やや間が開きましたが、3週間前の京都・大阪の旅の続きです。母と「丹後ディスカバリー」で、辻留と花梓侘のお弁当をいただきつつ向かったのは網野。同じ京都といっても、丹後に訪れるのは初めて。

途中、天橋立を眺めることもできて嬉しかった♪ 時間があれば立ち寄りたかったのですが、早くお宿でゆっくりしたかったので断念。網野からお迎えのクルマで20分ほど。途中、鳴き砂で有名な「琴引浜」も通りました。丹後でも最北にあたるこのあたりは、海もきれいなのでしょう。眼下にその海をみつつ、さあ、お宿に到着です。
 



わたしの家から6時間強の長旅です。それでもどうしてもここを訪れたかったのは、ひとえに希少な「間人(たいざ)蟹」をとことん堪能したかったから。

間人とは地名で、ここの港はたった5艘の小さな船だけがズワイ蟹の日帰り漁に出るのだそう。大きな漁港では、大型船で漁に出て数日帰ってこないこともあるのだとか。当然獲れた蟹は冷凍するか鮮度の落ちたものになってしまいます。間人蟹が幻の蟹と言われるのは、鮮度が抜群であること、そして漁獲量が少ないため関西の一部の高級店くらいにしか入荷されないからと言われています。今や間人といえば、最も高級なブランド蟹と位置づけされていると思います。

「お宿 炭平」は間人といえば必ず名のあがる宿であり、そのお値段も群をぬいています。でもそれだけのことはきっとあるはず・・・! そう期待して訪れることにしました。蟹のフルコースの中でも、せっかくだからといちばん贅沢なコースを。オーシャンビューのお部屋と、温泉も楽しみ!

お着きのお菓子は、黒豆煎餅(丹後の手前、丹波は黒大豆の名産地です)と一口ぜんざい。少し晴れかけていた海は、急に荒れ冷たい雨が降り出しました。冬の日本海は暗く、さみしげです。きれいな夕陽が見られるのは春夏くらいだそう・・・でも、その暗さがなんともいえず旅情を誘います。
 



まずは海を眺めつつ温泉。かけ流しではありませんが、気持ちのよいくせのない温泉です。浴衣に着替えて、いよいよお食事♪ 平日だったため、サービスであわびと地ワインをつけていただきました。これはネット限定のプランだそう。あわびは、好きな料理法をお願いできるので迷わず、お刺身を。
 



あっという間に、卓の上に料理が並びました。ひとり2ハイの蟹は、最上のものというだけありかなりの大きさ。豪華な刺身盛りには、初めてみる「生のカニ味噌」が・・・! ほぼ液状ですね。火を通したほうが、味に深みが出るんです。生はあっさりしています。
 



刺身のほかは、焼き蟹、しゃぶしゃぶ。お刺身ばかりだと飽きてくるので、最初に少しいただいたあとは、ほぼ焼いたり、さっとしゃぶしゃぶにしていただきます。蟹の美味しさがもっとも引き出されるのは、焼き蟹なんだなぁということも一度にこれだけ食べ比べてみてわかりました。

調味料は、刺身にしても焼くにしてもほとんど使いません。これにも驚き! だって蟹だけで充分美味しいんです。しゃぶしゃぶはぽん酢が基本ですが、仲居さんにすすめられたのが少し火を通したカニ味噌につける食べ方。とも合えのようなものですね。コクのあるカニ味噌が、カニ肉の甘く上品な味わいをさらにひきたてる素晴らしい調味料となってくれることに驚きました。
 



炭火で焼くカニの殻が、パチン、と音を立ててはぜ、香ばしく焦げるころ、皿に引き上げる。
とらえどころのないやわらかさのピンクがかった透き通る身は、すっかり白くなっている。
少し乾いたその表面をほぐすように箸を入れる。
するとたちのぼる湯気と香気! 
そして雪のように美しい、白い肌があらわれる。
その白さはすでにあった白ではなく、今生まれたての、ほかほかの白。
だから、清らかではっとするほど美しいのだろうか、と思った。


 



途中から日本酒を。
うーん、やっぱり日本酒がしっくりきます。それにしても食べても食べても蟹が減りません。
セイコ蟹は朝食用に1パイとっておくことにしました。そうそう、サービスでいただいたあわびが、また素晴らしかったのです。間違いなく、今までいただいたあわびの中ではナンバーワンでした! それにしても年配客の多いこのお宿、ほとんどのお客様が完食ならずだそう・・・蟹に溺れた夜は、こうして更けてゆきました。
 



朝食はちょっと味は濃い目ですが、品数も満足のいくものでした。そのうえ、昨日のセイコ蟹もあるのですから(笑)贅沢なこと。地元の方の手づくりだという海鮮せんべい(無添加)、例の黒豆煎餅、琴引浜の塩などしこたま買い込み、車中でいただくためにおにぎりを用意していただき宿をあとにしました。
 



宿については別にまた書きたいと思いますが、しつらえはほかの高級旅館に及ばずとも特筆すべきは人のあたたかさ。どのスタッフも非常にホスピタリティにあふれた対応が出来る点、素晴らしいと思いました。これは今まで泊まってきた名宿の数々と比べても、トップクラス。宿泊前後にも何度も丁寧にメールをくださり、また忘れ物をしたのですが迅速にお送りくださるなどフォローも万全。

オフシーズンには、1万円台で新鮮な魚介などが楽しめるそうで、遠い間人ですがわたしはぜひまたこちらには伺いたいと思っています。帰りはふたたび網野から、今度は大阪へ。
この晩は、待望のFujiya1935でのオフ! その前にホテルのスパも楽しんで、ドレスにアイロンかけてメイクもバッチリ?!・・・旅はのんびりより、めいっぱい。だって、空いてる時間があると、もったいないんだもん(笑)。