意は日本の外交的な勝利でもあり、それと同時に、日本が国際発信を強化していく契機となることが期待されます。

 

 

 先月23日、34人の元慰安婦が、韓国が設立した財団から、償い金の支給を受けるとの意思を表明した。

 そのうち29人には既に支給を完了している。

 

 

「元慰安婦34人が現金支給受け入れ 韓国政府の財団発表」 朝日新聞デジタル2016年12月23日

http://www.asahi.com/articles/ASJDR5401JDRUHBI01H.html


「 慰安婦問題の日韓合意に基づいて韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」は23日、合意時に生存していた元慰安婦46人のうち、34人が財団の現金支給事業を受け入れる意思を明らかにしたと発表した。財団は残る12人に対しても事業への理解を求めていく。

 財団は、合意時の生存者46人に現金1億ウォン(約980万円)程度、死亡者199人に2千万ウォン(約200万円)程度を支給する。財源には日本政府の予算が充てられている。

 財団によると、現金支給を受け入れる意思を明らかにした生存者34人のうち、31人にすでに支給を決定。29人に支給を終えた。残りの3人は支給手続きを進めているという。

 財団は来年から、死亡者に対する現金支給も本格化させる。死亡者35人の遺族らが現金支給の受け入れを表明したという。また、すべての元慰安婦を対象として、被害者を記憶し、追悼する事業を進めていく方針も明らかにした。(ソウル=東岡徹)」

 

 

 その上での先月末からの釜山での慰安婦像設置騒動である。

 NHKの報道では「地元の学生などで作る団体が慰安婦問題を象徴する少女像を設置した」とのことであったが(http://ameblo.jp/bj24649/entry-12235504249.html)、私としては挺対協の暗躍を疑う。在ソウル日本大使館前に慰安婦像を設置したのは挺対協だ(http://www.sankei.com/premium/news/170108/prm1701080031-n1.html)。

 武藤氏の言うとおり、元慰安婦の大半が償い金を受け取り(または受け取りの意思を表明し)、韓国世論が慰安婦問題は決着したと受け止める方向に行き始めた矢先に、挺対協の活動が「ますますエスカレート」しているということではなかろうか。

 ここにおいて、韓国の一般国民が挺対協から「どんどん離れていく」状況を作り、挺対協を孤立させていくことが有効ではないかと思う。

 また、国際社会に向けて、慰安婦問題を蒸し返そうとする韓国の方に非があることを示し、この問題について韓国の方が国際社会から孤立するように、わが国としては発信していくことが求められているのだと思う。

 

 6日、菅義偉官房長官は、慰安婦問題日韓合意違反およびウィーン条約違反を指摘した上で、4つの対抗措置を発表した(http://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060019-n1.html)。

 この時、記者から「おおっ」とどよめきが起きたらしい。

 

 

阿比留瑠比フェイスブック2017年1月5日(日付がズレてる?)

https://www.facebook.com/rui.abiru/posts/1395829563795024?pnref=story 

 

「菅官房長官が記者会見で釜山の慰安婦像設置への対抗措置として、駐韓日本大使の一時帰国などを発表した際、首相官邸記者クラブでは「おおっ」という嘆声が上がっていました。」

 

 

 akiraさんは「ここまではっきりした意思表明があるとはほとんど誰も予想していなかったということである。」「私も強い対抗措置は望みつつも本当にここまで明確な対抗措置を打ち出すとは思っていなかったのでかなり驚いた。」と言う(http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12235578105.html)。

 こういう時の対抗措置の相場がわからないのだが、平成24年(2012)8月10日、李明博韓国前大統領が竹島に上陸したことへの対抗措置として、日本政府(野田政権)は駐韓国大使を一時帰国させた。この時の大使がまさに武藤氏だった。通貨スワップについては「(平成)24年に当時の李明博大統領が竹島(島根県隠岐の島町)に上陸するなど日韓関係が冷え込んだ影響で規模が縮小」したと説明されることがある(http://www.sankei.com/economy/news/170106/ecn1701060025-n1.html)。なお、財務省は、「今般、財務省及び日本銀行は、韓国企画財政部及び韓国銀行との協議の上、日韓通貨スワップの時限的な増額部分(注)を2012年10月31日に予定通り終了することとした。」と説明している(http://www.mof.go.jp/international_policy/financial_cooperation_in_asia/bsa/swap_korea_houdou_20121009.htm)。建前上は「予定通り」だが、実質上はこの竹島上陸問題を原因とした縮小なのかもしれない(日韓通貨スワップが打ち切られたのは安倍政権時。http://www.mof.go.jp/international_policy/financial_cooperation_in_asia/swap/swap_korea_houdou_20130624.htmhttp://www.mof.go.jp/international_policy/financial_cooperation_in_asia/bsa/20150216.htmhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/161016/mcb1610161602003-n1.htm)。

 抗議の必要性の度合いとしては、今回の在釜山日本総領事館前の慰安婦像設置よりも、李前大統領の竹島上陸の方が重大であろう。

 そういうことから、対抗措置は重くても「長嶺安政・駐韓国大使および森本康敬・在釜山総領事の一時帰国」あたりにとどまると、多くの記者たちは想定していたのではなかろうか。

 一部報道には「日韓通貨交換(スワップ)の取り決めの協議の中断」を想定するものがあったそうだが(多分http://www.asahi.com/articles/ASJD05WW8JD0UHBI00J.html。会員登録していないので読めない)、「在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ」や「日韓ハイレベル経済協議の延期」にまで及んだため、驚きの声が上がったといったところではないか(http://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060039-n1.htmlhttp://www.sankei.com/politics/news/170107/plt1701070006-n1.html参照)。もちろん、事前に情報が漏れていなかったからこその驚きでもあろう(http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12236192606.html)。

 なお、李前大統領の竹島上陸の時よりは、大使の一時帰国の期間は短くなるとの見通しがある。

 

 

「【釜山・慰安婦像設置】 長嶺安政・駐韓大使は9日に一時帰国 1週間程度か」 産経ニュース2017年1月8日

http://www.sankei.com/politics/news/170108/plt1701080017-n1.html

 

「 日韓外交筋は8日、長嶺安政・駐韓大使が9日に日本へ一時帰国すると明らかにした。韓国南部・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦被害を象徴する少女像が設置されたことに対し日本政府が打ち出した対抗措置の一環。

 日韓間では、2012年8月に当時の李明博大統領が竹島(韓国名・独島)に上陸したことに抗議し、日本政府が当時の武藤正敏・駐韓大使を一時帰国させ、武藤氏は12日後に韓国へ戻った。

 日韓筋は「李氏の竹島上陸の方が今回の慰安婦像設置よりは重大だ」と指摘し、長嶺氏の一時帰国期間は12年の時より短く、1週間程度になるとの見通しを示した。(共同)」

 

 

 安倍・バイデン電話会談の後に、菅官房長官が対抗措置を発表している。

 今回の対抗措置は、事前にアメリカに根回しをし、オバマ政権の了解を得て、日本優位の形勢で発表したという格好になっているのではなかろうか。

 

 

「【釜山・慰安婦像設置】 対抗措置の背景はこれだ 日本政府「反日無罪」許さず 日韓合意の道徳的優位で韓国の合意不履行を世界に発信」 産経ニュース2017年1月7日

http://www.sankei.com/politics/news/170107/plt1701070006-n1.html

 

「 政府は6日、韓国・釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置をめぐり、長嶺安政駐韓大使の一時帰国など強硬な対抗措置に出た。背景には、2015(平成27)年12月の日韓合意に基づく義務を韓国側が果たしていないことを印象づけることで、国際世論の支持を得られるとの計算がある。年内の韓国次期大統領選も見据え、安易な「反日無罪」はもう通用しないとくぎを刺したい考えだ。

 「徹底的にやる。道徳的に優位に立って言う」

 外務省幹部は6日、慰安婦像設置への対抗措置について、こう説明した。

 「道徳的な優位」とは、日本側が国際社会が注視する中で結んだ日韓合意に基づき、元慰安婦支援などへの10億円拠出を行っているのに対し、韓国側に事態打開に向けた動きが見られないことを指す。韓国政府が努力を約束したソウルの日本大使館前の慰安婦像は撤去されないばかりか、新たな慰安婦像設置も黙認していることで韓国政府の不誠実さが際立った。

 駐韓大使の一時帰国は約4年半ぶりとなるが、総領事館員の釜山市の行事参加見合わせは「過去に記憶がない」(日韓外交筋)というほどの異例の措置だ。

 菅義偉官房長官が6日の記者会見で対抗措置を発表したのに先立ち行われた安倍晋三首相とバイデン米副大統領の電話会談では、日韓合意の履行を「強く期待する」との発言をバイデン氏から引き出した。

 

http://www.sankei.com/politics/news/170107/plt1701070006-n2.html

 

「 日本政府は年明けから対抗措置の本格検討に着手したが、発表は安倍首相とバイデン氏の電話会談後のタイミングとなった。日本の「道徳的優位」が国際的に保証された上での発表という形だ。日米外交筋は「安倍首相は戦略家だ。そういうことも当然、念頭に置いている」と指摘する。

 一連の対抗措置に韓国世論が反発してくることも日本政府は織り込み済みだ。外務省幹部は「韓国世論が反発しても不快感は示さなければいけない。韓国側にメッセージを送る必要がある」と語る。

 韓国の次期大統領選では主要候補が日韓合意の見直しを求めることが予想される。そうなれば国際約束違反となり、韓国にとって日韓通貨交換(スワップ)の取り決め協議の中断など実害を被るうえ、国際的な理解も得られない-。日本政府が出した「メッセージ」は、現政権のみならず、次期政権にも向けられている。

(杉本康士)」

 

 

 「10億円」の拠出も完了し、最終的・不可逆的に解決したと合意した慰安婦問題を蒸し返そうとする韓国の方が国際的な「道徳」に反している。

 わが国は「国際世論の支持」を得るべく発信していく必要がある。

 そして、バイデン米副大統領の発言を引き出した上で、韓国に抗議する意思が明確な対抗措置を発表したのは、国際社会に発信する手順としておそらく適切だったのであろう。

 私としては、日米は先の大戦で激しくぶつかり合ったわけで、アメリカは戦時中の慰安婦問題について韓国側に立ってもおかしくないのに、そうならなかったという構図は、国際社会にわが国の主張の正当性を印象づけるものだと思う(http://ameblo.jp/bj24649/entry-12117273749.html)。

 

 平成5年(1993)の河野談話によって、韓国は慰安婦問題という外交カードを獲得した。

 安倍政権は、「おわび」「反省」などの言いたくない言葉や「10億円」を代償にすることとなったが、一昨年末の慰安婦問題日韓合意によってこの外交カードを回収した(http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001667.html)。

 今回の対抗措置への経緯は、そういうことを示していると思う。

 「ゴールポストを固定化」していかないといけない(http://www.sankei.com/politics/news/151231/plt1512310003-n1.html)。

 

 今回の対抗措置によって、少なくとも釜山の慰安婦像が撤去されるまで、通貨スワップ協定交渉は中断されることになるのではないか。武藤氏はソウルの慰安婦像撤去については「出口にせざるを得ない」と言うが、ひょっとすると、これが撤去されるまで中断されるということもあるかもしれない(「安倍総理大臣はNHKの「日曜討論」で、韓国プサン(釜山)の日本総領事館の前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたことについて、韓国は慰安婦問題をめぐる日韓合意の義務を履行する必要があるとして、ソウルの日本大使館前の像も含め撤去を求めていく考えを示しました。」http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170108/k10010832431000.html)。

 韓国国民は、挺対協を支持して慰安婦像を崇め奉って国際社会から孤立し、経済的にも不利益を被るのがよいのか、挺対協を孤立させて慰安婦像を撤去して国際社会からの孤立を防ぎ、経済的な不利益を防ぐのがよいのか、選択を迫られているのだと思うし、そういう選択を迫るよう、日本政府は韓国に圧力をかけていくべきなのだろうと、武藤氏の論説を読んで思う。

 とは言うものの、朴大統領が職務に復帰しないうちは事態に進展は見られないかもしれない。

 朴大統領が早期に復帰し、ソウルと釜山の慰安婦像を撤去することが、韓国にとって適切な選択なのだと思う。

 そして、韓国でそういう世論が高まることが、朴大統領の弾劾裁判の帰趨にも影響を与えるのではないかと思う。