「世界が変わってどうおもいますか?」
出だしの言葉に意味が不明と思いながらも結樹は次の文章を読む事にした。
「望む結果になりましたか?」
望む結果になった?世界が変わった?その言葉の意味を結樹は到底出来ないながらもその「魔王」という名の送信者にまるで操られるかのように無意識のうちにメールの返信を書いたのだ。
「望む結果?今のこの現実が?まったく意味が分からないです?友人の死をどう受け入れていいか分かりません。」
書いて送信してから結樹は自分がどうしてこんな文章を送ったか少し理解出来ないでいたが頭の中ではやはり磯谷の死を受け入れたくない概念もあった。
だが、見ず知らずの「魔王」というハンドルネームの人間に送った事に自分は操られているような感覚になっていた。
メールの返信はすぐに返ってきた。
メールの内容を結樹はすぐに開いて見た。
「望んだ事が現実となって世界が織り直されたという事です、あなたが望んだ事が現実に叶ったという事ですよ。私はあなたの言うとおりに世界を織り直したという事ですよ。」
送られたメールを読み終えた結樹はいつのまにか頭を押さえ、忘れた何かを思い出そうとしていたが何故かその部分が欠落しているように思い出せなかった。
思い出せなくてもいつのまにか手はキーボードを押しながら返信文を書いていた。
「織り直すとはどういう意味ですか?もし、それが本当ならまた織り直せるという事は可能なのでしょうか?」
返信文を書き終えた結樹はそれを送信していた。
結樹は送信を終えて自分がこの瞬間に何故にこんな事をしているか改めて不思議に思ったのだった、インターネット上の「魔王」と呼ばれる者に何かの願いをしている自分が藁にもすがるように情けないとまで思うのであった。
磯谷の死を否定したいからメールを返信したのか?それともこの「魔王」が自分を操っているのか?その不思議を納得出来ないままも結樹にはこの「魔王」とメールのやり取りを辞めようとする意志はそこにはなかった。
数秒後の内に魔王から再びメールが送られてきた。
「織り直すとはあなたが成りたい事をするために世界を変化させる事です、可能か不可能かという答えには当然ながら可能という答えです。ただ、全てが可能というわけでもなく変わった世界はあなたが本当に望んだ世界かはあなたが判断するので現時点ではこうお答えするしかありません。」
メールを読み終えた結樹はこの「魔王」と名乗る者が単にふざけたような中身のメールであったが結樹の目には強く信憑性のあるものに見えたのだった。
「なら、お願いです。僕が望むように織り直していただけますか?」
すぐに結樹は「魔王」にメールを送信した。
送ってからすぐにメールは返信され、結樹は当たり前のようにそのメールの中身を読んだ。
「分かりました、あなたが望んでいる事をメールとして送信していただけますか?ただ、叶えられるか叶えられないかは送られたメールの内容にもよりますが出来るだけご要望には答える様にします。」
第三者から見るならば送られたメールの内容は明らかに詐欺に見えるメールであったが結樹は信用するかのようにどういう願いを頼むかを考えた。
磯谷和則の死を無かったことにしたい、そう願っていいものなのだろうか?死人が蘇える?まるでドラゴンボールかのような発想であると思いながらも考えた結樹はすぐに願いを打ち込んだ。
「磯谷という友人が死んだ事をなかったことにしてください。」
単純に思ったことを結樹は書き送信した。
送信してから結樹は何か凄い事をしたような気になっていた、これは経験がある?一回や二回ではない様なそれぐらいの経験であったが記憶には一切残っていなくすぐにそれが本当なのかも核心が持てずにいた。
でも、無くした記憶の片隅に同じような経験が?そう考えている結樹のパソコンにすぐに返信が返ってきた。
何故か額に汗を一滴流す結樹は送られた送信者が「魔王」であることを分かっているかのように開き中を確認した。
「了解した。」
「魔王」の送った文章はそれだけだった。
そのフェイシャルからのメールを見た結樹にいきなり激しい頭痛が襲ってきた。
頭をまるでハンマーで殴られたような衝撃を受けた様になり、頭を押さえながらその場で倒れてしまった。
何だ?この痛みは?結樹はそう思いながらもその痛みは経験した事があるような痛みにも思えた。まるでデジャヴー?そう思う結樹であったが痛みが心から余裕を失わせ気がつかないまま意識を失ったのだった。