はやみねかおるさん れびゅー

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小学生の頃の同級生で、文章を書かせたら
大人の賞賛を得ることができるものが書けるらしい
女の子がおりまして、いつもいつも賞状をもらっていました。
しかし、私は彼女の人間性が嫌いでありました。
彼女は心にもない言葉遊びが上手いだけだと思っていました。
当時彼女がどんな文章を書いていたのか
できることなら今読み返してみたいものですね。
(私が当時書いていた文章はもちろん文集として
手元にございまして、それはそれは
読み返すのに堪えない文章でございます。
びりたん&まりもんたんに見つかったら
そりゃー、大騒ぎですので隠しております)

ちなみに、今、私が彼女と再会したら
今でも嫌な奴と感じるかは微妙な予感です。
お互いに懐かしく笑いあえる気もします。
人は変わりますから。

読んだことはありませんが「人生に必要な知恵は
すべて幼稚園の砂場で学んだ 」というタイトルの
本があったはずです。
私は子供時代の自分の体験がベースだとは感じますが
小説を読むときは作品だけでなく、その作品を書いた人の
人となりを調べた上で判断する派となりました。
「走れメロス」なんて、な~にが友情を大切にしようと
思いましただって?
元になったエピソードを知った上で
感想文書けよ!!と声を大にして訴えたい派です。

ワイドショーなんかで近所の方へのインタビューと称して
「あんな人と思いませんでした」とか
「真面目そうな方と思っていたのですけど」みたいな
モザイク入りの談話を耳にすることがあります。
事件前は真面目そうな良さそうな人評価。
事件後は真面目そうに見えたけど実は非人間でした評価。
深く知らない人に対して安易な印象を述べるなんて
はっきり言って、フェアではないと私は思います。
インタビューの冒頭で「私の人を見る目が節穴だったこともありますが」という
謙虚な前置きの言葉がないのが私には不思議でなりません。

えー、ということで
等身大のはやみねさんについてまずは調べてみました。

はやみねかおるさん現在(2015年)50歳。
元小学校教師(大卒から14年間)。
健康を害したこともきっかけで、
二足草鞋をやめて専業作家となられたらしい。

http://isenphon.exblog.jp/21589973
●お話から想像するに江戸川乱歩さん、アガサ・クリスティさん、
コナン・ドイルさん、エラリー・クイーンさん、、、
これらの作家を現代の小学生向けに
噛み砕いて読み聞かせをさせたら上手そう?
(逆に言うと噛み砕いての読み聞かせが必要な読みにくい
文章を書いた昔の文豪って。。。)

 

●読書家ではあるらしい。
(ご自身の著作も本棚に多数並んでいるみたい)
●背表紙から判断するに推理小説系が結構多そう。
●手品にも詳しいらしい。

https://www.mitsumura-tosho.co.jp/monthly/backnumber/200809/
村上龍さんの「69」という小説みたいですね。

 

 
 
http://blog.livedoor.jp/turezuretosa/archives/1867666.html
作者の経験から発せられる言葉が聞きたいので
「ぼくらの先生!」を読んでみようと思いました。

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講談社青い鳥文庫巻末に掲載されている
著者の著作リストだけでも81冊はあり、多作と言えそうです。
何を読むべきかググって、まずは「そして五人がいなくなる」(1994)を
読んでみることに決めました。
著者30才の時の作品ですか。

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「そして五人がいなくなる」
<あらすじなど>

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<4月1日 エイプリルフール>
●自分で名探偵と名乗る夢水清志郎さんが「わたしたち」の町に越してきた。
「わたし」と「わたしたち」という表記が混在する怪しい語り口。

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<4月2日 夢水清志郎調査報告書 その1>
●調査員の「わたし」は玄関できちんと靴を揃えて脱ぎ夢水邸に上がり込む。
●本好きの「わたし」は夢水さんの本棚の膨大なリストに目が行く。
ラング線形代数学、ルポールのカードマジック、手塚治虫の火の鳥12冊、
直感幾何学、記号論理学…など。
●「わたし」は左手で手帳を持ち、右手で筆記。

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<4月3日 夢水清志郎調査報告書 その2>
●調査員の「わたし」は勢いよく靴を脱ぎ散らかし夢水邸に上がり込む。
●「家庭でわかる病気の本」を本棚から取ってくれと
夢水さんに頼まれるが「わたし」は目が悪く
本棚に近づかないと背表紙が読めない。
●本ばかりの部屋なので「わたし」には退屈。

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<4月4日 夢水清志郎調査報告書 その3>
●調査員の「わたし」は玄関できちんと靴を揃えて脱ぎ夢水邸に上がり込む。
●「わたし」は右手で手帳を持ち、左手で筆記。
●「わたし」は本嫌いだからと夢水さんからの本の貸し出しの申し出を断る。

●1~3の調査報告書を読んで「わたしたち」は結論を出した。
「夢水清志郎は名探偵とは思えない」と。

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<4月5日 夢水清志郎調査結果報告>
●調査員の「わたし」は玄関できちんと靴を揃えて脱ぎ夢水邸に上がり込む。
●小栗虫太郎さんの「完全犯罪」みたいにマニアックな本があるぐらいだから
夢水さんは古本屋だったのでは?と「わたし」は聞いてみた。

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<4月5日 夢水清志郎さんの推理披露>
●語り手は「わたし」で同一人物と思わせておいて、
実は親も見間違うほどよく似た岩崎三姉妹。
4月3日に訪ねて来た「わたし」は本好きで右利きの長女亜衣ちゃん。
4月4日に訪ねて来た「わたし」は視力が悪い次女真衣ちゃん。
4月5日に訪ねて来た「わたし」はサウスポーの三女美衣ちゃん。
「夢水清志郎は名探偵とは思えない」と3日間で
結論を出したから三姉妹以上は存在しない。

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<8月1日>
●岩崎三姉妹に無理やり遊園地に連れ出された夢水清志郎さんは
事件に遭遇する。
●マジックショーにて銀色の目をした「伯爵」が3本のロープで
宙に釣った箱の中に入った天才ピアニスト大野みさちゃん9歳を消す。
人間消失マジックが終わっても大野みさちゃんは行方不明のまま。
木箱は燃え落ち、伯爵の笑い声と共に、ロープは舞台上に引き上げられ、
伯爵も消えていた。
●大野みさちゃんは元旦の新聞に天才少年少女として掲載されていた。
ピアノは3歳から始め、毎日の練習は6時間。
夢は世界一のピアニストになることで、
今一番したいことは「友達との長電話」。
●伯爵の犯行予告通りに、
他に記事で紹介されていた、体操界のホープ高橋真一くん11歳、
特撮映画に使われるようなリアルマスク制作などが
出来るちびっ子職人加藤和夫くん11歳、
将棋天才少女棋士鈴木智子ちゃん8歳、が次々消えることとなる。
●夢水清志郎さんは警視総監の口利きがあったようで、
捜査に上越警部、遊園地のオーナー小村英二郎さんの
協力を得られることとなる。

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<8月2日>
●大野みさちゃんのお母さんはみさちゃんが消えたことよりも
次のコンクールに出場できず、努力が無駄になることが
一番腹立たしい模様。
●大野みさちゃんのピアノの先生がみさちゃんは
家に帰っても幸せではないと夢水さんに打ち明ける。
●体操の練習、将棋の勉強に明け暮れ、
普通の子供らしい遊びをしていない、高橋、
加藤、鈴木の3人が前から楽しみにしていた
計画を実現させてあげたいという上越警部の
取り計らいで、伯爵の犯行予告にも関わらず、
3人は内密の尾行付きで遊園地に遊びで現れる。
●高橋君は亜衣ちゃんが一緒に乗っていたジェットコースターで消える。
●加藤君は真衣ちゃんが一緒に入ったミラーハウスで消える。
●鈴木さんは小村さんと美衣ちゃんが見張っていた蝋人形館で消える。

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<8月3日>
●遊園地のカーニバルのステージで犯行予告通り最後の消失者が出る。
岩崎三姉妹と夢水名探偵と上越警部と小村英二郎さんが
見守る中で消えたのは伯爵自身だった。

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<8月某日>
●飽きっぽい世間の人たちはこの不思議な事件のことを次第に忘れていった。
●大野みさちゃんのお母さんは「コンクールなんかもうどうでも良いから
とにかく早く帰って来て」というようになっていた。

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<8月30日>
●夢水さんの予言通り、子供たちが突如家に帰って来た。
●口裏を合わせたかのように「誰もいない遊園地でずっと遊んでいたの」と
しか皆、語らなかった。

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<8月31日 夏休み最後の日に関係者を招いての種明かし>
●岩崎三姉妹、上越警部、小村英二郎さん、関係者を招いての
夢水さんの種明かし。
●大野みさちゃんが箱から消えたトリックは
1865年ロンドンで初披露された消失マジック「スフィンクス」を
使った応用編。
宙から釣ったロープの間にミラーが貼ってあったとのこと。
3本のロープの間に上部に脱出する梯子付きの抜け道が存在するのを
カモフラージュする為の天地逆バージョンの「スフィンクス」がトリックであると。
大野みさちゃんの協力があってこそ成り立ったマジックとのこと。
●高橋君がジェットコースターから消えたトリックは
記述するとややこしいので略。
●加藤君がミラーハウスで消えたトリックも
高橋君と加藤君の協力があってこそ成り立ったもの。
トイレで加藤君は、加藤君と同じ服を着て、
加藤君が作った加藤君そっくりのリアルマスクを
被った高橋君と入れ替わった。
真衣ちゃんは男性トイレに入れないし、
いかつい顔をした警官は怪しいので
トイレまでは尾行しなかったので誰も高橋君と加藤君が
トイレで入れ替わったことに気付けなかった。
ミラーハウスに加藤君になりすまして入った高橋君は
ミラーハウス内で服を脱いでリアルマスクを外す。
出口を見張る係員も警察官も加藤君の服と
顔に注意しているので高橋君が出てきても気付かない。
●鈴木さんが蝋人形館で消えたトリックは、そもそも
鈴木さんは蝋人形館に入らなかったから。
雑踏でみんなが見失った鈴木さんが蝋人形館に入ったと
小村さんが嘘をついただけ。
館内の様子が手に取るように分かるからと
美衣ちゃんと蝋人形館の係員を外に待たせてひとりで蝋人形館内に入り、
小村さんは子供の蝋人形に加藤君作の鈴木さんそっくりの
リアルマスクを被せて階上の窓から外を覗かせた。
これで美衣ちゃんと係員は鈴木さんは間違いなく
蝋人形館に入ったものと思いこんでしまった。
で、蝋人形館から出て来た小村さんが
鈴木さんは中に居なかったと法螺をふけば
消失マジックの出来上がり。
●蝋人形館で鈴木さんを尾行していた時、
偽物の小村さんは右手に腕時計をしていた。
伯爵自身の消失マジックを我々と一緒に
見ていた日の本物の小村さんは左手に腕時計をしていた。
伯爵の正体は遊園地のオーナー英二郎さんの双子の兄、
英一郎さんだ。
●伯爵英一郎さんの動機は大きくふたつ。
ひとつは新聞記事が元で同じような不幸な境遇の為、仲良くなった
4人の子供たちに「普通の子供のような夏休み」を取りたいとの相談を
受けたこと。
もうひとつは事件が目玉となって遊園地に野次馬が多数押しかけることで
弟の事業の応援をしてあげることができること。

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<エピローグ>
上越警部も主犯が4人の子供たち自身であることを見抜いていた。
犯人を逮捕したとしても解決しない事件があることを学んだ警部が
夢水さんに持ちかける。
「今度、また妙な事件が起こったら一緒にやってくれるかな?」
岩崎三姉妹が代わりに「喜んで!」と答えて警部に抱き付いた。
大野みさちゃんはカマリナ・コンクールで優秀賞を受賞しました。

<あとがき>
作者の好きな推理小説の基準
1)名探偵が出てくること
2)不思議な謎がでてくること
3)本格の二文字がついていること
4)ハッピーエンドであること

スペシャルサンクス:
教師の仕事が忙しい僕を忍耐強く待ってくれる講談社様
学校関係者、教え子様
波乱万丈だった僕の20代様。

グッド・ナイト・アンド・ハブ・ア・ナイス・ドリーム

蝋人形館のシーンではマイケル・ジャクソン、
マドンナ、モーツァルト、ガンマン姿のスティーヴ・マックイーン、
R2ーD2などが出てきますし、
はやみねかおるさんのこの「あとがき」のお約束のセリフは
ビートルズの「グッド・ナイト」を意識していたりして?

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続いて2冊目です。
「ぼくらの先生!」(2008年)。
こちらも「はやみねかおる」名義です。
<あらすじなど>

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定年退職した元小学校教員とその妻の物語。
仕事一途で現役の頃は家庭に仕事の話題を持ち込まなかった夫が
教員時代の謎事件を懐かし気に語り、名探偵の妻が解き明かすという
連作短編のような形式になっています。

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1)消えた靴
小学2年生担当時、圭子ちゃんの靴が頻繁に盗まれた。
ベテランの教師に言われた。「教師は刑事ではない」と。
しかし心当たりとして圭子ちゃんの靴を羨ましがっていた
徹子ちゃんの顔が浮かんでしまった自分がいた。
当時、30歳を過ぎてはいたが教師としては未熟であった。
犯人は圭子ちゃんが公園で家族にも内緒で飼って
可愛がっていた犬だった。
寂しくなった犬が圭子ちゃんのにおいを求めて学校まで行って
咥えて持ち出していたものだった。
ボロボロにかじられた靴のことを怒られること&
犬が始末されてしまうことを恐れて、靴泥棒の正体が犬であることを
圭子ちゃんは誰にも話せなかった。
そして、そのせいで結果的にクラスメイトに疑われている
徹子ちゃんの潔白を立証してあげられないことを
心苦しく思っていた。

歳月は流れ、今は母となり、
犬が家で飼えるようになった圭子ちゃんから年賀状が来た。
家族と共に写った大きな白い犬の名前は「シロ五世」。

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2)すいか泥棒と花火

すいか泥棒をして、花火をして騒いでいる悪ガキと思ったら、
実は畑を見張って、スイカ泥棒の猿をロケット花火で追い払う
子供たちであった。
先生に見つかって誤解され、怒られて、追いかけられて
何も悪いことはしていないのに、いたずらっ子の
習性で「やばい」と逃げてしまっただけであった。

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3)先生にはみえないこと

小学4年の元教え子の和郎と美優が結婚しますと報告に来てくれた。
しかし、二人はいじめっ子といじめられっ子のような
関係であり、好きな子を、好きだからこそいじめてしまうというレベルを
越えた部分もあったので、不思議に思った。

クラスのみんなで裏山にキャンプに行った時のこと。
目的地の渓流で美優の泣き声がしたので
見たら、和郎がバケツに川の水を汲んで美優の頭からぶっかけた。
美優はびっくりしたのか泣きじゃくるばかり。
だが和郎はどうして急に美優にそんな意地悪をしたのか
その理由を叱っても話さなかった。

私は「人の嫌がることをしてはいけない」と教え、
隣のクラス担任は「トイレ掃除など人の
嫌がることを率先してする人間になれ」と教えている。
和郎はその大人の矛盾を突っ込んでくるような
扱いにくい子供でもあった。

名探偵妻の推理:
美優ちゃんの泣き声は和郎君が水をかける前に
聞えたのですよね?
美優ちゃんがおもらしをしてしまったのに気付いた
和郎君が機転を利かして水をぶっかけてあげたんですよ。
意地悪をしたと見せかけて。
内気な美優ちゃんはトイレに行きたいなんて言えませんから。
どうして誰よりも早く美優ちゃんがおしっこをもらしたことに
和郎君が気付いたのか、それが二人が結婚した理由ですよ。

4)肝試しの夜

手が入らない賽銭箱からコインを抜き出す際には
カブトムシが使えるらしい。
カブトムシを紐で吊るして垂らすと捕まるところが
何もないカブトムシはコインに抱き付いてしまう
というトリックらしい。

5)給食、好きですか

小学6年生、天邪鬼という評価をクラスメートから受けていた
樹奈さんの物語。

セレクト給食というものがかつて存在した。
デザートがプリンもしくはゼリーなど選べた。
しかしクラス30人中、プリン15、ゼリー15と
割り当てがあり、ゼリーはあまり美味しくなくて不人気で
希望者の調整で気苦労が多かった。
そんな時、樹奈さんの「学校のゼリーは一味違う。
大人の味だ」発言がきっかけで
ゼリー希望者が増えてプリン派との
釣り合いが取れて教師としては助かった。

その後、セレクト給食は子供の希望を聞いてからの
予約方式となり、食べ物の怨みによるごたごたは
なくなった。

教育テレビの道徳番組を見せた時のこと。
公園のお地蔵様に週一回ボランティアでお供えをして
掃除しているおばあさんが怒っている映像が流れた。
「近頃の子供たちはお供え物を盗むし
罰当たりにもお地蔵様にはこんな濡れて汚れたスーパーのビニール袋を
かぶせるような悪戯をするし」。
樹奈は「罰が当たるのはおばあさんの方です」と
意見を言ってクラスは騒然となった。
樹奈に賛同者はいなくて、樹奈は悲しそうにほほ笑むだけで
その根拠を説明しなかった。

樹奈が給食当番の時は、男子がどれだけ大盛りに
ついでくれと頼んでも、小食な女子がどれだけ
おかずを減らしてと頼んでも公平に盛り付けた。
しかし教師である私のおかずはいつも少なく盛り付けた。
樹奈さんとは最後まで分かり合えなかった。

お腹が出てきて私は新しいスーツを新調した。
自分なりにデザインの良い物を選んだつもりだったが
樹奈には「似合わない」の一言で切り捨てられた。

名探偵妻の推理:
地蔵にスーパーの袋を被せたのは雨に打たれている
地蔵様を可愛そうに思った子供が「かさこじぞう」さんみたいに
頭に「傘」をかぶせてあげた意味なんです。
子供たちはお供え物を盗んだのではなくて、
一週間も放置されていて、雨に濡れ、野良犬に食い荒らされた
『ゴミ』を片づけてあげたんです。
良かれと思ってやったこととは言え、
おばあさんの方こそ、餌をまいて一週間も放置して
野犬をおびき寄せている悪人という見方も成り立ちます。
樹奈さんがゼリーが美味しいと言い張ったのも
あなたを気遣ってのこと。
給食のおかずを少なくしか盛り付けてくれない
意地悪もあなたのウエストサイズを心配してくれたからこそ。
新調したスーツを似合わないと一刀両断したのも
もっともっと痩せて健康的になれという配慮でしょう。

ひと月前に樹奈から届いていた顔文字入りの同窓会のはがきを
私は思いだした。

当時六年生だった私達も30歳を超えました。
先生はもうお爺さんですね。(/ω\)へへっ♪
今度同窓会を企画しました。
久し振りに私たちの顔を見て懐かしいあの頃を
思い出しませんか?
是非来て下さい。m(゚▽゚* )ぱん&ぱん。

上手く行っていなかった樹奈からの招待ということで
ためらっていたが出席することにした。
妻には行き先を教えていないが、
どうも御見通しのようだ。
結局は妻同伴で出席してみた。
樹奈からは当時、私のことをどう
思っていらっしゃいましたか?と丁寧な言葉で聞かれた。
妻の推理を聞く前の私だったら、「先生のこと嫌っていただろ?」と
答えていたところだった。
全て妻の話の受け売りだが、かつての教え子たちに
感謝を述べ、詫びることが出来た。

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<恒例の作者あとがき>
●第一話から一冊の小説になるまでに10年以上かかりました。
●教師時代の経験、聞いた話、考えたことから、この小説は生まれました。
●「消えた靴」はどの学校でも起こる靴隠し。
●「スイカ泥棒と花火」は自分の常識がいかに非常識であるかと
いうことの教訓から生まれたもの。
●「先生には見えないこと」⇦教え子から結婚、就職、離婚、
出産、色々な報告をもらうようになりました。
昔は想像だにしなかったことです。


●リアル奥さんから、今あなたがまだ教職だったら
モンスターペアレントと喧嘩して大騒ぎになるのが
見えますと言われました。

●スペシャルサンクス:
講談社担当者様
二人の息子様
教師を辞める時に心配してくれたリアル奥さん様
たくさんの教え子様
14年間の僕の教師生活様

●教師時代の後悔と愚痴のオンパレードに
なる気がしていたがならなかった。
14年間の教師生活は後悔よりも喜びの方が
大きかったみたい。
●グッド・ナイト、アンド・ハブ・ア・ナイス・ドリーム。

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さてさて、わたしびりーの簡単な感想を書きます。
まずは
「そして五人がいなくなる」についてです。
タイトルはアガサ・クリスティーさんの
「そして誰もいなくなった」へのオマージュでしょうか。
明智少年探偵団の現代版焼き直しのように思えます。
とても読みやすい丁寧な文章が印象的ですので
焼き直す意義はあったと思います。
また、日本の作家様ですので、文化の違い等も無いので
海外の小説より読みやすいということも言えると感じます。

こちらのサイト様で4人の天才児達が夏休みを
欲しがった動機について、不自然と突っ込まれて
おられますが、まあ確かにそうは思えますね。
しかし不自然でない動機を考えて、細部に至るまで
リアリズムを徹底したら、それはもう
子供向けのファンタジーではなくなってしまうでしょう。
作家の菊池寛さんが「人生を銀のピンセットで弄んでゐるようだ」と
芥川龍之介さんの作風を評しています。
実に上手い表現だと思います。
一般的に推理小説、ミステリーを書く小説家は
銀のピンセットで謎解きゲームの登場人物という駒を
弄んでいるように私には思えます。
殺人というのは謎解きゲームの為の
『設定』に過ぎず、そこに描かれる人の死は
リアルさを持たない『記号みたいな死』です。
「そして五人がいなくなる」は推理小説、
ミステリーの古典に対するオマージュで書かれた作品です。
だからリアルさに欠けているのは仕様なので
作品の設定のアラを探して突っ込むのは
あまり意味が無いかなと個人的には思っております。



 
 

 

「右手の腕時計を見た」と書かれていたら
「右手」のところを蛍光ペンでチェック!
みたいな読み方をしないと見落としてしまいますね。
キャメラの位置を固定せよとか、伏線を小出しにしておけとか
小説の書き方の基本に忠実な印象を受けます。
はやみねかおるさんの小説が好きな方には
是非とも山田悠介さんの「リアル鬼ごっこ」
(校正前の事故出版バージョン)を読んで欲しいものですね♪
読めば分かります。
はやみねかおるさんが基本なら山田悠介さんの
デビュー作はいわゆる「迷人に定跡無し」というやつですから。

続いて「ぼくらの先生!」について。

カート・ヴォネガットさんは自分にとって最も
切実だった戦争体験、広島長崎みたいな光景
を主題に「スローターハウス5」という小説を
書き上げるのに23年間かかったそうです。
23年間、納得のいくものが書けなかったということです。
恐らくは井伏鱒二さんの「黒い雨」みたいに
見たままをリアリズムで書いて、
広島長崎みたいな月面のような光景を見たことがない
読者に向かって違う惑星の物語でもしているかのような
気分だったのだと想像されます。



社に戻ると女性記者が、個人的な興味なのだろう、
押し潰された男はどんな風に押し潰されていたのかと聞いてきた。
私は説明した。
「気持ち悪かったでしょう?」と彼女は言った。
私は答えた。「いや、ナンシー、じぇんじぇん。
戦争中もっと凄いのを見たからね」





はやみねかおるさんは「ぼくらの先生!」を
書き終えるのに10年以上かかったとのこと。
「伊代はまだ16だから
センチメンタルジャーニー~♪」
と歌った
16歳にして人生を達観した早熟の伊代さんと違って
人生をセンチメンタルに振り返り、客観性を持つのに
歳月の流れが必要だったのでしょうか?

ストレートにリアリズムを語らない棋風の、はやみねさんの
ようですが、教員時代の体験談は山田詠美さんの
「ひざまずいて足をお舐め」程度のリアリズムっぽいバージョンで
読んでみたいというのが本音です。

 

山田詠美さんのSMクラブ勤務体験をベースに書かれたらしい
「ひざまずいて足をお舐め」は誰かに貸し出したままらしく、本棚を探しても
ありませんでした。

まりもんたん「きと、ジャイアンですよ。
ジャイアンに貸したですよ。
ジャイアンに取られたですよ。
もう返って来ませんよ。
俺の物は俺の物。びりさんのものも俺の物って
ジャイアニズムですよ」

おしまい。