皆様。
初めまして。
平家に遣えまする執事の神楽坂ひとしと申します。
皆様にはぼっちゃんが平素お世話になりまして感謝に絶えない次第でございます。
産まれた時からぼっちゃんのお世話をさせて頂いてるじいではございますが、幼い頃からお身体の調子の優れないぼっちゃんは病室から見える外の世界がすべてでございました。
「じい、あの蔦の一葉が落ちたら僕の命も尽きるんでしょ」
「ぼっちゃん。蔦ではなくけやきの木ですよ」
こんな会話が病室で繰り返し行われてました。
雨の日も風の日も最後の一葉を守る事にじいは必死になりました。はしごをかけ葉の根元をどうにか強く出来ないかと思案を重ねるも、瞬間接着剤ではどうにもならない事を知り、雨には傘しか太刀打ち出来ない事を知れば、夜なべで傘をさし続け、風に立ち向かうべく財力を以て防風林を作ったりもしました。
いつの間にかぼっちゃんをお守する事が葉っぱを守る事に変わって行ってしまったのです。これは必要悪でした。
そんなある日。。とうとう、最後の一葉は落ちてしまったのです。病棟の向かいには、だまし絵で誤魔化せるような壁すらありません。絶望がじいを襲いました。すると病室から
「じい!じい!」
ぼっちゃんが私を呼んでいるではないですか。ぼっちゃんを救う言葉を探しながら病室に急ぎました。言葉は見つかりません。なんと、なんとぼっちゃんに申し上げれば。。。ままよ!と、病室を開けると部屋中がプロレスラーの写真で埋め尽くされてました。
「じい!プロレスだよ!プロレス!美少年プロレスをやろうよ!」
じいが最後の一葉を守るのに夢中になっていた間に、ぼっちゃんはすっかりプロレスに夢中になっていたのでした。
ぼっちゃんは誰にも頼らず、自ら生きる希望を見いだしていたのでした。
じいの知らない間に。
今までの少年のようなぼっちゃんではなく、一人の男として決意なされたぼっちゃんがキラキラした瞳でじいを見つめておりました。
涙が頬を伝わりました。
二人抱き合い泣きました。
病室のベッドの上で。
「美少年プロレス」
これが立ち上がるまでにさほど時間はかかりませんでした。ぼっちゃんとの外出も増えました。プロレスも観に行きました。スタンリークラブで初めてのお酒も口にしました。生放送にも出演しました。後楽園遊園地にも行きました。今年の夏の想い出など筆舌に尽くし難いものばかり。
青白かったぼっちゃんのお顔がうっすら日に焼けてきたのも最近の事です。パジャマとスリッパと点滴さえなければ健康な青年と変わりません。
美少年プロレスは、じいにも希望の光と人生の喜びを与えてくれたのです。
そんなかけがえのない美少年プロレスに平家一族理事会の圧力がかかり存続の危機を迎えてのおります。平家一族は名を変え、顔を変えフリーメイソンの如く社会に溶け込んでおるのです。
ぼっちゃんの希望を笑顔を二人の想い出を潰されてたまるか!
この事態に、じいはちょいワルで取り組んで行きたいと思っております。
10月吉日
