山崎文明のセキュリティコラム
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日本の国土が中国に丸裸にされる日

空撮映像が中国に吸い上げられている日本

今、日本中の空を中国製ドローンが飛び回っている。美しい空撮映像だけでなく測量や災害救助にまでその応用範囲が広がっているドローンだが、そのほとんどは、深セン市に本拠を構える中国のメーカーが作成したものだ。撮影された映像は、中国にあるデータセンターに蓄積されて、いずれは日本の空を自由に航行できるドローンの航路情報として、人民解放軍のドローン攻撃の役に立つ日がくる。

 

中国に牛耳られるドローンの世界

中国製ドローンの世界的シェアは、80%を超えており、その大部分はDJIという会社のものだ。2015年に起こった首相官邸無人機墜落事件に使用されたドローンもDJIのものだ。事件を受けて警視庁が発足させた網を使ってドローンを捕獲するというドローン捕獲部隊が使用しているドローンもDJIのものだ。

障害物を自動で避けて追尾することができるなど、安価で高度な機能を売り物にしたDJIのドローンは、日本のみならず米軍でも使用されている優れものである。

 

米軍では使用禁止に

 その米軍では、2017年8月2日に陸軍研究所から「DJI無人航空機システムの脅威およびユーザの脆弱性」という報告書が、海軍からは「DJI製品群に関する運営リスク」という報告書が出され使用が禁止された。「すべての使用を停止し、すべてのDJIアプリケーションをアンインストールし、すべてのバッテリーとストレージを取り外せ」とかなり厳しい調子で指示する内容の報告書だが、この報告書が発表されて2週間後の8月11日には、OPSEC(Operation Security)の規定をクリアするものは利用可能であるとのメモを発表している。OPSECの規定とは、情報を守るための常識として日常的に気をつけなければならないこととは何かについて、自発的な判断ができるようにするための教育プログラムである。常に敵を想定し、もしあなたが敵の一味であったならどのようにして情報を手に入れるかを考えさせるというリスク分析の手法であり、DJIが中国企業というだけでOPSECに反するとの見方が強い。

 

もはや何も信じられない中国

 米国がファーウエイやZTE社製の通信機器を全米から排除する決定を下した背景には、中国が2017年6月に施行した国家情報法に対する懸念が大きい。国家情報法は、国家としての情報収集に法的根拠を与えるために定められた法律で、第1条で「国の情報活動を強化及び保証し、国の安全と利益を守ることを目的とする」と規定している。この法律では第7条で「いかなる組織及び個人も法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有し、国は情報活動に協力した組織及び個人を保護する」としている。つまり中華人民共和国の国民全員が中国のスパイであると定義し、国家は全面的に保護するといっているのだ。したがってファーウエイやZTEがどんなに潔白を説明しようが中国政府から協力を求められた場合、抗えない制度になっているのだ。当然、DJIも中国の企業である以上は、この法律に従うしかない。ちなみにこの法律では、第9条で「国は、国の情報活動に大きな貢献のあった個人及び組織に対し表彰及び報奨を行う」さらには、第25条で「国の情報活動への支援・協力により財産の損失が生じた個人及び組織に対しては国の関係規定に基づき補償を行う」と損失補填まで言及している。

 

合法的に空撮データを中国に持ち出すDJI

 DJIは、米軍がDJIのドローンの使用禁止を打ち出した直後の2017年8月16日に撮影したデータを中国のデータセンターに送信しないで操縦できる「ローカルデータモード」を発表している。このモードでドローンを操縦すればインターネットに空撮情報が流れることもなく、一見すると安全な使用に見えるが、実際に使用者に話を聞いたところ、高度が30mに限定され、大半の安全装置が機能しないということで、実際にこのモードで使用する人はほとんどいないだろうとのことだった。機能が制限されることはDJIのマニュアルにも明記されており、DJIは、合法的に空撮データを中国に送ることができているのだ。

 

来るべきドローン戦に備えよ

 空撮データは、GPSの信号と共に記録され緯度、経度、高度とともに画像情報が記録される。日本全国で橋梁の保守や工場の安全点検、農薬散布など種々雑多な空撮が行われているが、一つ一つは点でしかないかもしれないが、すべてのデータが手に入るとすれば、それは、日本の低空域における航路情報になり得る。低空域における航路情報は、ドローンの無線操縦に頼らない自律航行を可能とする。仮に中国がドローン戦闘機部隊を整備し、何千、何万ものドローンを一気に日本へ向かわせる飽和戦術をとった場合、日本は瞬時に大打撃を被るだろう。現代の戦闘は、陸上イージスでは対応できないのだ。たった1機のドローンでも航空自衛や米軍の飛行場を使用できなくすることは可能だが、それが大群でやってくる日が来ないことを祈る。

 DJI製品を排除してもフライトコントローラはDJI製である可能性が高く、もはやDJIの呪縛からは逃れられないとの見方もある。

 

あらゆる画像情報が危機に瀕している

 諸外国を見ても空間地理情報に対する明確な法規制を行なっている例はない。衛星画像に関しては地上解像度が50センチメートルのものが民間でも売買されている現状があるもののドローンのように解像度が数センチ以下の高精度の画像が無制限に

我が国政府はファーウエイやZTEの問題だけでなく、この問題に早急に答えを見つけ出さねばならない。

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