典型的なパターン通りに話が進まない場合、詐欺ではないと言えるかというと、そうではありません。

 

典型的なパターンとは:

1) 休暇・退役・激戦地での任務短縮などの嘆願申請

軍人や国連職員、ジャーナリストや医師などを名乗る人物が「休暇や退役・退職、激戦地での任務の短縮」を本部に嘆願してほしいと言って来て、それに応じると上官や国連事務局などを名乗る人物から申請料・交通費・入れ替え要員の費用などとしてお金が請求される。

 

2) 戦場や出張先、第三国からの荷物 

戦地や出張先、もしくは貸金庫のある第三国などから貴重品の入った荷物を相手が送ると言ってくる。引き受けると、荷物は大金や高価なものが入っていたために税金・手数料・保険料・保管料・罰金・運び屋の保釈金などとして次々とお金が請求される。

 

3) 子供や老親の病気

相手の子供か老親(または親代わりの親族)が病気か事故で緊急の手当てや手術が必要。しかし、相手は戦地や出張先で送金ができないので子供や親の命を助けるために病院や乳母などに送金してほしいと泣きながら頼んでくる。

 

これらの手口に遭遇すると『おかしい』と直感で気づいて、助かるというケースが少なくありません。この『おかしい』と思ったときにネットで調べると、それが国際ロマンス詐欺の典型的なパターンだとわかるということが少なくない。

 

詐欺団はこれらの手口がネットの至る所で注意喚起されている、典型的なものだということは認識しているでしょう。しかし同じパターンを続けるのは、成功率が高いからです。1)の場合、普通なら公務員でも私企業でも家族の成員が休暇や退役の申請などするはずがないです。しかし、軍とか戦地とか特殊任務だからというと、被害者は容易に信じてしまう。 2)の場合、請求してくるのが偽税関や偽配送会社であり、第三者からの請求は不可抗力に感じる被害者もいるでしょう。この二つの手口は圧倒的に送金に至る可能性が高いのです。3)は感情に訴えるものです。もし送金しなかったら、(架空の)子供や老親が死んでしまったら、どうしようと被害者は悩む。子供と電話かメールでやり取りしているかもしれない。あの子が死んでしまったらと考えると、結局送金に至ってしまうかもしれない。


 

『怪しい』と直感で感じて、検索かけたら国際ロマンス詐欺撲滅協会のフェースブックページが見つかり、自分の相手の写真はページになかったもののよく似たパターンの展開が複数報告されている。

 

しかしながら、『やっぱり詐欺だったのか』と思った直後に、意外な展開が起きたら、被害者の心がぐらついてくる。

 

例えばです。実際にあったケースですが、2)のパターンで「荷物をアフガニスタンから送る」と相手に言われていた。そして、偽配送会社から法外な手数料を請求された。ここまでは典型的パターン。

 

普通はここで被害者が詐欺師メインキャラに「配送会社からお金を請求された」と相談すると「戦地にいるから僕は手数料を払えない。箱の中に大金が入っていて君が自由にしていいから、立て替えてほしい」と言ってきます。

 

しかしその方のケースの場合、詐欺師がその最初の送金要求となるはずの『税関で引っかかった荷物の手数料を配送会社に支払う』という筋書きを自ら否定します。『僕が手数料をすでに払っているから、君が払うはずがない』と送金要求を取り消し。

 

荷物が税関で引っかかったというところで「詐欺だ!」とせっかく気づいたのに、この送金要求が否定されることで被害者の方の決意はぐらつく。「典型パターンじゃないんだ、希望は持てるかしら」ということになる。

 

しかしながら、この最初の送金要求を自ら否定するのは、『自分は詐欺師ではない』ということを被害者にインプットする目的があるかと思われます。

 

戦地や出張先から荷物を送るという話が出たら、その後送金要求が否定されても詐欺のパターンであることは変わりがありません。

 

あとで送金要求の否定が起きても、このパターンを継承していれば明らかに詐欺です。

 

そして、あまり報告されていない筋書きが登場したとしても、会ったことのない相手からお金を求められたら、それは詐欺だと判断してよいでしょう。