下記は知人の佐伯さんからの情報です。

■2005年1月8日

●タケゴンの避難民キャンプ
 西アチェ県からの避難民がタケゴン(中アチェ県)に避難、ゴルカル党事務所で暮らしている。7日までの避難民数は50人で、家族がムラボーから避難してくるのを待っている。彼らは着の身着のままで、その人数も増える見込みである。食糧、毛布、サルン、医薬品を必要としている。(Puspa, 05/01/08)

●EU、世銀、アチェ復興支援金を拠出
 EUは、6億ドルを津波被災国の復興支援のために拠出することを発表。EU加盟国からの個別援助額を合計すると約20億ドルにのぼる。世界銀行は6日、2億7500万ドルの長期低利貸付をアチェ救援活動に供与することで合意。世銀はまた、アチェと北スマトラの復興支援プログラムに2500万ドルの無償援助もおこなう。アチェで家族を津波災害で失った住民の一人は、インドネシア政府が数万人のアチェ人犠牲者と引きかえに債務帳消しを求めていることについて、「アチェがインドネシアのためにどれだけ犠牲になったか想像してみてくれ。この間の債務を返済できないくせに、数万人のアチェ人の命が失われ、アチェが崩壊したことで、それが解決するなんて」 と語っている。(TEMPO Interaktif, 05/01/06)

●HRW、ユドヨノ大統領に声明
 国際人権監視団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は6日、ユドヨノ大統領にあてて、アチェ・北スマトラ津波災害に関わる憂慮と提言を表明した。書簡のなかでHRWは、ユドヨノ大統領が積極的に国際的支援会議を召集し、アチェ支援の必要性を訴えたことを評価、また遺体収容作業などにおける国軍の貢献も一定評価している。しかし、国軍統治下にあるアチェの現状も厳しく見据え、迅速で確実な救援活動のため、国内外の政府・民間団体の自由な活動を保障することと、国軍とGAMの即時停戦を求めている。
1. アチェへのアクセス制限を解除せよ
 国連、国際機関、NGO、ジャーナリスト、外国人の入域を不必要に制限した
2003年大統領令第43号が現行でまだ効力があるのか明確にしてほしい。それがまだ有効であるならば、すぐにこれを廃棄すること。制限のない自由なアクセスがいまこそ必要である。入域許可、また、初期の混乱期後もアチェに残るための手続きに要する、時間のかかる官僚的プロセスは廃止すべきだ。
2. 可能な限り完全な情報を提供せよ
 アチェを孤立させる従前の政策が、津波災害の被害規模の査定と迅速な対応への障害となった。したがって、悪いニュースを隠すためにアクセスを制限してはならない。アクセスの制限は物理的危険性のあるときのみに限るべきだ。インドネシア社会はアチェの軍事作戦について可能なかぎり知らされるべきだ。
3. アチェの非常事態をすみやかに解除せよ
 津波災害の前まで、アチェは自由アチェ運動(GAM)と国軍が戦闘状態にあったため、非常事態宣言下に置かれていた。表現の自由、集会、移動、情報が制限され
る非常事態宣言を解除することを求める。
4. 救援活動の中心を国軍から政府・民間機関に移行せよ
 救援活動のロジスティックにおいて、国軍は不可欠な役割を果たしているが、これらの任務を適切な政府機関、経験豊富でプロフェッショナルな国内外の援助機関にできるだけ早く委ねることが重要である。これら文民機関が国軍のエスコートやプレゼンスがなくしても救援物資を被災者に直接届けられるようになるべきだ。国軍は、道路修復などの災害復旧活動に集中するべきだ。このような任務は援助機関では担えないことだ。
5. 国軍は援助機関の活動を妨害してはならない
 援助機関が国軍から圧力を受けた、援助物資を軍に引き渡さなければならなかったという報告がある。このような行為を取り締まる指示が公に発せられることを求める。また、国軍の一部はGAMの支援者と疑った人びとに救援物資を配給しないなど、公平な人道支援をしていないという報告もある。
6. 国軍、GAMともに戦闘をやめ、支援をすべての被災地に確実に届けよ
 アチェが前例のない危機に見舞われたにもかかわらず、東アチェで軍とGAMの間に戦火が交わされ死者が出たと報告されている。戦闘継続は、復興活動を不可能にするとは言わずとも、困難にする。わたしたちは大統領とGAM双方に、国際人権法に基づく義務のなかで、すべての被災地に支援が届くことを確実にするためのあらゆる方策を講じることを求める。
7. 国会議員による救援物資配給を監視するチームの設置を歓迎する
 わたしたちは、国会が12人の議員から成るチームを結成し、アチェと北スマトラの津波被災地での人道支援活動を監視する任務を与えたことを歓迎する。アチェは長い間、援助が汚職の巣窟になってきたという歴史がある。透明で責任性のある文民監視は、国際ドナーから表明された何十億ドルにのぼる支援を確実に被災者に届けるため非常に重要である。(HRW, 05/01/06)

●人権団体「国軍が救援活動を妨害」
 バンコクを本拠地とする人権擁護団体「人権と開発のためのアジア・フォーラム(FORUM-ASIA)」は5日、アチェにおける軍事支配が救援活動を妨害していることを憂慮し、声明を発表した。声明は以下のとおり。
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 地震と津波による災害から1週間たったアチェには、インドネシア市民・政府機関および国際救援組織から大量の援助物資が送られている。しかし、溢れる援助物資は20万人にのぼるバンダアチェの被災者および北スマトラの他地域の被災者に届いていない。
 FORUM-ASIAは、アチェで活動するメンバーやパートナーたちから受けた以下の情報に憂慮している。
・地元NGOは、生存者や犠牲者の家族への援助物資配給に参加することを許されていない。
・人道支援物資はバンダアチェとメダンの空港に山積みにされており、効果的に配給されていない。
・生存者たちは国軍が指揮する配給センターに列をなしているが、身分証明書をもたないものたちは配給品を得ることができないだけでなく、罵倒されたり、殴られたりすることもある。遠隔地ほど、このようなことが起こりやすくなっていると思われる。
・配給センターの外のブラック・マーケットで食糧が売られている。
FORUM-ASIAの調べでは、バンダアチェ空港の外で、インスタント・ヌードルが一袋500ルピアで売られていた。
・生存者は現在、致命的な病気、飢餓、心理的トラウマに脅かされている。被災者の多くは女性や子どもで、肺の感染症、マラリア、下痢に罹りやすい。「国境なき医師団(MSF)」がアチェでクリニックを開設することが許されているとはいえ、機能している唯一の病院は国軍により運営されている。FORUM-ASIAは、ロスマウェの域内避難民キャンプの情報も得たが、そこではいまだに医師が一人もおらず、医療スタッフと医薬品が緊急に必要とされている。
 このような状況にありながら、インドネシア国軍は救援活動にさくべき資源やエネルギーを自由アチェ運動(GAM)の掃討に費やし、2004年12月26日にGAMから提案された休戦を拒否している。北アチェと東アチェで国軍とGAMの交戦があったことが報告されている。大災害があった直後にこのような攻勢に出るインドネシア国軍の行為は残忍で非人道的である。
 FORUM-ASIAはインドネシア政府に以下を要請する。
・市民社会ボランティアが救援活動をおこなえるように、また、バイアスや差別なくすべての被災地域に緊急支援が届くように、援助物資配給の詳細なプロセスを明確にし、救援活動に携わる兵士のため行動規範をつくること。
・援助物資配給を悪用しているという訴えの真相を調査すること。
・被害状況の正確な把握をおこない、被災地で必要とされる援助のレベルを測ること。そしてこのような情報の内訳を公表すること。
 紛争当事者たちに懇願する。
・ただちに休戦協定に合意し、実行に移すこと。
・インドネシア政府は、非常事態を解除し、軍隊は人道支援の役割のみをアチェで担うこと。(Laksamana.Net, 05/01/06)