血管の状態は、全身の健康状態に影響して、血管の老化はからだの老化とも関係しています。
全身の血管の長さは10万kmありますが、老化に伴い短くなっていきます。
60歳で30~40%減少する。
血管は全身に酸素や栄養を送る動脈と、全身から老廃物を回収する静脈の二つに分かれます。
動脈は、血液を心臓から全身に行き渡らせるほどの強い圧力に耐えられるように、内膜、中膜(筋肉層)、外膜の3層構造になっています。
血液に接している内膜と、血管の硬さのもとになる筋肉層の中膜が動脈硬化に大きな影響を与えます。
血管の老化が進むかどうかは、この2層の状態にかかっています。
静脈は、筋肉層の中膜が無い2層構造です。
その代わりに逆流防止のための弁がいくつもついています。
ひざから下に、青黒い血管が浮き上がって蛇行したりコブをつくったりする下肢静脈瘤は、この弁の故障などで発症します。
静脈は中膜がないために硬化が起きません。
「静脈硬化」って聞いた事ないでしょう。
動脈の3層構造のうち、内膜は血流の圧力や異物の侵入から血管壁を守るバリアーとして重要な役割を果たしています。
内膜にある内皮細胞から放出されるNO(一酸化窒素)には動脈硬化を抑え、血管を広げる作用があります。
中膜が十分に活動すると、内皮細胞が刺激されてNO量が増えます。(適度な運動は重要ですね)
動脈硬化が進むと、さまざまな生活習慣病の引き金となり、さらに血管の病気を引き起こします。
主な血管の病気には、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤、大動脈解離、下肢動脈閉塞症などがあります。
動脈硬化が進むと全身の血流も悪くなり、肝臓や腎臓など様々な臓器での機能低下も起こります。
血管壁は年と共に、厚く硬く、もろくなっていきますが、食事や生活習慣の乱れや不健康な状態が続くと、血管の老化が急速に進みます。
高血圧や糖尿病、高脂血症などがあると、血管壁(内膜)に、小さな傷ができ、この傷口から血液中の余分なLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管壁に入り込みます。
血管壁にとって「異物の侵入」とみなされ、血液成分による免疫システムが働いて攻撃を加え、血管壁の中には攻撃による残骸(プラーク)がたまり、膨れ上がって、血管を狭くしてしまいます。
膨れ上がったプラークははじけることがあり、その傷を修復するために、血小板が集まり血液の塊の血栓をつくります。
そして更に血液の流れる部分が狭くなります。
この血栓が何重にも重なったり、別の場所でできた血栓がはがれて、血管が詰まってしまう事もあります。
心臓から出たところにある大動脈は、また違った老化が進んでいます。
主に血管がカーブした箇所では、曲がった部分に常に強い圧力がかかり続けることで血管壁が傷み、血管が膨れてコブをつくります。
これが大動脈瘤で、破裂すると急死することもあります。
また、内膜の傷から穴が開き、心臓から出たばかりの勢いのある血流が入り込んで中膜に流れ込み、中膜が解離することがあります。
これが大動脈解離です。
いずれも動脈硬化が進んだ血管に発症しやすく、自覚症状がないため突然死が起こりやすい病気です。
コブや内膜といった血管壁の異常を検査で早めに見つけることはもちろんですが、それ以前に血管を強くして予防することが大切です。
予防の基本は和食中心の食養生と栄養の受け皿、健康な小腸の腸内フローラの維持、そして不足がちな植物ミネラルの摂取、適度の運動などの生活習慣が重要です。
ラジオ大阪1314OBCドクトルかっちゃん「笑顔で元気」
井草克一&仲みゆき
放送音声 http://www.bione.co.jp/tenpo/OBC191120_Dr_K_Egao.mp3