アルミトラが言った。-----お話しください、あなたの誕生について。
アルムスターファ氏が答えて言った。
私の誕生は一族の期待を一身に背負ったものだった。三代目が生まれるのだ。あらゆる事前準備がなされた。中国語名ももちろん用意された。李栄達というのが私の中国語名だ。
1963年9月6日、am02:15、バンコク中心部ミッションホスピタルに私は生まれた。その当時、バンコク市内でいわゆる「まともな病院」とはキリスト教系の病院しかなかった。私の一族は敬虔な仏教徒であるが私の生はキリストの加護の元に行われた。
生まれて3日目、母と私は退院し家に戻った。家では盛大に誕生を喜ぶ祝宴が開かれた。私には世話をする者が4人いた。二人は私をあやし寝付かせるため、一人は私の衣服を洗うため、一人は乳母として。
私の人生はあらゆることに恵まれてスタートした。生まれながらにして資産家かつ事業主。生まれながらにして社会的に高い地位にあり庶民とは一線を画した人生。誰もが羨むであろう人生が始まった。